■オンライン2月句会入賞発表/高橋信之選■
【金賞】
★水に透き鮠の子短く行き戻る/碇英一
「鮠」は、春の季語で、早春の景を捉えた。自然の営みは、まだゆ
っくりとしたものではない。(高橋信之)
春を待って動き出した小さな命の躍動感を感じました。(ふるたけ
いじ)
【銀賞/2句】
★淡雪止み杉の新芽の伸び目立ち/河野一志
字余りで、推敲の余地のある句だが、淡雪を透けるように見える杉
の新芽のみどりが、すがすがしい。「伸び目立ち」は、雪のなかで
もすでに伸び始めている芽の力のたくましさを詠んで、訴えるもの
がある。清潔で、すがすがしい生命を感じさせてくれる句。(高橋
正子)
★デージーや溢れんばかり大鉢に/安丸てつじ
そのままの情景を切り取って、詩の言葉とした。作り手の率直な思
いがよく、押し付けがないのである。(高橋信之)
【銅賞/3句】
★裸木の虚心の影の平らかに/志賀たいじ
冬枯れの裸木の列に虚心坦懐をみた<観照>が素晴らしい。枯淡の
味わいです。(守屋光雅)
★諏訪の湖寒天干しの風容れる/小島花英
諏訪湖は深いところでも水深が7メートルほどで、そのために湖全
体が凍るのだと聞いている。寒天を作るころの風が全て諏訪湖に吹
き込んでいる。風土がよく現れた句。(高橋正子)
★菜の花や目覚めの朝の空青き/大山涼
心が晴れて、すっきりと目が覚めたことに、感謝したくなるような
朝。菜の花の黄色と、朝の空の青さが対照的でイメージがはっきり
して、言葉と気持ちがよくあっている。(高橋正子)
※選者作品は、金銀銅賞から割愛した。
【高橋信之特選7句】
★鴨引いて水面に風の起きやすし/高橋正子
「鴨引いて」は、「鴨帰る」のことで、春の季語。「水面に風の起
きやすし」は、いい感覚で、春浅きころの動きを捉えた。(高橋信
之)
★下萌えの土手に靴紐直しおり/黒谷光子
散歩の途中でしょうか? 弛んだ靴紐を締め直す。下萌えの土手に
春の息吹きを感じます。(澤井 渥)
靴紐を結び直して、さて、それからは。下萌が前向きに捉えられて
いて好きな句です。(野田ゆたか)
★黒潮の潮目はるかに梅匂ふ/伊藤華将
雄大な景である。恐らく紀南の景だろうが、遥かに黒潮の潮目の見
えるところに、野梅が匂つているのである。(一清)
黒潮と梅の組み合わせ、スケールの大きさに感服。(渋谷洋介)
★水に透き鮠の子短く行き戻る/碇英一
★デージーや溢れんばかり大鉢に/安丸てつじ
★裸木の虚心の影の平らかに/志賀たいじ
★雀来てすぐ飛ぶ冬田の明るさに/脇美代子
【高橋正子特選7句】
★雪解野に明るさあふれ水生まる/池田加代子
立春をすぎると、日脚も次第に伸びて空も野も明るくなる。雪解け
の野ば、雪に日が反射して「明るさあふれ」に、水が小さく生まれ
出してくる。耳を澄ませば聞こえる水音に、春の誕生を知る。(高
橋正子)
★白梅の香りが好きで歩を返す/篠木 睦
暖かな春風の中で梅が咲いていました。しばらく見とれて歩を運び
ましたが、大好きな白梅の香りをもう一度感じてみたくなりとって
返しました。心を素直に句に読まれとても春の明るい雰囲気と喜び
が溢れている句と思います。(長岡芳樹)
行過ぎて、もう一度、花と香りを確かめる、そんな春を楽しむ気持
ちがそのまま句になった好きな句です。(大石和堂)
通りすぎたけど、戻って花や香りを楽しむ。とても好きです。(黒
谷光子)
★豆撒きに子の待つ姿浮かべつつ/平田弘
節分の豆撒きを楽しみにして、父親の帰りを待っている子供を思い
浮かべながら家路を急いでいる、慈愛あふれる父親像がある。(高
