■オンライン正月句会入賞発表/高橋信之選■
【金賞】
★水満たし七種の色浮かしおり/祝 恵子
水をたっぷりと満たして、七種の菜を洗おうとしているところ。小
さな菜は、水に浮いてひとつひとつ葉を広げてくれる。「これは、
はこべ。これは、ごぎょう。」などと、思いながら洗っている。七
種の朝の心楽しさ。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★鶏鳴や七草粥の噴きこぼれ/北野一清
朝鶏が鳴きだすころ、台所では七草粥が噴きこぼれている。寒い朝
にも、鶏の鳴き声、粥を炊く火の勢い、七草の若菜のみどりなどが
整って、どれも伝統的な日本の生活文化を象徴するものばかりであ
る。古きよき時代の生活が滲んでいる。(高橋正子)
★水仙の風に乗りたる香は沖へ/長瀬正之
海に面した丘や崖などに咲いている水仙であろう。水仙の清楚な香
りが風に乗って、そのゆきさきは、沖という。水仙の香りがひろび
ろと沖へまでひろがる空気が肺を満たして、心身ともにすがすがし
い。(高橋正子)
【銅賞/3句】
★風と来て風に飛び立つ寒雀/今村七栄
飛来した寒雀の自然の姿が生き生きと詠まれ、リズムの良さに惹か
れます。(志賀たいじ)
「風と」「風に」の言葉に厳寒と、「来て」「立つ」に雀の身近な
親しみと素早い動きを感じ、しかも淡淡と読み込んであり、とても
好きな句です。(今井伊佐夫)
★己が影水に引き入れ鴨潜る/臼井虹玉
水鳥の生態が鮮やかにとらえられて新鮮テです。(佐藤 博一)
★あかあかと冬芽整う雑木山/脇美代子
冬芽が出揃うと、雑木山は赤みを帯びて感じられる。「あかあかと
」は、その感覚。「冬芽整う」は、まさに冬最中を言い当てている
。どの木も冬芽をしっかりと持って、雪や霜に耐える力と、春への
備えを十分にしている。(高橋正子)
冬来たりなば春遠からじ、自然は常に次の準備を怠ることは無い。
冬芽の営みに感じるものがある。(河野一志)
※選者作品は、金銀銅賞から割愛した。
【高橋信之特選7句】
★鴨あそび水の眩しさそこここに/高橋正子
正月の「眩しさ」があって、身近な世界もまた楽しい。「鴨」も作
者も楽しく、句が重くないのがいい。(高橋信之)
★日矢の降る海を恵方と手を合わす/霧野萬地郎
その神々しさに読み手の私も思わず手を合わす思いです。(今村七
栄)
★鶏鳴や七草粥の噴きこぼれ/北野一清
七日の朝の声と音と七草の取り合わせのうまい句で好きな句です。
(篠木睦)
★ひとつずつ飾りを解いて常の日へ/今村七栄
淡々と詠まれていて、しかも新年に沢山のことがあったことを感じ
させてくれる好きな句です。(碇 英一)
★己が影水に引き入れ鴨潜る/臼井虹玉
静かな冬の水面に鴨がゆったりと遊んでいます。小魚を見つけてす
〜と潜ります。静かな澄んだ冬の様子が目に見えるようです。(長
岡芳樹)
★水仙の風に乗りたる香は沖へ/長瀬正之
★水満たし七種の色浮かしおり/祝 恵子
【高橋正子特選7句】
★冬の日が西へと低く渡り行く/高橋信之
冬の日は、低い。東から西へと移って行く。自然の法則そのままを
述べたようだが、「西へと低く渡り行く」の、「西へ」の意味、「
低く」の意味、「渡り行く」の意味がはなはだ大きい。(高橋正子
)
★風と来て風に飛び立つ寒雀/今村七栄
寒風が吹くとその風といっしょに雀がやってきた。飛び立つときは
、また風と一緒に去って行った。寒雀が風そのもののようでもある
