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投句・選句箱

高橋信之選
第67回オンライン月例句会入賞作品
2005年11月13日


【金賞】
★栴檀の実は青空へ奉げらる/碇  英一
力強い句である。作者らしい言葉の「奉げらる」があるからである
。(高橋信之)
「奉げらる」は、作者らしい感覚。栴檀の実が青空に散らばったよ
うに枝についている様は、美しい。それを「奉げる」という気持ち
で表した。栴檀の実によって、青空はますます青く澄んでくる。
(高橋正子)

【銀賞/2句】
★草の絮軽きものより風に乗り/志賀たいじ
季節を捉えた作者の詩的真実がある。科学的な真実か、どうかは、
また別の問題だ。(高橋信之)
草の絮が少しずつ、すこしずつ離れて風にのっていくようすが、晩
秋の気配をさびしく感じさせてくれている。もう少し風が強くなる
と、ほどんどの絮が風に運ばれてしまうのだろう。(高橋正子)
軽い草の絮。そのなかでもより軽いものがいちはやく風に乗って遠
くへ旅立ちいきます。その軽さが大変心地良く感じられました。
(池田加代子)

★朝日差すわっと煌めく草の露/山中啓輔
一読し、作者の体験した事実が鮮明に伝わってくる。平明な言葉に
無駄がない。(高橋信之)
朝日がさっと差すと、それまで静かだった草の露が、いっせいに輝
き始める。そのおびただしい露の輝きは、「わっと」と表現される
ほどの驚きがある。(高橋正子)

【銅賞/3句】
★海ぎわの車窓に匂えり秋の潮/尾ア 弦
リズムにたどたどしさがあるが、できるだけ正確に気持ちを表現し
ようとする丁寧さがある。海側の車窓の傍に座ると、秋の潮の匂い
がしてくる。海岸線に沿う旅のすがすがしさがいい。(高橋正子)

★北風の吹くそのままに竹の鳴る/池田加代子
北風が吹くと、竹は風にしたがってなびき、それがそのまま竹の鳴
る音となる。しなやかな竹に北風が吹くさまは、自分が竹の身にな
ったような具合である。(高橋正子)

★足元に一度弾みて木の実落つ/甲斐ひさこ
木の実が落ちたのだが、一度足元に弾んでそれから転がる。木の実
の落ちる瞬間を見届けた思いが、楽しく詠まれている。
(高橋正子)
落下する木の実の様子がよく見てとれて、秋たけなわの季節の楽し
さが感じられます。(藤田洋子) 


※選者作品は、金銀銅賞から割愛した。



【高橋信之特選7句】
★大根干す滴こぼれているままに/吉田 晃
今干したばかりで、冬の始まりの新鮮な「大根」だ。畑の土を洗い
落とした「滴」がしたたり、「大根干す」風景が見えてくる。
(高橋信之)

★息荒しランナーすぎる冬立つ日/祝 恵子
マラソンランナーであろうか。冬を強く意識させる「冬立つ日」で
ある。(高橋信之)

★踏み歩く風に落葉の匂いたち/臼井虹玉
降り注ぐ落葉を音もなく歩くと、落葉の暖かい香りが立ち昇る思い
がする。(平田 弘)
落ち葉の上を歩くとかさかさと音とともに枯れた匂いが一歩踏みし
めるごとに漂ってきます。やさしさ、そこはかとない寂しさを感じ
ます。(大山 涼)

★草の絮軽きものより風に乗り/志賀たいじ
★栴檀の実は青空へ奉げらる/碇  英一
★朝日差すわっと煌めく草の露/山中啓輔
★北風の吹くそのままに竹の鳴る/池田加代子


【高橋正子特選7句】
★落葉松が黄色に抜け出る霧の朝/河野一志
表現に工夫があれば、もっと訴える力がある句だ。霧が立ち込める
高原の朝、落葉松の黄葉の黄色が濃い霧に消されることなく、霧か
ら抜け出るような色で目に映る。晩秋の高原の美しい朝だ。
(高橋正子)

