更新:1999年3月16日


◆オンライン句会3月入選句◆


【最優秀】



紙飛行機横切る風の光りけり           堀佐夜子

評:芭蕉の言葉に「俳諧は三尺の童にさせよ」とあるが、作者の童心が多く

の人の心を打ったに違いない。作者の技術の高さは、「横切る」という言葉

、「けり」という季語の使い方を見ても、充分窺い知ることが出来るであろ

う。(高橋信之)

幼い頃を思い出させてくれる、そんな爽やかな句です。風を切って飛んで行

く紙飛行機の青い空へ吸いこまれていく様子が浮かんできます。(有吉孝史)



【優秀10句】



水温む淡い白まで米を研ぐ       森竹智則

評:水が温んで米を研ぐのも苦にならない頃。楽しく米を研いている感じが

伝わってくる。「淡い白まで」で新鮮さが出ている。(鳩崎良一)

毎日研ぐ米の水にも敏感に春を感じます。「淡い白」が、とても美しく春の

色に変えてくれました。(藤田洋子)



すれ違う子らにも春の匂いする     鳩崎良一

評:作者の広い心と穏やかな日常を物語る一句である。大人たちがみなこの

ような視線を、すれ違うだけのこどもらにも向けることができたらと思う。

(八木泰子)



遠足の山から声の下りてくる      藤田洋子

評:平明な句であるが、その平明さ故に、読み手に訴えてくる力は大きい。

そして、誰もが楽しい気分になる。(高橋信之)

明るい子供達。いい世の中をつくり上げていってほしい。(相原弘子)



春の風藪に吹き詰め明日がある     森 隆博

評:今の現実をしっかり見つめているからこそ、「明日がある」ので、「吹

き詰め」という言葉が作者の内面の充実を語っている。(高橋信之)

日々気持ちを建て直すものが感じられます。その度に、自分が癒されるので

しょう。(相原弘子)



受験の子一点見つむ春の雪         柴田淳子

評:受験生の緊張感と集中力が春の雪の中で、少しずつ溶かされているのだ

ろうか。思いつめた中にも、春の雪で和らげられる。(鳩崎良一)



囀りの山へ山への坂登る        高橋信之

評:全てをどこかへ置いてきた無の世界が思われます。(相原弘子)

春風に誘われて山を登ると、きれいな囀りの聞こえる方へ方へと足が向

きます。春の山はこの句のように、なんて明るく楽しい気持ちにしてくれる

のでしょう。(藤田洋子)



粗塩のまぶす加減や櫻鯛        脇本柾木

評:「粗塩」と「櫻鯛」との取り合わせがよい。程よい「加減」の取り合わ

せとなった。色も美しく、味も良し。(高橋信之)



口笛で選ぶネクタイ春の色       江田 晋

評:春の楽しい雰囲気がそのまま表現された句。春になると、ネクタイを選

ぶ気持ちまで変わってくる。(鳩崎良一)

年配の人が思われます。口笛にこれまでの事柄を包んでいって

いる。(相原弘子)

明るい春の朝、軽い口笛が聞こえます。選んだネクタイの色も見えてきます

。さて、今日はどんな良いことがあるのでしょう。男の方のこんなさりげな

い句もいいですね。(藤田洋子)



静寂の音の中より蝶生る        阪本登美子

評:蛹から蝶へ生まれてくる瞬間を、よくとらえた句。「静寂」の言葉がよ

く生きている。スローVTRでも見ているよう句である。(森竹智則)



あおあおと蓬の空を持ち帰る      森 隆博

評:空を持ち帰るという表現に心をぐっとつかまれました。蓬も空も作者の

心も、あおあおとして新鮮です。(八木泰子)



【入選10句】



ゆっくりと登る楽しみ芽吹く山/高橋信之

評:今ごろの山登りは楽しい。芽吹く山を見ながら、ゆっくり登ると気持ち

もうきうきしてくる。そのような思いを感じさせてくれる句です。(鳩崎良一)

作者が、ゆっくりと山を登りつつ感じる春の訪れを読者もまた感じとること

ができます。芽吹く山ならばこその、明るさ、楽しさ、これから始まる季節

への喜びがあふれます。(藤田洋子)



