■オンライン10月句会入賞発表/高橋信之選■
【金賞】
★担がれて案山子の田から遠ざかる/池田多津子
稲刈りが済むと、田はきれいに片付けられる。案山子も片付けられ
るもののひとつ。雨の日も風の日も、田に立っていた案山子は、目
も雨に流れてすっかり古びてしまった。捨てるのに忍びなく、ご苦
労さんと、担いで持ち帰られるのである。案山子にも人の情が移っ
ている。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★落ちている桐の一葉の明るさよ/碇えいいち
大きな桐の一葉。落ちた桐の一葉に日の、黄葉した明るさに今さら
ながら驚かされる。(高橋正子)
★青空を置いて銀杏落ちてくる/吉田晃
「青空を置いて落ちてくる」がいい。真っ青に晴れた空は、高く、
地上のものには触れることもできそうもない。青空にそびえ立つ銀
杏の木から落ちる銀杏は、その空をそのままに一個の重力で落ちて
きた。銀杏の落ちる様子をよく観察し、的確に表現できている。
(高橋正子)
【銅賞/3句
★てのひらに水の重みよ梨を剥く/臼井虹玉
梨のみずみずしさは、おおぶりの豊水などの梨によって実感され
る。(高橋正子)
<幸水>か<長十郎>か、自然の恵みを受け、こんなにも瑞瑞しい
梨が育った不思議、作者の驚きが伝わってくる。(守屋光雅)
作者らしい優しい表現で、「水の重みよ」がとてもいいと思いま
す。(岩本康子)
★風呂敷の広げた四角秋深む/堀佐夜子
風呂敷を広げると、そこに秋の空気の、何もない空間が生まれ
る。そこに生まれる「秋」を感覚的に捉えた句。(高橋正子)
★名水を汲みし寺より登高す/野田ゆたか
「名水」は、自分なりの捉え方をした表現であってほしいが、内容
がいい。山裾の寺か。寺に湧き出るうまい水を汲んで水筒に入れ、
そこより高く登っていく。山登りにうまい水は欠かせない。
(高橋正子)
※選者作品は、金銀銅賞から割愛した。