【最優秀】 羽ばたきの音新緑に吸われゆく 八木孝子 羽ばたきの音というからには、大きめな鳥なのでしょう。空気をかすめ打つ 音が、新緑の中に吸い込まれてゆく。それは、鳥が新緑の中に飛んで行った こと。明るい季節の、静かな息づかいが感じられます。(評:高橋正子) 【優秀10句】 芹摘めばぽくと音して香りけり/守屋光雅 芹は、春の七草の一つ。水をたっぷり吸い上げた芹を摘み取れば、「ぽくと 音して」清冽な香を放つ。春の喜びである。(高橋信之) 水辺での芹摘みの様子ですが、一瞬発する音と後に残る香の余韻で、詩的に すばらしい表現と思います。(霧野萬地郎) ぽく、という音と一緒に芹の香りと野辺のやわらかい陽射し、 せせらぎまで目の前にぽんと拡がるような瑞々しい句ですね。(福田 由平) 刃をといで新たまねぎの透くほどに/安西さゆり 研ぎ上げた包丁で、新たまねぎを切る。研ぎ具合もよく、新たまねぎが透き 通るほど薄く切れる。よく切れることの喜びとこれから作る料理への日常的 な充実感を感じます。(古田けいじ) 研ぐことで手になじんでゆく包丁、包丁もだいぶ細身になったのでしょうか 切れ味の良い包丁で切るたまねぎは目にしみませんね。料理も楽しくなりま す。(北村ゆうじ) しっかりと研がれた鋭利な刃が、新たまねぎを美味しく切る姿が浮かびます 。日常的な句ですが、その日常的なものだからこそ良いと思います。(森竹 智則) 突っ立ちてたんぽぽ絮を蓄えぬ/山田 天 たんぽぽの絮が。風に飛ばされるまでのぎりぎりのところを描いている。硬 質な精神がいいと思う。(評:高橋正子) 母が刈る蕗の広葉のこする音/日野正人 母が蕗を刈り取っているのを、作者は聞いている。蕗のごわごわした葉が触 れ合うと野趣のある音になる。母が刈れば、それはいっそう懐かしいような 音になる。「こする音」は、「こすれる音」のほうがいいと思う。(評:高 橋正子) 青麦や穂先いっせい風をうけ/城本竜馬 青麦を想像しただけでも爽やかな気分になる。この句の「穂先」が効いてい て、麦の穂先に透ける空が、印象的。風が吹いて動きのある句と成っている 。(評:高橋正子) 凧あげて幼きころの風がふく/目見田郁代 あっさりと感懐をのべている。心の緩やかさの感じられる好句。(評:高橋正 子) 嬰のもの真白く乾く五月晴れ/篠崎千恵子 みどり児のものは、ガーゼのように柔らかく清潔である。五月の爽やかな風 を受けて真白く乾くものは、生命の無垢を象徴している。(評:高橋正子) 葉柳や銀座ヤングの髪長し/北村ゆうじ 葉柳と銀座がノスタルジーを誘う。ヤングの今風の長い髪も、異質ではなく、 これが銀座かと鄙にすむ者に思わせてくれる。(評:高橋正子) 粽解く紐に巻きぐせありしかな/神谷和子 寝巻はや衣更にて枕元/森 隆博 【入選23句】 揚羽蝶シャッターチャンス逃しけり/堀佐夜子 ゆるやかな柔らかい羽の動きは花にとまった時も絶えることがないため、一 瞬の停止の狙いを逃した作者。揚羽蝶の様子とともに周りの花や緑の初夏を 感じました。(碇 英一 ) 薫風やカップの透くるハーブティー/田中栄子 ハーブティーのすがすがしさがカップの透くるでうまく表現されていますね 。薫風という季題がよく効いていると思います。(山田 天) 道草のランドセル置く蓮華の田/渡邉道朗 「道草」という懐かしい言葉の響きで始まる句のやさしい情景に惹かれます 。蓮華の田に入り無心に遊ぶ子供たちが見えてきます。