★一面の冬菜どれもが張りつめし/黒谷光子
冬入りの情景が日常の仕事に重なって、緊張感とともに伝わってき
ます。(中村光声) 

★栴檀の実は青空へ奉げらる/碇  英一
★草の絮軽きものより風に乗り/志賀たいじ
★海ぎわの車窓に匂えり秋の潮/尾ア 弦
★次の日へ夜空が回る亜浪の忌/高橋信之
★足元に一度弾みて木の実落つ/甲斐ひさこ

  

【古田けいじ特選7句】
★一針を刺し終え夕餉さんま焼く/西村絢子
刺繍でもしているのだろうか。あと少し、あと少しと楽しんでいる
と、いつの間にか夕暮れ。夕飯の準備は大方調っているのだろう。
あとは、家族の揃う時間を見計らってさんまを焼くだけ。主婦らし
いいい生活俳句。(高橋正子)、

★産声や億光年の星冴える/竹内よよぎ
赤ちゃんの誕生と宇宙の星の光、神秘なものを感じ、「星冴える」
がそれを一層深くしています。(藤田裕子)
小さな生命、一方では悠久の宇宙、いずれも我々は深くかかわって
います。(霧野萬地郎)
赤ちゃんの元気な産声を聞いてほっとし、外に出てみると美しく輝
く星々が見られ、 嬉しさと力を体に感じているお父さんの姿が見
え、好きな句です。おめでとうございます。 (長岡芳樹)
人の命の誕生と億光年の星との対比が素晴らしいと思います。ほん
とに大変だけど幸せな "Happy  Birthday" ですね。(岩本康子)

★次の日へ夜空が回る亜浪の忌/高橋信之
★北風の吹くそのままに竹の鳴る/池田加代子
★谺して銃声一発山眠る/古賀一弘
★売られゆく牛の一声初しぐれ/北野清市
★落葉松が黄色に抜け出る霧の朝/河野一志


【日野正人特選7句】
★風の匂い包みコスモス束ねけり/おおにしひろし 
柔らかい風に揺られ香りをふりまくコスモス。その匂いは我が故郷
そのものであり、束ねられた匂いに人々のやさしが溢れているよう
です。(日野正人) 

★稲架解かれ一面を風渡りゆく/河ひろこ
一面が具体的でないので、句のイメージが弱まるが、稲架が解かれ
ると、広々とした田が広がる。その田の一面を風がなんの触りもな
く、吹き渡っている。これからいよいよ冬を迎える田の景色が詠ま
れている。(高橋正子)

★青蜜柑空より青き藍の葉に/渋谷洋介
青蜜柑のなっている蜜柑の葉叢を、「空より青き藍」と捉えた感覚
が新鮮だ。青蜜柑の青色の移りによって、蜜柑の葉の色が藍と捉え
られたのだ。(高橋正子)

★小春日の菜を洗う水やわらかし/黒谷光子
水を「やわらかし」と詠みとられた作者に。水仕事を楽しんでいる
ように受け取れました。(野田ゆたか)
初冬とはいえ菜を洗う水を「やわらかく」と言う表現は上手いです
ね。(篠木 睦)
水仕事の億劫になる季節、「水やわらかに」に小春日の情感が満ち
ています。(おおにし ひろし)

★大根葉畝はみ出してあおく張る/吉田 晃
★剥きしままの重さ連なる吊し柿/池田多津子
★足元に一度弾みて木の実落つ/甲斐ひさこ


【志賀たいじ特選7句】
★竹の春簡素な青き垂直線/かわなますみ
葉を落とし若竹が成長し、親竹も青々と天を突くさまを、只それだ
けの青き垂直線と簡潔に伝え、意表を突かれた様な臨場感に惹かれ
ました。(志賀たいじ)