。寒風の吹き方は、たしかに時を見てどっと吹いてくる。雀も落葉
も連れてきて、連れ去れられる光景がよく見られる季節。(高橋正
子)
★水仙を活けし一隅清らかに/大山 涼
水仙が活けられて、それまで目がゆかなかった一隅が、よみがえっ
たように清らかになっている。水仙の清楚な気品が感じられる句。
(高橋正子)
★鶏鳴や七草粥の噴きこぼれ/北野一清
★あかあかと冬芽整う雑木山/脇美代子
★水仙の風に乗りたる香は沖へ/長瀬正之
★水満たし七種の色浮かしおり/祝 恵子
【入選T/10句】
★寒の水流れて青菜に芯生まる/池田多津子
洗い上げて冬青菜の存在感を認める作者。「芯生まる」に意表を突
かれました。句のリズムもよく好感を持ちました。(野田ゆたか)
★こだはりはさらりと捨てて去年今年/篠木 睦
思いはいろいろあっても、気持ち新たに新年を迎えるそんな気持ち
がしっかりと伝わってきます。(大山涼)
★ひととせを又生き抜かむ初日受く/かわなますみ
清らかな初日を受けて作者が心に抱いた静かな決意が伝わります。
(臼井虹玉)
★初漁や艫綱河岸へ放り投げ/澤井 渥
正月をのんびり過ごし、今日から漁にでる。初競りで大いに賑うで
あろう河岸に豊漁で帰ってきた。気合を入れて艫綱を投げる姿が目
に浮かぶ。(おかがわ ひろあき)
★待ちぼうけさざんか危うき風の中/大石和堂
約束の時間に来ない人を、風が吹いて寒い中、山茶花の咲く角で待
つ。ふと見ると山茶花の花びらが風にこぼれそうになっている。待
つ人が来ない不安。それでもやっぱり信じて待とう。(古田けいじ
)
★ふくらみは厚き葉の上寒椿/藤田洋子
冬の冷気の中椿の花がふくらんで、またその葉の独特の存在感に惹
かれました。(矢部れい子)
NHK紅白の取りは寒椿でした。新潟の被災地の復興に厚い支援の
手が差し伸べられ、葉の上に優しさのふくらみが感じられる椿。こ
の句が大好きです。(町田智司)
★寒念仏魚臭の町を真っ直ぐに/おおにし ひろし
昔はこんな風景をよく見ました。魚臭の町がいいですね。(古賀一
弘)
★寒波来る城の真上の青抜けて/吉田 晃
少し小高いところにあるお城の上の青い空。寒波がきてその青がい
っそう冴えて凛とした空気を感じます。(池田多津子)
★図書室の朝刊開く音も冬/町田智司
季節の流れに添って、同じ音も少しずつ変化して聞こえます。冬の
朝のしんとした冷気、乾燥した新聞紙が立てる音、図書館の蔵書の
匂いなどが実感できて、好きな句です。(かわなますみ)
★凍て雲や街新鮮に澄みわたる/小西 宏
【入選U/10句】
★初日の出雀の群れの長き影/藤田荘二
元日の良く晴れ雀の群れもにぎやかに日差しの中に見かけました、
群れごと飛び去ったりの様子でしょうか。見ていて飽きないですね
。(大給圭泉)
★読み初や指しなやかに点字読む/篠木 睦
お友達からの年賀状でしょうか、指しなやかにがすてきです。(渋
谷洋介)
★獅子舞を見る子の頭揺れ続け/松本豊香
ほほえましいですね。獅子舞を初めて見た子は何と思っているので
しょうか。 獅子舞と一緒に踊っているのでしょう。(祝 恵子)
★あかがねに雲海出でし大初日/おかがわひろあき
機上から見られた初日の出、赤く大きくすばらしい初日が目の前に
広がってきたことでしょう。(藤田裕子)
★朝刊に折り込まれ来る寒さかな/佐藤博一
早朝に新聞を取って来て居間で広げると寒さまで広がる気がします