心のゆとり、自然と のふれあいは何より今の子供たちに必要ですね。(藤田洋子) 声上げる控え選手に汗光る/安西さゆり 高校時代の懐かしい想いが蘇って素直に共感できます。裏方にまわった生徒 達の人一倍ひたむきな誠実さに光が当てられたと言っては大袈裟でしょうか。 (右田俊郎) 薔薇を撮る薔薇撮る母を入れて撮る/田中栄子 今日は母の日です。お母様がお健やかで何よりですね。とても微笑ましくて 佳いお句だと思います。(堀佐夜子) メタセコイア太古から吹く若葉風/伊嶋高男 メタセコイアは太古から生き続けている植物であると聞いたことがあります 。地球誕生・生物誕生の不思議を感じさせ,爽やかです。(守屋光雅) 絹豆腐の白さを割って夏来る/日野正人 一年中、親しんでいる豆腐ですが、この季節、きっと冷やっこでしょうね、 おろし生姜と刻みねぎを添えて。あの白さを掌にのせて割る感覚に、夏の到 来を感ずる、生活感が溢れています。(八木孝子) 山里の桜月夜の露天風呂/片平奈美 山里、桜月夜、露天風呂、羨ましい風景ですね。(渡邉牛二) 青空に飛沫が止まる大噴水/古田けいじ 動きを止めてはならないものが、空の大きさに全てを委ねています。何かを 何かを超えて動きを止めています。(相原弘子) 子供らの笑顔はじけて夏来る/金井ひろみ この季節、行楽場所でも近所の公園でも、子ども達の一点の曇りも無い笑顔 が一番似合います。「笑顔はじけて」が、今生きている幸せの証しを実感さ せてくれます。(日野正人) ずっしりと緑たたえる寺の門/大谷悦子 緑の滴に濡れそうで・・・ (服部洵子) 薫風をうましと思う露天風呂/高橋信之 露天風呂に手足を伸ばして一呼吸、目を瞑っていらっつしゃるのではないで しょうか。心地良さが伝わってきます。(大谷悦子) 遊学の子のワンルームすだれ吊る/作者不明 立夏かな呪文の要らぬ自動ドア/堀佐夜子 紺青の海を背にして鯉幟/阪本登美子 葉桜も醍醐伽藍の一つかな/野田ゆたか 鋭角に中空過(よ)ぎる熊ん蜂/服部淳子 茶摘み待つ光る畑の青き波/霧野萬地郎 夏つばめ水田かすめて高空へ/藤田 洋子 畔川の溢るる水や夏来る/渡邉牛二 校庭に大けやきあり若葉萌ゆ/金井ひろみ たんぽぽの絮の丸くて風を待つ/高橋信之 軒先の五月の晴れに来る雀/高橋正子 【最高点】 刃をといで新たまねぎの透くほどに/安西さゆり 【次点/同点2句】 羽ばたきの音新緑に吸われゆく/八木孝子 道草のランドセル置く蓮華の田/渡邉牛二
01.若葉晴髪なびかせてペダル踏む 02.聖五月魁夷の森の甦る 03.羽ばたきの音新緑へ吸われゆく
04.永き日や軍鶏のひよこの鳴きつのる 05.青葉蔭5人現わる修道女 06.れんげ花の無い畦となり水を待つ
07.薫風やカップの透くるハーブティー 08.薔薇を撮る薔薇撮る母を入れて撮る 09.教習の車に知る人青葉風
10.立夏かな呪文の要らぬ自動ドア 11.揚羽蝶シャッターチャンス逃しけり 12.緑陰の子の遊びやはないちもんめ
13.三連休卯の花腐しの雲流れ 14.遠野市は民話の里や春祭り 15.山里の桜月夜の露天風呂
16.春行くや光の川の高速路 17.卯の花をせはしく這へる蟻二匹 18.突っ立ちてたんぽぽ絮を蓄えぬ
19.絹豆腐の白さを割って夏来る 20.白シャツの教室埋めて衣更え 21.母が刈る蕗の広葉のこする音
22.島影の蛸つり舟や初夏の海 23.豌豆のへた取る爪は青に染み 24.青麦や穂先いっせい風をうけ