橋正子)
★里山の梅の大枝届きけり/希往来
里山から切り出された梅の大枝が見事で、みずみずしい。句も詠み
方が大ぶりで、句材とよくマッチしている。(高橋正子)
りっぱな梅の枝が春の空気をいきいきと伝える。剪り出して届けて
くれた人の心が嬉しい。(宮地ゆうこ)
★淡雪止み杉の新芽の伸び目立ち/河野一志
★諏訪の湖寒天干しの風容れる/小島花英
★菜の花や目覚めの朝の空青き/大山涼
【入選T/10句】
★さざなみの光る一つは春の鴨/藤田洋子
池のさざなみが、きらきら光っている。そこに、春の鴨を見つけた
。明るい春の喜びが伝わってきます。(藤田裕子)
★春灯や絵本片手に寝入りたる/佐藤 博一
春の夜に幼児が絵本を読みながら、あるいは読んで貰いながら夢の
中に入った安らかな幼顔を思います。(河野一志)
★菜の花とまっすぐ走る海岸線/松本豊香
海岸線に沿ったまっすぐな菜の花の道を走ると、どんなに気持ちよ
いだろうと爽やかな空気を分けていただきました。(脇美代子)
日当たりのよい海岸線には、春が真っ先にやってきますね。早春の
青い海、陸は黄色 い菜の花、少し冷たさが残る風を受けながら
まっすぐ走る。いいですね。(竹内よよぎ)
当地の海岸線を彷彿とさせる。春の壮大な風景が浮かびました。句
の平凡さ故に魅力ある句だと感じます。(おおにし ひろし)
明るい色彩と温かい空気、広々とした景色春らしいです。(碇 英
一)
★板材の並びて二月の陽を返す/池田多津子
★大根の芯の芯まで味のよし/藤田裕子
★早春の畑にひろびろ鍬を打つ/宮地ゆうこ
★春浅き土の匂いの立ちにけり/大山涼
★地吹雪や大願成就の絵馬が鳴る/守屋光雅
★春光に白き乳房の乳溢る/山中啓輔
★ゆさゆさと揺れる重さへ梅咲けり/古田けいじ
【入選U/10句】
★一村の高きに寺あり冬欅/甲斐ひさこ
凛と欅の木の聳えている村、四季にいつも目立ちいる寺の欅は冬は
特に皆の目がいくのであろう。(大給圭泉)
★切捨てし臓器の洞(ほら)や春の風/山中啓輔
どきっとしましたが、「春の風」ですくわれて希望がある句になっ
たと思います。(石井秀子)
★ガイド持つゴム風船や古都巡り/古賀一弘
春の修学旅行の様子が、とくにゴム風船という言葉でよく表現され
ている。(齊藤まこと)
★萌えなんと水吸う音や春の土/池田加代子
やっと春が来た。「水吸う音」素敵な表現で好きな句です。(祝恵
子)
★芽吹き待つ森柔らかく膨らんで/古田けいじ
芽吹き前の森が膨らんでいるとはいいとらえかたで好きな句です。
(篠木 睦)
★海苔粗朶へ今し落暉の羽田沖/北野一清
無幾何学的にならぶ海苔粗朶越しにきらきら輝きながら傾く夕陽の
美しい景、田舎から上京してビル街の雑踏から逃れこの景色をみた
時に心の癒される一とき、大都会東京の中で目にする光景である。
(志賀たいじ)
★春光に誘われ行きし車椅子/堀佐夜子
春は光から一番感じられると思います。まだ少し寒くても春の光に
思わず出かけたくなる明るい気持ちが感じられ好きな句です。(や
まなか みゆき)
★春時雨今晴れようとしてをりぬ/かわなますみ
★介護ヘルパー時間励行息白し/矢野文彦
【佳作/25句@】
★種蒔くや土の微熱をてのひらに/北野一清
美しく耕やされた後の田の土や農夫のしぐさが伝わます。(甲斐ひ
さこ)
種を蒔かんとして、微熱を帯びたような土の温もりを知り、思わず
掌に乗せてみた。春を感じた、喜びの瞬間であります。(山中啓輔
)
種を蒔いてその上からぱらぱらと土をかぶせる。掌に土のほのかな