トンネルの覆い外されレタスの芽/渡邉道朗

評:畑のビニールの覆いが外され、なかからのぞく小さな芽がレタスだとわ

かる、作者のこまやかな観察がいい。しっとりと落ち着きのある句である。

(八木泰子)



風に耐え蕾の中では春踊る/森竹智則

評:厳しい冬を越え、もう春とは言っても、まだまだ冷たい風。しかし、花

の蕾は春が凝縮されている。すぐにでもそこから春が飛び出してきて、発散

しそうだ。(鳩崎良一)



風船の空へ溶けゆく夕べかな/山口紹子

評:幼い子の手から離れた風船でしょうか。その子は風船への未練と、風船

が消えてゆく空への夢に、同時に包まれたことでしょう。(相原弘子)



枝じゅうにはじけるピンク桃の花/山口紹子

評:はじけるピンクというストレートな表現が印象的。それほどに桃の花が

作者の目に映ったのでしょう。(八木泰子)



春という文字を包みて差しだしぬ/石橋俊行

評:文字を包むという表現から、身辺の春を綴った手紙を想像した。それを

そっと差し出すらしい。好感がもてる一句。(八木泰子)



夢色の菓子召されたか雛の唇(くち)/江田 晋

評:かわいい雛人形を見ていると、夢の世界のよう。夢色という表現でとて

も明るく感じる。(鳩崎良一)



雨だれの音聴く軒の巣の鳥も/八木泰子

評:作者の優しさがよい。母の優しさでもある。(高橋信之)

軒に巣作りした鳥と共に雨音を聞きながら、充実したひとときを過ごされて

いるのですね。しっとりと落ち着きのある情景の中に作者のやさしさや命あ

る者への愛情を感じます。(藤田洋子)



芽吹く木々赤く包まれ鼓動する/鳩崎良一

評:芽吹く木々の鼓動が作者に聞こえた。さくらの木であろうか。幹の張り

が読み手にも音となって伝わります。(八木泰子)

まさに、芽吹く木そのものの描写です。これから活動を始めようとする木々

のエネルギーを感じます。木の鼓動はそれを見て感じた作者の鼓動でもある

のでしょうか。(藤田洋子)

     

花豆のふっくら煮えて春の雪/柴田淳子

評:花豆のふっくら煮えて春の雪−−ゆっくりと時間が流れて行くひととき

,外は思いがけない春の雪,静謐な香りがただよってくる。(武田稲子)

この句はなんといっても花豆と春の雪の取り合わせの良さです。あわあわと

したイメージがひろがります。(八木泰子)





【最高点】



紙飛行機横切る風の光りけり           堀佐夜子

評:芭蕉の言葉に「俳諧は三尺の童にさせよ」とあるが、作者の童心が多く

の人の心を打ったに違いない。作者の技術の高さは、「横切る」という言葉

、「けり」という季語の使い方を見ても、充分窺い知ることが出来るであろ

う。(高橋信之)

幼い頃を思い出させてくれる、そんな爽やかな句です。風を切って飛んで行

く紙飛行機の青い空へ吸いこまれていく様子が浮かんできます。(有吉孝史)



【次点】



口笛で選ぶネクタイ春の色       江田 晋

評:年配の人が思われます。口笛にこれまでの事柄を包んでいって

いる。(相原弘子)

春の楽しい雰囲気がそのまま表現された句。春になると、ネクタイ

を選ぶ気持ちまで変わってくる。(鳩崎良一)

明るい春の朝、軽い口笛が聞こえます。選んだネクタイの色も見えてきます

。さて、今日はどんな良いことがあるのでしょう。男の方のこんなさりげな

い句もいいですね。(藤田洋子)



【第3位】



すれ違う子らにも春の匂いする     鳩崎良一

評:作者の広い心と穏やかな日常を物語る一句である。大人たちがみなこの

ような視線を、すれ違うだけのこどもらにも向けることができたらと思う。

(八木泰子)

