■高橋信之詩集■
●ぱんと叩いた
そこを動かずに立っている
一本の樹のまわりを
ぐるりと一巡して
その幹を
掌でぱんと叩いた
人間の肩を叩くように
掌でぱんと叩いた
●歩く
若草の大地を
また一歩前へ
歩き始めたばかりの
おまえ
は歩く
太陽は力強く
星は優しく
おまえがまた一歩前へ
歩いてくるのを待っている
また一歩前へ
おまえの未来が開く
●12の短詩
1
大空の笑いのなかへ行こう
光の国というからに
2
行く先がわからずに吹く風に
紙風船の軽さが好き
3
ぼく達の時を消そう
溢れでる泉の新しい生命のために
4
色がみを切るように青空を切る
恋人達の危うい手つき
5
雪が降って白い時間の流れのなか
意識をなくしてしまった鳥たちの飛翔
6
恋人が幼いから
夕焼の向こうの世界に移り住もう
7
一瞬の闇を割ってしまい
砂漠の空へ打ち上げた花火は戻らない
8
一枚の空を剥がして
青い秋
9
透き通る影と歩いて
夢のなかにも雪が降る
10
黒土のぬくみのなかで
すやすやと芽麦の眠る日が続き
11
風の詩よ
星と花との語らいに
12
花咲く宇宙へぼうぼう漕ぎだそう
ことばの方舟を