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伝言板

高橋信之選
第66回オンライン月例句会入賞作品
2005年10月9日


■オンライン10月句会入賞発表/高橋信之選■

【金賞】
★担がれて案山子の田から遠ざかる/池田多津子
稲刈りが済むと、田はきれいに片付けられる。案山子も片付けられ
るもののひとつ。雨の日も風の日も、田に立っていた案山子は、目
も雨に流れてすっかり古びてしまった。捨てるのに忍びなく、ご苦
労さんと、担いで持ち帰られるのである。案山子にも人の情が移っ
ている。(高橋正子)

【銀賞/2句】
★落ちている桐の一葉の明るさよ/碇えいいち
大きな桐の一葉。落ちた桐の一葉に日の、黄葉した明るさに今さら
ながら驚かされる。(高橋正子)

★青空を置いて銀杏落ちてくる/吉田晃
「青空を置いて落ちてくる」がいい。真っ青に晴れた空は、高く、
地上のものには触れることもできそうもない。青空にそびえ立つ銀
杏の木から落ちる銀杏は、その空をそのままに一個の重力で落ちて
きた。銀杏の落ちる様子をよく観察し、的確に表現できている。
(高橋正子)

【銅賞/3句
★てのひらに水の重みよ梨を剥く/臼井虹玉
梨のみずみずしさは、おおぶりの豊水などの梨によって実感され
る。(高橋正子)
<幸水>か<長十郎>か、自然の恵みを受け、こんなにも瑞瑞しい
梨が育った不思議、作者の驚きが伝わってくる。(守屋光雅)
作者らしい優しい表現で、「水の重みよ」がとてもいいと思いま
す。(岩本康子) 

★風呂敷の広げた四角秋深む/堀佐夜子
風呂敷を広げると、そこに秋の空気の、何もない空間が生まれ
る。そこに生まれる「秋」を感覚的に捉えた句。(高橋正子)

★名水を汲みし寺より登高す/野田ゆたか
「名水」は、自分なりの捉え方をした表現であってほしいが、内容
がいい。山裾の寺か。寺に湧き出るうまい水を汲んで水筒に入れ、
そこより高く登っていく。山登りにうまい水は欠かせない。
(高橋正子)

※選者作品は、金銀銅賞から割愛した。



【高橋信之特選7句】
★担がれて案山子の田から遠ざかる/池田多津子
今年は豊作だった。案山子さんご苦労様。たぶん案山子も笑った顔
。少し滑稽味を感じ好きな句。(古田けいじ)

★青空を置いて銀杏落ちてくる/吉田晃
以前に、どなたかが桐の花で空を残してと表現した句を見たことが
あるような気がしますが、たとえそうであっても、この句の素晴ら
しさは損なわれないと思いました。落ちた実から目線をあげてふと
上げたとき、実は落ちているのに空だけ残っている。秋ですね。
(竹内よよぎ)
ハッとした句である。落下する銀杏の背景にある「青空を置いて」
が、この句を発見のある句にしている。(飯島治蝶)
なぜでしょう、一読で「水煙らしい」俳句と感じました。「桐の花
空を残して散りにけり」「若竹伐り空もろともに落ちてくる」等の
愛唱している佳句と、どこか繋がるからかもしれません。頭上より
手もとへ授けられるもの、けれど決して手の届かない空、それらへ
の想いが、ここでは「銀杏」に託され、「青空を置いて」という新
たな言葉を生み、また多くの共感を集めていくのですね。その瞬間
に立ち会えて幸せです。(かわなますみ)

★新蕎麦や村じゅうを水走る音/作者不明
小川の音、水車の音、新蕎麦の収穫に湧き立つ村の喜びが伝わって
来るようですし、綺麗な水で作られた新蕎麦が美味しそうです。
(今村七栄)

★風呂敷の広げた四角秋深む/堀佐夜子
★袋取り陽光受けよりんごの実/河野一志
★落ちている桐の一葉の明るさよ/碇えいいち
★新豆腐角くつきりと切られけり/齊藤まこと

【高橋正子特選7句】
★青空を置いて銀杏落ちてくる/吉田晃
「青空を置いて落ちてくる」がいい。真っ青に晴れた空は、高く、
地上のものには触れることもできそうもない。青空にそびえ立つ銀
杏の木から落ちる銀杏は、その空をそのままに一個の重力で落ちて
きた。銀杏の落ちる様子をよく観察し、的確に表現できている。
(高橋正子)

★てのひらに水の重みよ梨を剥く/臼井虹玉
作者らしい優しい表現で、「水の重みよ」がとてもいいと思いま
す。(岩本康子) 