★次の日へ夜空が回る亜浪の忌/高橋信之
★栴檀の実は青空へ奉げらる/碇  英一
★鳩並ぶ鴟尾から鴟尾へ小春の日/霧野萬地郎
★剥きしままの重さ連なる吊し柿/池田多津子
★熟れすぎし柿は人の手知らぬまま/大石和堂
★石畳ゆらりゆらりと冬紅葉/高橋秀之


■オンライン句会特別選者は、過去に、以下の15氏にお願いしま
したが、今回は、上記の3氏です。
藤田洋子・野田ゆたか・堀佐夜子・安丸てつじ・藤田裕子・古田け
いじ・碇英一・おおにしひろし・祝恵子・霧野萬地郎・岩本康子・
多田有花・守屋光雅・河ひろこ・平田弘



【入選T/10句】
★青蜜柑空より青き藍の葉に/渋谷洋介
青蜜柑のなっている蜜柑の葉叢を、「空より青き藍」と捉えた感覚
が新鮮だ。青蜜柑の青色の移りによって、蜜柑の葉の色が藍と捉え
られたのだ。(高橋正子)

★新調の帽子冬めく街に出る/野田ゆたか
ものを新調するというのは、なにかとうれしいものだ。新しい帽子
は、買いたてのいい匂いもしているだろう。新調の帽子を意識して
、冬めく街にでると、ささやかな期待や夢も湧いてくる。
(高橋正子)

★海見えて明るき窓にみかん剥く/池田加代子
海の色、みかんの色ふんわりとした冬日の色が見えてきて、暖かく
てて好きな句です。(石井秀子)

★綿摘むやウズベキスタンの大落暉/作者不明
広大な綿畑に綿の実を摘む人たちを、遠く大きな落暉が照らしてい
る。神々しいまでの光景だが、一つ一つ綿の実を摘むのは大変な労
働。綿摘みの労働も大落暉によって救われる思いだ。(高橋正子)

★寒波来てぐっと膨らむ旅鞄/安丸てつじ
冬の旅では、鞄も衣類で膨らみやすい。寒波来襲では、尚更のこと
です。ぐっとがそれを端的に表現しています。(飯島治蝶)

★バス出でて俄かに昏るる紅葉谷/瀧口文夫
人気が急になくなった紅葉谷、「俄かに昏るる」は日暮だけでなく
、肌寒さや寂しさを感じさせてくれます。(碇 英一) 

★夜霧濃し窓の日記に記しおく/かわなますみ
作者にさまざまなものを見せてくれる"窓"への親しい思いが感じら
れます。「窓の日記」は、窓から見える景色が記される実際の日記
なのか、作者が見た記憶がしまわれる場所なのかはわかりませんが
、心惹かれる言葉です。(臼井虹玉)

★落葉掃く箒の音の今日新た/日野正人
冬の到来を思わせる句です。何時もとは違う音に寂しさと身の引き
締まる思いも見えます。(河ひろこ) 

★露おりて野辺の千草に夜明け来ぬ/石井孝子
野辺の千草にも平等に夜明けがやって来る。希望のある深い句、そ
のように感じました。(尾ア 弦)

★こんなにも空は青くて照葉照る/石井秀子
ご存知のことだが、照葉は照葉樹のことではなく、「てりは」とい
って、草や木の葉が紅葉したものが、美しく日光に照り映えている
のをいう。「こんなにも」と感嘆せずにはおれない日に照り映える
紅葉の美しさである。言葉を失うほどを「こんなにも」と口語をう
まくつかっている。(高橋正子)



【入選U/20句】
★若者の歩幅で冬の来たりけり/北野清市
いつまで夏日が続くのかと思っているうちに、いきなり冷え込んで
来る。昨今の季節の移ろいは、まさに若者の歩幅である。
(山中啓輔)
活力に満ちた若者(段々少なくなって来たのも先人である我々の怠
慢が原因?)の歩幅と捉えた作者の感性に拍手を送ります。
(佐藤 貴白草) 
どんどん近づく冬の寒さが見えそうです。(大石和堂) 