。冬の日々の何気ない事柄ですが好きな句です。(堀佐夜子)
★床屋して手話に送られ冬帽子/守屋光雅
★一月の鴉鳴き声まで黒し/今井伊佐夫
★冬の海平らならざる水平線/岩本康子
★川明かりうかべて枯野ひろびろと/宮地ゆうこ
★旅人のもてなしつづき雪夜来ぬ/河ひろこ
【佳作/28句】
★輪飾りを舳先に陸の老朽船/藤田荘二
単なる写生句ではない。砂浜にあるいは小さな漁港に置かれ放しの
廃船であろうが老漁師(船主)の<新年のおもい>を汲み取ろうと
する作者が見える。(守屋光雅)
テレビの家族に乾杯の一シーンのような。持ち主の純朴さを感じま
す。(矢野文彦)
★干し布団猫の早速登り来る/矢部れい子
猫の姿が活き活きと描かれている一句。小春日の陽射しの温もりが
伝わってきます。(木村 修)
★淡雪を傘にたたんで日本髪/志賀たいじ
あまりにも絵になり過ぎている感、でも良いですね。日本もかく有
りたいものです。希望をもって・・・。(澤井 渥)
★熱燗てふ手話に旨さのこぼれけり/古賀一弘
着眼のユニークさに敬服。心も暖まる。(安丸てつじ)
★一年をおさめて雪の白さかな/石井秀子
一年を振り返るといろんな事柄が頭をよぎり、ふとみると一面真っ
白な雪が広がって気持ちを新たにしてくれます。(大石和堂)
★鶏旦の機窓にあまる富嶽かな/おかがわひろあき
ああ、こんな景を目にしたいと思いました。お正月の富士山を詠ん
だ現代的でダイナミックな句ですね。私事になりますが、11月の小
諸大会へ参加のため上京する折に、機上から遠くに絵のように美し
い冠雪の富士をはっきり目にしたのは感動的でした。(岩本康子)
★影もなく白一色の初景色/藤田裕子
身を切るような寒さの初景色。すっきりとした表現にその景が一層
想像されて、そこに立っている作者の姿も思われる句です。(河ひ
ろこ)
★教室に賀詞の大きく子らを待つ/池田多津子
新年の、学期始め。子供たちを待つ教室に、あたたかな思いがあふ
れます。(宮地ゆうこ)
★鉈(なた)切りの梅どっと活け初市場/おおにし ひろし
「どっと」がとてもいいと思います。初市場の活気、華やぎ、楽し
くなります。(多田有花)
★とりどりの酉競い合う賀状かな/黒谷光子
色々志向の凝らした賀状が届き楽しみですね。一枚一枚楽しんでい
る様子が目に浮かびます。(野本俊枝)
★到来の牡蠣殻開き酢橘絞る/河野一志
★空気ピシリとみかんの色きわめる/碇英一
★事始め固めの糊のシャツを着る/林 緑丘
★散紅葉せせらぎ静かに時刻み/渋谷洋介
★せがまれて絵本開くや冬ぬくし/岩本喜代子
★一斉に吐く息高し寒稽古/能作靖雄
★文字を書く初明りのその上に/山中啓輔
★初雪やオセロは白に変わりけり/木村 修
★新年を祝ぐ母刀自の来し方に/野田ゆたか
★冬日和おのが光を曳くランナー/大給圭泉
★冬麗や図書館までの煉瓦道/田村征三
★河川敷どすんと寒の居座れり/堀佐夜子
★大根の畝せり出でて輝けり/古田けいじ
★手に余る蜜柑両手に走り寄る/高橋秀之
★屋根低く冬日巡りて雲と消ゆ/長岡芳樹
★鯉眠る水の底にも日脚伸ぶ/池田加代子
★寒蜆つぶやく部屋に君待つも/作者不明
★冬の霧静かに夜の街包む/多田有花
■選者詠
●高橋信之
★枯れ美しく日がさんさんと降り注ぐ
★冬の日が西へと低く渡り行く
★塾の子が泥付き大根持ち来る
●高橋正子
★ときおりに梅の花散る青き空
★鴨あそび水の眩しさそこここに
★かわせみの青を止まらせ枯最中