25.小魚がつついて揺する花筏 26.日陰にも似合う花あり花大根 27.花筏祭りの名残を運び居り
28.鋭角に中空過(よ)ぎる熊ん蜂 29.夏めける風や大河の絹光り 30.他愛なきこと思ひ出す若葉道
31.青空に飛沫が止る大噴水 32.触れてみる「希望」と言う薔薇開き初む 33.双子抱く夫婦が巡る薔薇の園
34.ずっしりと緑たたえる寺の門 35.山間の宙をとらえて夏鳶 36.新緑のうねりの果ての夕日かな
37.軒先の五月の晴れに来る雀 38.ぎしぎしの花はまさかり土手の空 39.風邪ひきの身内しずかに若葉風
40.つぎつぎと部員勧誘桜草 41.推敲や虫の付きたるつぼみ薔薇 42.夏立つや背広の裾にチョーク粉
43.凧あげて幼きころの風がふく 44.凧紐を斜めにひきて川わたり 45.凧合戦鳥驚きて空ゆずり
46.ぼうたんの崩れゆく午後だた一人 47.刃を研いで新たまねぎの透くほどに 48.声上げる控え選手に汗光る
49.薫風をうましと思う露天風呂 50.白ばらの崩れるときの甘き匂い 51.たんぽぽの絮の丸くて風を待つ
52.夏木立山門二つ潜りけり 53.堂庇蔭深々と風涼し 54.粽解く紐に巻きぐせありしかな
55.紺青の海を背にして鯉幟 56.縫い上げしキルト広げて窓若葉 57.八重桜母校の坂を飾りけり
58.みごもりし子供の顔やひいな顔 59.さわさわと5月の木々の息吹聞く 60.ときめきて訪ねし家や春霙
61.寝巻はや衣更にて枕元 62.新門を入れば頼久寺苔の花 63.都会者縁側珍し富貴草
64.裸木の空に芽を刺す銀杏かな 65.好日や野辺の菫の藍深き 66.青嵐闇に吹かるる家路かな
67.ペタル踏むサーフボートを横に掛け 68.茶摘み待つ光る畑の青き波 69.富士を背にひねもすボートの釣り師かな
70.夏つばめ水田かすめて高空へ 71.口開くる顔を並べて燕の子 72.一枚の水田を揺らす風五月
73.大玻璃の窓を開いて若葉風 74.道草のランドセル置く蓮華の田 75.畔川の溢るる水や夏来る
76.晴天の続くある日の豆ご飯 77.麦の秋胸の奥へとくる乾き 78.葉桜の下の朝を通り抜け
79.校庭に大けやきあり若葉萌ゆ 80.ふるさとは青葉若葉の海の中 81.子供らの笑顔はじけて夏来る
82.芹摘めばぽくと音して香りけり 83.花林檎赤い噴霧車登り行く 84.蛇打たぬ生あるものは生きるべし
85.地下街を抜け新緑のビルの街 86.ビニール傘掲げ大輪白牡丹 87.嬰のもの真白く乾く五月晴れ
88.やはらかな花梨若葉や空の碧 89.柿若葉遠くまで子ら風の中 90.遊学の子のワンルームすだれ吊る
91.杣に舞う天女とみたり吹き流し 92.自転車をドミノ倒しに青嵐 93.葉柳や銀座ヤングの髪長し
94.甘党と知られ新茶を注がれけり 95.寿司種に釣られて鯖の生かさるる 96.葉桜も醍醐伽藍の一つかな
97.メタセコイア太古から吹く若葉風 98.朝曇町の背流る古き川 99.天道虫思わず避けし靴の先
100.背広壁にだらりと下がり立夏かな 101.錆包丁筍二つに裂きにけり 102.喪の家の藪の筍掘られざり
103.薄緑広がる程に夏兆す 104.目覚めれば動かぬ街に明け易し 105.見る者の景色を奪って山の藤
オンライン句会は、1998年8月から数えて20回を 重ね、一つの成果を得ることが出来ましたので、第20 回という、よい区切りに、しばらくのお休みをいただき、 またの機会に再開いたしたいと思います。ご支援ありが とうございました。 高橋信之