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■オンライン3月句会入選句■


【最優秀】



青き踏み空へ膨らみゆく心  神谷和子



句会の世話には、それなりの苦労があるが、このような良い句に出会うと

その苦労もすっかり忘れてしまう。嬉しくなってしまうのである。春の到

来が嬉しい。期待の春なのである。(高橋信之)           

「空へ膨らみゆく」は、いい。「踏青」という言葉が懐かしい。いつまでも

このように、晴れやかでいたいものである。(高橋正子)        

青々と萌え出た草を踏み自然の中で浸れば、仰ぎ見る広々とした空のように

解放感に満たされるでしょう。春の喜び、そして明日への希望もふくらむよ

うです。(藤田洋子)                        

春の躍動感を表現しています。内からのものを表現することの難しさを感じ

ていますのですばらしいです。こう言う句を作ってみたいものです。(守屋

光雅)                               



【優秀11句】



春光を掬うごとくに鍬振るふ/安西さゆり



天からの光を受けて輝く地の土。その土を掬うように掘り返す。自然の恵み

に感謝しながら、働く喜びを感じている、充実した春の出発。(古田けいじ)

土に鍬を入れる時、春光も一緒に掬うような感覚を実感されたのでしょう、

明るい春が来た喜び、働く喜びがあふれていて、それがこちらにも伝わって

きます。(八木孝子)



その影を湖に落として山笑ふ/神谷和子



静かな湖畔が、目に浮かぶ。山笑うころの山は、目覚めて匂うような感じが

する。湖の水もやわらかくなって心静かである。(高橋正子)



斑雪野をコンテナ列車ながながし/守屋光雅 



雪が解け始めた野を客車ではなく、コンテナ列車がすぎる。驚くべく長い列

車である。それは、春を引き連れて走っているようである。(高橋正子)



桃の花そこらに母のおわすよな/堀佐夜子



桃の花は、普段着っぽくて、明るい。いつもの母がいるような素朴さと安ら

ぎとあたたかさがある。(高橋正子)



定年や闘志再び木の芽晴/野田ゆたか



まだまだ元気な定年。第二の人生の始まりに、また再び闘志がわいてくる。

よく晴れた青空に向かえばこそである。(高橋正子)



なめらかに茎曲げ菜の花日を沈め/相原弘子



菜の花の茎を包む日没の柔らかい空気が漂います。ほのかに浮かぶ黄色が美

しくやさしい春の風景です。(藤田洋子)



菜の花やこんなに遠くへ友の家/田中栄子



遠く来てみれば、ここにも菜の花が咲いている。菜の花畑が続ているのかも

しれない。友だちの住む家はこんなに遠いところにある。絵本の中の絵のよ

うにも、思える。(高橋正子)



春の朝動きはじめるファックス音/森 隆博



ファックスの音は、オフィスの音。きびきびと朝が始まる音である。たとえ

オフィスでなくても、家庭の中の通信音。新しい句材をさりげなく、「春の

朝」と組み合わせて一句にした自由さは、この作者ならではのものか。(高

橋正子)



満ちてくる運河の橋へ春の雪/古田けいじ



運河は、人工の河。運河の橋を渡るとき、河深く潮が満ちてきて、春の雪が

橋にも、河にも舞い落ちる。春の雪のみずみずしい美しさが表された句。(

高橋正子)



ものの芽の動くともなく地軸揺れ/篠崎智恵子



いつ何があっても自分を支えていてくれるものがあるからこそひとつの生命

の誕生は、自分を大きく超えるものに感じるのでしょうか。地軸、それは万

物に永遠で揺れても揺れてほしくない。(相原弘子)



干鰈潮の匂いが透き通り/守屋光雅



鰈が行儀良く干されている浜へ、潮の香、潮騒が聞こえてきそうな、そんな

風景が浮かんできます。(堀佐夜子)

「透き通り」が素晴らしいと思います。(大谷悦子) 





【入選16句】



一輪車くるりくるりと笑う風/渡邊和俊



一輪車のくるりくるりと回す様子が、よくあらわされている。「笑う風」は

、季語ではないが、季感がある。「山笑う」は、春の季語。(高橋正子)

バランスを取りながら一輪車を操る様子が、春の喜びの中によくマッチして

楽しく思えます。<笑う風>は<山笑う>に通じて春の季語ですね?!(霧

野萬地郎) 



初雲雀空かたよりてわが頭上/高橋正子



初雲雀の囀りが明るく生き生きと聞こえます。天を目指して舞い上がり鳴く

雲雀をわが頭上で聞かれた精神の高さを感じる句です。(藤田洋子)



沈丁の香に包まれてチャイム押す/北村勇治



訪問した先の玄関辺りに、沈丁花がある。チャイムを押す間も沈丁花の香り

にすっぽりとつつまれている、いい時間である。この季節の楽しみでもある

。(高橋正子)