[全作品]
有吉孝史

春眠を忘れ遊べる鳥の声

花烏賊や潮の流れを身にとどむ

春光眩しく友来ぬ部屋をさす


大谷亜紀子

おそるおそるぶらんこに乗る春の風

駆け足で帰る新しき春コート

春こたつ昨日は疎き今日有り難き


久保維季子

白梅の花びら無数に空向かう

足元の芝生に新芽顔を出す

桃の花見る度思う雛人形


古田けいじ

囀りは御岳おぼろに見える方

パット打つボールの先に春天道虫

紅つけて芽吹く時待つ満天星花


原 小繭

シクラメンつぼみ数えて雨の夜

往来の車の知らす春みぞれ

春霞ぼんやり浮かぶヘリの音


柴田淳子

花豆のふっくら煮えて春の雪

受験の子一点見つむ春の雪

赤頭巾かぶり地蔵様梅ながむ


武田稲子

雑木林の春の制服揃いだすしゃぼん玉屋根からなにが見えるかな花柄のリボンに変えて恋の猫


森 隆博

あおあおと蓬の空を持ち帰る春の風藪に吹き詰め明日があるふんわりと山の投影霞む朝


作者不明

春セーター買ってジーンズ欲しくなる柔らかく春雨芝コートを濡らす終電に花の束抱く女おりて


小林雅夫

一輪のガーベラ持ちて卒業す啓蟄やテニスコートに土煙エヴァンスの音研ぎ澄まされて冴え返る


江田 晋

夢色の菓子召されたか雛の唇(くち)春の乳房吸って若芽の萌え競ふ口笛で選ぶネクタイ春の色


人見忠雄

嵯峨野の土のぬくもり春浅し

広隆寺ほとけと対話春時雨

きらきらと水面ひかる池の春


八木泰子

原っぱに光あふれて一面の春雲の湧く村へバス行く春遅し雨だれの音聴く軒の巣の鳥も


野上哲斉

凍滝の天より氷柱ぶら下がる体温を吸い取られそう滝凍る静けさや水音失い凍る滝


阪本登美子

静寂の音の中より蝶生るみちのくの春意動きし鄙の駅春愁や言葉飾らず紅を引く


鳩崎良一

草の香を深く吸い込み春宿る芽吹く木々赤く包まれ鼓動するすれ違う子らにも春の匂いする


相原弘子

春水のバケツを提げて朝の風ひこばえす日記一行の日が続き暮れるまで輝きながら春寒し


藤田洋子

遠足の山から声の下りてくる笹に置く尾びれの跳ねて桜鯛かざす手に今春光の降り注ぐ


高橋正子

ラマ僧の衣の色に金盞花講堂の春のともしび洩れいたる浅葱色の春の講堂雨止みぬ


西野研一

蛇穴を出て飛鳥野の富本銭日矢さしてコハクの色の若布刈る木蓮や塀の向こうの寺の塔


高橋信之

囀りの山へ山への坂登る山茶花咲く勢いに散る勢いゆっくりと登る楽しみ芽吹く山


渡邉道朗

雨ごとに白の増しけり花馬酔木トンネルの覆い外されレタスの芽春ショール犬に挨拶して過ぎる


脇本柾木

御水取りりつぱな河馬のあくびかなマンションの影のかぶさる春田かな粗塩のまぶす加減や櫻鯛


森竹智則

 水温む淡い白まで米を研ぐ 青空を知らせ朝告げ春の鳥 風に耐え蕾の中では春踊る


野田 ゆたか

啓蟄の足の爪つむ日和かな散る花は笑ふが如く泣く如くゆく春は大河の如くゆるやかに


山口紹子

笑ひ合ふ立ち話春のかたすみに 風船の空へ溶けゆく夕べかな枝じゅうにはじけるピンク桃の花


しまやふゆひと

沈丁の香にふさはしき乙女かな誰にでも悲しみはあり 春彼岸ふるさとを捨てざる日々の春彼岸


堀佐夜子

紙飛行機横切る風の光りけり匂ひける枝垂れ梅あり庭の隅今日の空まこと眠たき春の雲


石橋俊行

音もなく白梅燃ゆる闇もありほうれん草母黄泉からの青さかな春という文字を包みて差しだしぬ


作者不明

缶ビール持っても手が凍えないよ洟や涙が流れても土の香だ今晩は毛布一枚にしよう


3月句会は、3月14日(日)でしたが、
次回は、4月11日(日)です。またのご投句をお待ちしています。
作者不明の方は、お名前をお知らせ下さい。

俳句雑誌水煙

入選句
1998年  8月 / 9月 / 10月 / 11月 / 12月
1999年  1月 / 2月