★こんなにも数多の柿に日の当たる/池田加代子
★抱え来る白き野の風花芒/池田多津子
★名水を汲みし寺より登高す/野田ゆたか
★初潮の波の音鳴る舟溜/甲斐ひさこ
★呼応して海峡渡る霧笛かな/古賀一弘

  

【守屋光雅特選7句】
★てのひらに水の重みよ梨を剥く/臼井虹玉
<幸水>か<長十郎>か、自然の恵みを受け、こんなにも瑞瑞しい
梨が育った不思議、作者の驚きが伝わってくる。(守屋光雅)

★秋夕焼けケンケンパーの子らの路地/堀佐夜子
夕食前の元気な子供等の遊び場に占領された路地を夕焼けが照らす
ありふれた明るい風景と思います。(河野一志)
童画を見ているような、なつかしい風景です。(黒谷光子) 

★時移る雨に色増す酔芙蓉/矢野文彦
★雨上がり香り鎮めし金木犀/河野一志
★木の実落つ千体仏の笑み深し/河ひろこ
★一片の柚子の香たちぬ澄まし汁/石井孝子
★秋惜しむパスタに庭のハーブ乗せ/作者不明

【河ひろこ特選7句】
★由緒書だけの城址や薄紅葉/篠木睦
今は無き城を偲ぶ作者の句でしょう。由緒書を立ち読みしている傍
らには薄紅葉が語りかけているようにも見えます。季語が控えめ美
しく添えられてます。(河ひろこ) 

★名水を汲みし寺より登高す/野田ゆたか
★秋蝶の雨後の陽射しをはこびけり/尾ア 弦
★岬回りバスは湯の里紅葉狩/長岡芳樹
★てのひらに水の重みよ梨を剥く/臼井虹玉 
★一片の柚子の香たちぬ澄まし汁/石井孝子
★コスモスに揺れて優しい風になる/石井秀子

【平田 弘特選7句】
★青空を置いて銀杏落ちてくる/吉田晃
空の青と銀杏の色の対比が見事です。(平田 弘)

★稲刈り機一直線に遠ざかる/大給圭泉
小気味よい稲刈りの爽快感がよく出ている句と思います。
(長岡芳樹) 

★抱え来る白き野の風花芒/池田多津子
★名水を汲みし寺より登高す/野田ゆたか
★秋の朝摘んで野花の雫切り/藤田洋子
★秋野菜画材となりて子ら描き/飯島治蝶
★晩秋の牛半眼に昏れなずむ/志賀たいじ
★呼応して海峡渡る霧笛かな/古賀一弘



【入選T/10句】
★湧ける霧流るる霧の峠みち/尾ア 弦
この作品は、場所は特定できませんが、リズム感、臨場感ともに素
晴らしいですね。箱根から御殿場へ抜ける乙女峠も今は車で簡単に
通過できますが。(佐藤貴白草)

★秋の海影なすものの何もなし/山中啓輔
何もない海を詠んで坦々とした句だけに、作者の胸中はと連想させ
る深みのでる句と思いました。そこが作者の狙いかも知れませんが
、そこにに惹かれて採らして頂きました。(志賀たいじ)
鳥の影もない、船の影もない、何の影もない、静かに広がっている
秋の海がいいです。 (藤田裕子)

★北摂の峰引っ掻いて秋の雷/甲斐ひさこ
中7の「峰引っ掻いて」がいい。秋の雷の凄まじさが感じられる。
(古賀一弘)

★秋惜しむパスタに庭のハーブ乗せ/作者不明
秋の贈り物のハーブの香のパスタ。香りと共に、行く秋を惜しむ気
持ちが伝わってきました。句のリズムがよくて好きな句です。 
(野田ゆたか) 

★稲刈り機一直線に遠ざかる/大給圭泉
小気味よい稲刈りの爽快感がよく出ている句と思います。
(長岡芳樹) 

★秋風の分だけ軽し旅鞄/木村修
秋風が吹き始めると旅に出たくなる、いい季節になりました。風に
誘われて心も軽く出かけたい、そんな気持ちになりました。
(池田多津子)

★りんご畑袋はじけて空に青/守屋光雅
★泥の掌に溢れ零れる花茗荷/今村七栄
★漣を果てなく広げ秋の湖/岩本康子
★とっぷりと日暮れて匂う栗の飯/藤田洋子



【入選U/25句】
★ただ一つクロスの墓標草の花/志賀たいじ
四角い墓石の中にぽつんと立つ十字架の墓標。今時珍しい風景では
ないが何となく異国情緒も漂う。草の花という渋い季語がよく似合
う。(安丸てつじ)