春泥をつけてバス待つくりくり坊主/北村勇治



泥が付いていても気にしない、くりくり頭の男の子。頓着なく振舞うのであ

ろう。春の日差しのなかで、男の子らしくてかわいい。(高橋正子)



モーツァルトの弱起の曲や草萌える/やぎほたる



モーツァルトの弱起の曲といえば、「五月の歌」などもそうでしょうか。デ

ィベルティメントなんかは、どうなのでしょうか。体をふわっと掬ってくれ

そうな、はじまりは、遊園会でもありそうですね。「草萌える」の雰囲気と

ぴったりです。(高橋正子)



海光や連翹まばゆき浜通り/阪本登美子



海光を受けた連翹は、どれほど黄色くなるのでしょうか。濃い黄色は海辺の

町に置くのがいいでしょうね。(高橋正子)



春の蝶風にほぐれて黄がこぼれ/藤田洋子



蝶の季語は、春。春の蝶は気になるところ。ひらひらと飛ぶ蝶が、風の中で

、ほぐれてひらひらと、こぼれるのだという。なるほど。そういわれれば、

黄蝶は風からこぼれ飛ぶに相応しい。(高橋正子)



二回目のかけっこセーター脱いでから/渡邊和俊



一度走ったあと息せきしながらセーターを脱ぐ子供。何気ない子供の動作を

春の日差しのようにあたたかく見守る眼差しを感じます。(藤田洋子)



おさな子の遊びは尽きず犬ふぐり/金井ひろみ



座りこんで一人遊びをくりかえす幼児の目に、コバルトブルーのいぬふぐり

が広がります。生命の息吹あふれる早春賦です。(伊嶋高男)



春光を捉ふ庭師の鋏かな/神谷和子



剪定をする庭師の研ぎすまされた鋏に、キラリと春のやわらかい光が。自分

もその場で庭師の様子を見ているような、錯覚を覚えます。(北村勇治)



春雨や音柔らかく蜘蛛の糸/城本勝馬



音も無く優しく温んだ春の雨の様子が「音柔らかく」という言葉で詩的に響

いてきます。又、蜘蛛の糸の細雨の水滴の柔らかな光や空気のイメージが髣髴

としてきます。こんな風に静かにやってくる春もあるのですね。見事です。

(福田由平)



寅さんの街の温もり草団子/霧野萬地郎



寅さんの街と言えば浅草なのでしょうが、その下町と草団子がいいですね。

(渡邉牛二)



蕗の薹ゆびに残りし薄緑/渡邉道朗



春を確かに教えてくれる蕗の薹。うれしくて摘んで、しばらくしてから野に

置いておくべきだったのだろうにという悔いもあるのでしょうか。(相原弘子)



車窓より富士のふくれる春の旅/堀佐夜子



「富士のふくれる」のひとことでで、情景が浮かびます。(阪本登美子)



白木蓮ひとつ残らず空を向く/金井ひろみ



空に向かって開く白い花。両手を開くように、一つ残らず、上を向いて咲く

花は、大変印象的です。辛夷の花とは違って、はっきりした心象を表現して

います。(高橋正子)



うぐいすに啼かれ少年池に釣る/高橋信之



池のほとりのうぐいすの声、釣り糸を静かに垂れる少年、何か清らな春の風

景が印象的です。そして、その静寂の中でうぐいすの美声が一際鮮やかに聞

こえます。(藤田洋子)