暖かさを感じながら期待が膨らむ。祈りを込めて種を蒔く作者の姿
が見えるようです。(今村七栄)
★それぞれの梅を咲かせて古木かな/竹内よよぎ
樹齢何百年という古木が見事に梅を咲かせています。それぞれの人
生のように、長い年月を咲かせ続けた古木に見入っている静かなひ
と時です。(河ひろこ)
★.モーツアルト余韻の歩幅草青む/希往来
音楽会の帰りでしょうか。モーツァルトを聴いた後は、その穏やか
な調べが体に残っていて、足の運びも優しくなります。光に満ちた
モーツァルトの音楽と、いつもより丁寧な歩みが、草の青さを気づ
かせたのですね。(かわなますみ)
心が充実したひと時、いいですね。(伊藤 華将)
★受験子の結果待つ間のLet.It.Be/石井秀子
発表を待つ間の親子の心境。あなたまかせを英語にした所が秀逸。
(安丸てつじ)
受験児とletitbeの採り合せがぴったりで効果的デス(佐藤 博一)
★梅が香に潮の香溶けし坂の道/作者不明
いつも潮の香りに満ちた坂の道に、今日は梅の香りもする。春の優
しさが感じられる句です。(松本豊香)
★リハビリに折りしと紙雛いただきし/黒谷光子
紙雛に残る手の温み、交わされたであろう会話のあたたかさ。紙雛
の優しい色も、春の希望を感じさせてくれます。(池田加代子)
★早春や樹々根開きて小さき音/河ひろこ
春の盛りを前に一生懸命水を取り込もうとする樹々たち。
聞こえるはずのない音が心に響いてきます。(木村 修)
★お地蔵の前垂れ替へてそして春/伊藤華将
作者がご自分でお家の近くのお地蔵様の前垂れを替えられたのです
ね。冬の間に汚れてしまった物を替えて春を迎える。春を讃える句
で好きな句です。(堀佐夜子)
【佳作/25句A】
★水辺から雲浮く空に鳥帰る/高橋秀之
★熱き劇観て余寒の街に出る/岩本康子
★早良野(さわらの)の小川ゆったり水温む/やまなかみゆき
★高き山雲に隠れて吹雪来る/長岡芳樹
★湯豆腐に列なすことも御門前/野田ゆたか
★返信は足摺の野の花便り/おおにしひろし
★含羞や乙女の像に春日影/作者不明
★目を丸く言葉始める稚児の春/作者不明
★春もやや都心のビルの影薄し/篠木睦
★薄氷をけんけん跳ぶ子赤い靴/野本俊枝
★袋ごと小ぶりの白菜渡される/祝恵子
★軟らかき雨となりたり梅開く/澤井渥
★踏まれても踏まれてもなお麦青し/渋谷洋介
★まるごとをざぶざぶ濯ぐ水菜かな/長瀬正之
★首据はる嬰の食ひ初め春二月/作者不明
★少しづつ緑を解きて春匂う/大給圭泉
★雪催い満面笑みの児の元気/大石和堂
■選者詠/高橋信之
★芽のふくらみの大きな空に明日がある
大きな空に向かって、芽がふくらんでいく。空は広々と芽吹きを待
っている。明日への希望がふくらみます。(池田多津子)
★春浅き時を刻みて進む針
★裸木の幹へまっすぐ朝日が届く
■選者詠/高橋正子
★鴨引いて水面に風の起きやすし/高橋正子
「鴨引いて」は、「鴨帰る」のことで、春の季語。「水面に風の起
きやすし」は、いい感覚で、春浅きころの動きを捉えた。(高橋信
之)
★セロリを余して厨の春寒き
★春光を抱えし鳩の羽ばたきよ
【互選高点句】
13点 菜の花とまっすぐ走る海岸線 /松本豊香
12点 黒潮の潮目はるかに梅匂ふ /伊藤華将
10点 諏訪の湖寒天干しの風容れる /小島英花
【互選高点者】
17点 篠木 睦
17点 伊藤華将
14点 北野一清
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