お月見チャット句会2005全作品
2005年9月18日


○ 飯島治蝶
満月や乳吸う赤子丸々と
運動会綱引く子らの口への字
秋空や切子グラスの海の色

○ 山中啓輔
月今宵句座の心を一にして
秋光や青き卓布のリストランテ
野の風や尾花咲きけるビオトープ

○ 高橋信之
熟れ近き青よ稲穂の充実に
稲穂の垂れの同じ向きして重たさよ
満月に今日を供えるもののなし

○ 高橋正子
旅の目に田毎の畦の曼珠沙華
いっせいに月を待つべく曼珠沙華
満月を見に出てひとり月とわれ

○ 松井厚子
山荘に城をながめて月あかり
いもたきの月光の川澄みわたり
肱川の頬にさわやか水の音

○  日野正人
運動会地響き残す障害走
ファンファーレ秋天を一周す

○ 脇坂紀子
一面に窓の外には彼岸花
満月の明かりが教えた帰り道
運動会遠く聞こえるファンファーレ

○ 河野一志
稲架立ちて寝かされており稲の束
休日の工場からの虫時雨
屋根ごとに光を反す今日の月

○  篠木睦
杜甫季白一期一会の月今宵
山風も川風も入れ今日の月
月の出の風に乗り来し磯の音

○ 平田 弘
満月の浮かぶ宇宙の深き色
静寂と秋灯のもと時忘れ
女郎花小花散りばむ黄の傘

○ 野田ゆたか
ステージの峰月白を拡げ行く
満月を去りゆく雲も又過客
老い母の居間に安らぐ夜なべかな

○ 志賀たいじ
流る雲かいくぐりぬけ今日の月
待つという静けさがあり望の月
潮満ちて花海蘭(うんらん)の月明かり

○ 大山 凉
満月の透きて此の夜の濁りなく
秋晴の青き御空はなお蒼く
芒剪る田島の原の風乾き

○ 古賀一弘
天守閣満月捕らふヘリの影
露座仏に残る秋日の温みかな
蓑虫や単身赴任北の空

○ 祝恵子
谷よりの清水に育つ今年米
秋蝶のベランダに影ゆらし去る
満月や母の墨軸探し吊る

○ おおにし ひろし
満月の傾ぎて花野影深し
名月や階下の妻に声をかけ
秋深き花野の路をどんどん行く

○ かわなますみ
満月や桟にもたれて風をきく
どの窓も澄める月夜を賜れり
秋の蝉媚びることなく消えにけり

○  瀧口文夫
満月や地蔵の背にも吾が掌にも
満月の夜も暴走の峠越え
水禍の村がれ地の栗の毬笑み初む

○ 堀佐夜子
満月の昇り来るを訊ねけり
十五夜の縁に卓出し月祀る
幽玄の月を眺めるこころかな

○ 甲斐ひさこ
子の家に子守して観る今日の月
刈りてまた美しき花野の新なる
爽やかに開く句集の帯青く

○ 大給圭泉
満月の静かなる庭木々の影
水底を映し満月皓々と
仲秋の焼肉匂ふどこからか

○ 澤井  渥
満月を横切る飛行機点滅す
伊勢湾の波かがやかせ月昇る
満月を見ることのなし犬散歩

○ 安丸てつじ
満月に郷里(くに)の初物間に合えり
鏑矢の風切る音や萩の杜
少年の急ぐ家路に銀漢降る

○ 古田けいじ
北へ雲動けば全き月となる
月昇る薄きわが影見えてくる
馬追が飛び込んで来るパビリオン

○ 渋谷洋介
風通る狭庭を照らし望の月
収穫の祈りを込めて仲秋節
カーテンを開けて芒の月見かな

○  臼井虹玉
満月を仰ぎて紡ぐ一行詩
夫今宵シンガポールに月仰ぐ
きぬかつぎ端を落として座りよき

○ 黒谷光子
月光を入れむと御堂開け放つ
お隣の庭にも満月愛でる声
花薄供えてありし辻地蔵

○ 矢野文彦
庭からの声にこたえる良夜かな
人去って人来るベンチ月今宵
靡くことなくて月下の曼珠沙華

○ 岩本康子
名月をともに仰げる平和かな
瑞々し満月海より生(あ)れしごと
名月に涼しき心賜りぬ

○ 池田加代子
月の兎という菓子うれし月待ちて
満月に一声あげし後静か
別々の窓より月を見て話す

○ 碇 英一
佇める宙を移しつやんま飛ぶ
虫の声の昼はか細き川原かな
満月や生きしものみなおだやかに

○ 池田多津子
無月なる築山に白き灯を点す
満月のあるらし雲の薄明かり
闇夜こそ葉音確かに芒原

○ 藤田洋子
病院出て良夜の道の広々と
退院を告げられ仰ぐ今日の月
満月の夜をそのままに立つ欅

○ 多田有花
過ぎ去りしことも思いつ月を見る
名月に川面明るき静けさよ
それぞれに暮らしのありて良夜かな

○ 河ひろこ
一向に無月のままや針仕事
夜業の子軽く手を上げ帰り来ぬ
こほろぎの声を聴きゐし戸締りに

○ 高橋秀之
満月を供に父と子散歩する
幼き子窓から仰ぐ天に月
晩御飯テレビを消せば虫の声

○  尾ア 弦
一点に夜空を絞り月の満つ
月満ちて狭山の丘にとどまれり
泣き疲れ寝入る子の上にお月さん

○ 藤田裕子
母を呼び満月の明るさの中へ
雲の上気高き光りを今日の月
あどけなく露草の青庭の隅

○ 長岡芳樹
満月の丸きを見れば嬉しかり
赤とんぼわが指先に羽おろし
はたはたの口もぐもぐと指を噛み

○ 脇美代子
月高く風にあたりて少し歩く
満月の山は静かに暮れゆけり
外に出て青き月光に包まれむ

○ 今村 七栄
金(きむ)さんの土産の壷に名の薄
月晧晧離れて星の一つ煌
山の灯の煌き迎える今日の月


水煙ネット