★電線にシラソファミレド寒雀/古賀一弘
つい口ずさんでしまいそうな一句。「シラソファミレド」という遠
近法を感じさせる表現がいいですね。(木村 修) 

★おかわりの椀出す袖にいのこづち/木村 修
子育ての回想の句でもよい、また現在の実景描写なら羨ましいです
。(町田智司) 

★冬支度私一人で出きること/町田智司
誠実で、励ましのある俳句と感じました。生活に真摯な作者の姿が
窺えます。冬の厳しさも、新しい季節への期待も含まれていて、好
きな句です。(かわなますみ) 
力仕事は人にまかせて、ひとりでできることはひとりで、冬の備え
は万全。(矢野文彦)

★押し花の紅葉に信濃の旅馳せる/藤田裕子
押し花の紅葉の絵を見て、行きたいと思っていた信濃、旅心が湧い
てきます。「旅馳せる」がいいですね。(祝恵子)

★冬薔薇記念の日には棘抜いて/作者不明
何の記念日かは判りませんが冬薔薇の棘を丁寧に抜いて花束にされ
たのでしょう。其れとも花瓶に山盛りに挿されたのでしょうか。と
ても華やいだ気分にさせてもらいました。(堀佐夜子)

★日差しごと野菊一輪手に包む/藤田洋子
冬のやさしい日差しと共に、野菊に対する優しさと、愛しさが伝わ
って私の心もふわっと暖かくなりました。 (石井孝子)

★冬菊にまずさし初めし光かな/多田有花
★冬の空枯葉踏み行く音高し/平田 弘
★潮騒の音の尖りて冬に入る/篠木 睦
★助手席の膝に舞来る銀杏かな/堀佐夜子
★鷺一羽水面に立ちて息白し/中村光声
★鴨の来て日差しに大きく羽伸ばし/大山 涼
★初冬の光あまねく雨上がり/矢野文彦
★子らの歌指揮棒に乗り冬来る/長岡芳樹
★枯草の匂い懐かし山歩く/岩本康子
★木の実降る人影絶えし芭蕉庵/井上 明
★烏賊釣りの連なる灯り淋しかり/大給圭泉
★子規さんに逢へさう薄の穂が紅し/佐藤貴白草
★亞浪忌やまことの句鈔読み耽り/飯島治蝶

 

■選者詠/高橋信之
★鴨が来て池に動きのある一日
★玻璃越しに鴨の着水みておりぬ
★次の日へ夜空が回る亜浪の忌
師を想い、夜空を見上げる。間違いなく夜空は明日の夜明けに向か
って回転している。師である亜浪の教えを確信している作者であろ
うか。(古田けいじ)
「次の日へ夜空が回る」という何気ないことだが、自然の理に気づ
かされた。「俳句のまこと」を求めた亜浪の忌に、新たな気持ちで
自然と向き合っている作者を思う。 (池田多津子)

■選者詠/高橋正子
★ゆらゆらと泳ぎ揺れたる鴨遠し
★鴨の水さざなみばかりふえゆける
★初冬のスバルの青さ遠すぎぬ

 ■互選句/野田ゆたか集計

【互選高点句】
13点 足元に一度弾みて木の実落つ /甲斐ひさこ
11点 草の絮軽きものより風に乗り /志賀たいじ
11点 小春日の菜を洗う水やわらかし /黒谷光子

【互選高点者】
19点 黒谷光子
15点 甲斐ひさこ
15点 志賀たいじ

選者詠句は、集計から割愛しました。
名乗のない句(作者不明)は、失格として集計しませんでした。

■全作品は、下記のアドレスをクリックしてご覧ください。 http://www.suien.ne.jp/0001/online/k0511z.htm