★一片の柚子の香たちぬ澄まし汁/石井孝子
香しき柚子が澄ましの椀から立ち上る秋の夕餉の楽しさにほっとし
ます。(大石和堂)

★雨しずか秋明菊の白膨らむ/安丸てつじ
雨も秋明菊も静かな明るさをまとっていて安らかです。
(臼井虹玉) 

★林檎剥く今は貴方の眼鏡だけ/竹内よよぎ
一人で林檎を剥いていると、いつもの場所にある、愛しい人の遺し
ていった眼鏡に、ふと視線が向いてしまう。 (山中啓輔)


★人なかの一人の時を秋の雲/矢野文彦
澄んだ空高くゆく秋雲のように、人の中にいるものの、一人の豊か
な時間がゆっくりと流れているようです。一人で眺め入る秋の雲の
実在感が、ことのほか強く印象付けられます。 (藤田洋子)

★紫蘇の実を採れば香りが手に移る/古田けいじ
手についた紫蘇の香りが、いい匂いで伝わってきます。
(甲斐ひさこ) 

★ひつじ田や出発進行縄電車/古賀一弘
日本の原風景を観ました。縄電車…何故かとても懐かしく心が暖か
くなりました。(石井孝子)

★湖騒ぐ近江の国は稲の波/大石和堂
秋風が少し強く吹く日の近江米で有名な広々とした稲田を思い浮か
べました。(堀佐夜子)

★茸籠を逆さに開けて華やげり/河ひろこ
その日一生懸命集めた数々の茸。改めて目の前に広げてみた時の喜
びが伝わってきます。(木村修) 

★野に混じる野菊の白の愛らしさ/平田 弘
野原で見つけた真白き野菊の愛らしさに、清さを思います。
(祝恵子)

★岬回りバスは湯の里紅葉狩/長岡芳樹
海を見てるうちに紅葉も見えてきて温泉町について落ち着く、なん
て気持ちの良いことでしょう。このような景にあったことまざまざ
と思い出しました。 (大給圭泉)

★腰掛けた祖母と並んで栗を剥く/脇坂紀子
暖かい家族の思いが伝わってきます。きっと美味しい栗ご飯が炊き
上がることでしょう(大山凉) 

★曼珠沙華さらし尽くして散る日得し/かわなますみ
生きる物全て淡くなり散っていくことへの諦観を感じます。
(碇英一)  
 
★夕暮れて穂薄の揺れ静かなり/藤田裕子
★秋祭り母郷は喧嘩神輿の街/おおにしひろし
★暁闇や金木犀の香を零し/渋谷洋介
★街中の母校夜学の灯がともる/高橋秀之
★湯煙に木犀の香ただよいて/祝恵子
★金木犀部屋の空気を明るくす/日野正人
★秋桜揺るるも神の意のままに/佐藤貴白草
★返照の空の青さや秋茄子/大山涼
★曲替わりブンブカブンブカ運動会/霧野萬地郎
★京格子並ぶ小径や十三夜/井上明
★ベランダのあさつき葉が出て元気でる/松田けいこ
★秋祭り青い法被に焦げた肌/深津美幸

 

■選者詠/高橋信之
★秋風吹き池に過去なるもの沈む
いつも見慣れた秋風の池の面を見詰めていると、悲喜こもごも数々
の思い出が蘇って来る。心情句ながら、これに勝る秋景はないでし
ょう。(おおにし ひろし)
秋の深まる万象がこの句には表言されている。
上句の措辞がすばらしいと思います。(霧野萬地郎) 

★縦なるもの横なるものよさわやかに
それが何なのか分かりませんが、作者の視点に共感します。
(矢野文彦) 

★暁けてゆく光にあふれ秋高し
透明な秋暁に溢れるように広がる光。「暁けてゆく光にあふれ」と
一気に高まっていく、神々しい調べに惹かれました。 
(池田加代子)
希望に満ちた輝く朝が理屈なくいい、そう感じました。
(尾ア 弦)

■選者詠/高橋正子
これよりは山の麓へ曼珠沙華
荻の花見せて海ゆくローカル線
青柚子を刻みて風邪のひきはじめ

 ■互選句/野田ゆたか集計

【互選高点句】
17点 てのひらに水の重みよ梨を剥く /臼井虹玉
14点 青空を置いて銀杏落ちてくる /吉田 晃
8点 こんなにも数多の柿に日の当たる /池田加代子

【互選高点者】
18点  臼井虹玉
14点  吉田 晃
14点  池田多津子

選者詠句は、集計から割愛しました。
名乗のない句(作者不明)は、失格として集計しませんでした。  



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