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高橋信之選 |
★第1回句会(4月29日/東京深川・芭蕉記念館) 桜桃のはしごかけらる大きさに/戸原 琴 桜桃が熟れるころの空は、どうでしょう。濃い緑の葉の中に、かわい く熟れる桜桃をいっそう詩的に感じさせてくれ色合いです。はしごを かけて、桜桃をとるのでしょうか。ちょうど、はしごの高さなのです 。桜桃とはしごの取り合わせは、「少年の心」ですね。(評:高橋正 子) 一泊の旅立ち松の若みどり/野上哲斉 200号記念の祝句に相応しい。「松の若みどり」が祝福してくれる。 (評:高橋信之) みちのくの花曇抜け隅田川/守屋光雅 みちのくは、今花のとき。旅立つ日は、高い曇り空。その曇り空を抜 け出て着いた東京の隅田川。隅田川をこの目で見た、たしかな嬉しさ が伝わってくる。(評:高橋正子) 紫雲英田の向こうの富士は雲少し/古田けいじ 新幹線からの景色でしょう。列車から見える紫雲英田は、子どもの頃 から変わらぬ、日本の風景ですね。紫雲英の花の色が懐かしさを誘い ます。裾野を遠く広げた富士山に雲が少しかかって、いっそう優しい 風景となっています。この日、飛行機からの富士山は、真っ白い春の 雪をかむっていました。(評:高橋正子) 宙の空ゆくも快晴夏近し/相原弘子 広い空も、それよりも大きい宇宙の中にふくまれる。大きな宇宙への 驚き。それは「夏近し」で言い尽くされている。雲の上は、何時でも 快晴だという常識は、作者には関係ないこと。すばらしい宇宙の空を 体感すればよい。(評:高橋正子) 薔薇つぼみふくらむ朝に旅立ちぬ/藤田洋子 旅立ちの朝、家の中、そして庭の様子をしっかりと胸に収めています 。留守にする家を、点検するうちにも、薔薇は、つぼみをつけて、作 者の旅立ちを詩情ゆたかにしてくれます。清潔でやさしい句ですね。 (評:高橋正子) 天龍の蛇行の形に山若葉/徳毛あさ子 天龍川の流れを空から見ると、蛇行しているのがよくわかる。蛇行そ のものも自然の大きな営みと長い時間を想起させるもの。その蛇行の 形のままに、川沿いは、若葉のみどりが見て取れる。川も山も今を生 きている。(評:高橋正子) 花こぶし白の幾片残る空/建川 茂 こぶしの花が咲き終わる頃、それでも、空には、数片の白い花びらが 、残って風にひらひらしている。こぶしの花を惜しむ気持ちがさらり と詠まれている。空にぬけるような、淡々とした気持ちがいいと思い ます。(評:高橋正子) ★第2回句会(4月29日/東京深川・ホテルB&G) ゆっくりと初夏の夜風が川に沿い/霧野萬地郎 隅田川の夜景をゆっくりとした時間が過ぎていく。ささやかだが、 充実した時間。(評:高橋信之) 春の闇鉄橋黒くふくらます/戸原琴 ふくらんでいくのは、作者の内面でもあろうと思う。存在のある句。 (評:高橋信之) ほたるいか煮られて黒き色となる/徳毛あさ子 写生だが、印象の強い句。(評:高橋信之) 枝先に重さを見せて八重桜/北村勇治 精神の充実が隅々まで行き渡っている。「枝先」にも行き渡ってい るのである。(評:高橋信之) 春宵を地酒並べてほがらかに/高橋正子 水煙東京大会の夜が「ほがらかに」過ぎて行く。出世間の俳句仲間 の集まりである。