【最高点】



青き踏み空へ膨らみゆく心/神谷和子



【次点/同点2句】



春光を掬うごとくに鍬振るふ/安西さゆり



おさな子の遊びは尽きず犬ふぐり/金井ひろみ



【第4位/同点2句】



春の朝動きはじめるファックス音/森 隆博



蕗の薹ゆびに残りし薄緑/渡邉道朗




[全作品]
森 隆博
01.春の朝動きはじめるファックス音

02.後戻りすること無きや春疾風

03.かしましき一斉野焼昼の土手


高橋満里子
04.おひな様お久し振りと顔あわせ

05.梅とおく桜のたよりちらほらと

06.卒業式就職きまり春がくる


高橋正子
07.霧深し窓より下の谷渡り

08.初雲雀空かたよりてわが頭上

09.震うミモザ頬に寒さのまつわりぬ


高橋信之
10.枝張って桜花芽の朝空に

11.菜の花の今盛りなる池土手に

12.うぐいすに啼かれ少年池に釣る


堀 幹夫
13.春光に白むくの富士まぶしけり

14.三寒四温狭庭の草花戸惑いし

15.銀鱗を光り散りばめ鮒巣立ち


守屋光雅
16.影を着てまんさく仰ぐ夫婦かな

17.干鰈潮の匂いが透き通り

18.斑雪野をコンテナ列車ながながし


安西さゆり
19.沈丁の香を胸底にとどめおき

20.雨柔くものの芽のみなゆるみそむ

21.春光を掬うごとくに鍬振るふ


神谷和子
22.その影を湖に落として山笑ふ

23.春光を捉ふ庭師の鋏かな

24.青き踏み空へ膨らみゆく心


伊嶋高男
25.金色の鴟尾(しび)に連なる春の雲

26.春の川胸まで漬かり魚信待つ

27.山国や茶屋の馳走の春炬燵


渡邊和俊
28.一輪車くるりくるりと笑う風

29.風温し鉄棒くるりと一回転

30.二回目のかけっこセーター脱いでから


渡邉道朗
31.薄氷の幾何学模様日に光る

32.蕾より花色透ける黄水仙

33.蕗の薹ゆびに残りし薄緑


篠崎智恵子
34.紫陽花の芽吹きドレミの歌奏で

35.ものの芽の動くともなく地軸揺れ

36.仕合せと思へばそうと春の雲


大谷悦子
37.地蔵さま傘無くなりて春そろり

38.見わたせば緑霞の筆使い

39.我残し蒲公英のわた時を追う


城本勝馬
40.鰆船今日は三本だけと茶碗酒

41.春雨や音柔らかく蜘蛛の糸

42.木蓮はもう直ぐ咲くと寺便り


碇 英一
43.もらい湯の地震の五(いつ)とせはや霞み

44.むらさきを漂わせてや堅蕾

45.三寒の夜は裸木のさくらかな


堀佐夜子
46.車窓より富士のふくれる春の旅

47.桃の花そこらに母のおわすよな

48.受験子にエールを送るメールかな


片平奈美
49.時立つや花桃散し恋遠く

50.夢去りし流れゆくまま春一人

51.初恋はうぶ咲のごと桃の花


椎木英輔
52.ハイポネックス欲しがつてをりヒヤシンス

53.仏生会われを悩ます風媒花

54.薪能アングロサクソン案内(あない)する


北村勇治
55.沈丁の香に包まれてチャイム押す

56.杉花粉飛んできそうな今朝の風

57.春泥をつけてバス待つくりくり坊主


やぎほたる
58.モーツァルトの弱起の曲や草萌える

59.卒業の朝の凛々しき紺袴

60.啓蟄やわれも始めん新講座


相原弘子
61.三月や花屋が二つある通り

62.山は雪解け遠く見え高く見え

63.なめらかに茎曲げ菜の花日を沈め


阪本登美子
64.海光や連翹まばゆき浜通り

65.百千鳥大樹の下の祠たち

66.セーラー服の淡き花束卒業歌


田中栄子
67.冴え返る花供へある交差点

68.北窓を開けて職退く師への文

69.菜の花やこんなに遠くへ友の家


有吉孝史
70.遠くより知らぬ人来し春の風

71.磯遊びする社は浜のそばにあり


大森裕子
72.月出でて梅真白にぞ光りける

73.山椿見る人なくも咲きこぼる

74.ランドセル制服のむれ春抱き


野田ゆたか
75.定年や闘志再び木の芽晴

76.細き脛こきこき弾む春野かな

77.受験子に今日の茶断を言わずおく


藤田洋子
78.春の蝶風にほぐれて黄がこぼれ

79.青空に蝶の行き交う春の野辺

80.樹をこぼる椿散らばり地に咲けり


霧野萬地郎
81.長編の夢より醒めて春一刻

82.寅さんの街の温もり草団子

83.抜いて行くいかつい息子はコート無し


作者不明
84.万歩計会う人ごとに蕗の薹

85.春の雪木々の梢に光り満つ


江田晋
86.「思老期」なる言葉あるらし春愁い

87.おしゃべりな厚底ブーツ桃の花

88.宇宙船春待つ地球の遠心力


江間幸雄
89.外は雨雛の間だけの暖かさ

90.鼻柱薄く汚れし雛飾る

91.子は育ち夫婦だけの雛飾り


古田けいじ
92.満ちてくる運河の橋へ春の雪

93.大銀杏黒雲に揺れ寒戻る

94.日のあたるコーヒーショップ沈丁花


江間万里子
95.憧れの古雛を見る老いの昼

96.古雛や気品の頬へ乱れ髪

97.孫もなく徳川雛を友と見る


福田由平
98.零れ花敷きつむ苔の白椿

99.八重椿薄紅色の初らしさ

100.蕗の薹我が子の春はほろ苦き


金井ひろみ
101.おさな子の遊びは尽きず犬ふぐり

102.ふくよかな光が満ちて春来る

103.白木蓮ひとつ残らず空を向く


作者不明の方は、お名前をお知らせ下さい。
今回は3月12日(日)でしたが、
次回は5月14日(日)で、4月は、水煙200号
記念大会がありますので、お休みです。またの
ご投句をお待ちしています。

俳句雑誌水煙

入選句
1998年  8月/ 9月 / 10月 / 11月 / 12月
1999年  1月 / 2月 / 3月 / 4月 / 5月 / 6月 /
7月 / 8月はお休み/ 9月/ 10月/ 11月/ 12月
2000年  1月 / 2月 / 3月 / 4月 / 5月 / 6月 /