(評:高橋信之) 空気まで軽い春の夜散歩道/渡辺京子 春の夜の心地よさといったらありません。どこまでも歩いて行きた いくらいです。空気も軽く浮いて、天女の衣に掬われて、舞い上が っていくような感じですね。(評:高橋正子) ビル街の若葉ときおり運河見ゆ/徳毛あさ子 川風や冷酒に少し蛍烏賊/伊嶋高男 若葉照る夜の川風に吹かれいて/徳毛あさ子 ★第3回句会(4月30日/東京深川・深川江戸資料館) 東京の雑踏に馴れつばらめ/野上哲斉 上京して思うのは、あの雑踏にもすぐ馴染んで、自分が今どこから 来たか考えなくなっていることです。蝶や、燕などいれば、どこか ら来ようと今居るところは、気持ちの中では、たちまち故郷なので す。蝉がよく鳴き、蜻蛉が飛べば、新宿だってとても近しいところ だと感じたことがありました。(評:高橋正子) 江戸小物選り選り歩く鯉のぼり/原 順子 菖蒲の葉目にその緑つきささり/渡辺一史 しょうぶの葉軒につらねた長屋かな/作者不明 一泊のチェックアウトに新樹光/相原弘子 江戸という粋なところの川五月/相原弘子 池の面を深く沈めて藤の花/野上哲斉 みやこどり空より羽音をさせ川に/高橋正子 芭蕉の地ゆけば白蝶飛んで来し/藤田洋子 たえまなき水音の先蝌蚪生る/伊嶋高男 揚げそばのつまみの香り若葉風/戸原 琴 ★第4回句会(5月3日/愛媛砥部・真砂家本店) 皮置いて筍掘りの帰りけり/吉田 晃 筍の「皮」に焦点が絞られた。俳味がある。(評:高橋信之) 「皮置いて」という見方がユニーク。置いていかれた皮が、いきいき している。この世の実相のような気がする。(評:高橋正子) 満天星に水はくらきを流れ来る/高橋正子 つつじの生態をうまく捉えた。夏が来たのである。(評:高橋信之) ●大会作品(参加者一人一句) 鴎浮く若葉のうつる大川に/高橋信之 満天星に水はくらきを流れ来る/高橋正子 若葉照る夜の川風に吹かれいて/徳毛あさ子 一泊の旅立ち松の若みどり/野上哲斉 宙の空ゆくも快晴夏近し/相原弘子 故郷のたけのこごはんありがとう/久保越子 右行けば大川端へ春の宵/原 順子 桜桃のはしごかけらる大きさに/戸原 琴 夕まぐれミモザの花の下で逢う/岡本栄一 夜桜や城の灯りが消えるまで/岡本桜子 薔薇つぼみふくらむ朝に旅立ちぬ/藤田洋子 新緑のまぶしい街に故郷を重ね/渡辺一史 空気まで軽い春の夜散歩道/渡辺京子 皮置いて筍掘りの帰りけり/吉田 晃 紫雲英田の向こうの富士は雲少し/古田けいじ 春光を砕きて船の隅田川/阪本登美子 花こぶし白の幾片残る空/建川 茂 東(ヒンガシ)へ春の夢馳す旅衣/堀佐夜子 風生れて芽ぶき柳をとらえたり/安西さゆり ゆく春は大河の如くゆるやかに/野田ゆたか 枝先に重さを見せて八重桜/北村勇治 ゆっくりと初夏の夜風が川に沿い/霧野萬地郎 川風や冷酒に少し蛍烏賊/伊嶋高男 みちのくの花曇抜け隅田川/守屋光雅 口紅の明るさ増して更衣/日野正人 新緑からこぼれる光り白い空/久保維希子 遊覧船の白き波頭に風光る/八木孝子 ほたるいか海に光りて星となる/大谷悦子 誰彼と話して親し風若葉/神谷和子 川霞渡れば変わる町ことば/藤川雅子 蓮華野に埋もれて空にすい込まる/右田俊郎 夜半の風ざわと来たりて山みどり/堀 幹夫 野仏のおわす道かな馬酔木咲く/田村良子 白い雲すいこみそうな春の山/徳毛 淑 場違いも見よう見真似の春吟行/表 次生