更新:1998年9月14日

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インターネット 句会

9月句会入選句/選評


【最優秀句】

虫の音と今日の出来事ともに聞く/森 陽子

一読して、初心者の句であることは、分かるが、素晴らしい句である。作者の生活が良いのである。 虫の音と人間の言葉を同時に聞くことは、欧米人には、とてもできないことで、右脳と左脳の働きが違う からだという。この句は、日本人の素晴らしい生活を、見事に詠んだ句で、この句があることによって、 インターネット句会が成功した、と言っても言い過ぎではないであろう。(高橋信之)
いかにも、虫が家の中でも外でもよく鳴いている様子です。今日の出来事も虫の音も、作者には日常なのですが、 気がつくと俗世に風雅が混在しているのですね。それを同時にできるのに驚いてしまう。(高橋正子)
陽子さんの句には力みがない、それが陽子さんの句の良いところと常々思っています。これからもこのペースで 続けましょうね。(渡邉道朗)

【優秀4句】

枝先を風にまかせて萩ゆれる/高橋正子

「まかせて」いるのは、自由で、捕らわれのない心で、そこに詩がある。(高橋信之)
  コメントすることをお許しください。幼い頃、交通手段がなかったので、父の 実家に行くのに海岸沿いの土の道を4キロほど歩きました。帰りは、月の出た道を眠気を我慢しながら両親に励まされて 歩いたのを思い出しました。秋の月に照らされて、まさに、<枝先を風にまかせて萩ゆれる>でした。(吉田晃)

爽涼の今朝がうれしくワイン買う/藤田洋子

我が家でも何か良いことがあればワインを楽しんでます。うきうきさせてくれる出来事にさらに好きなワインで、 お互いに乾杯はさぞ格別の味が花を添えることでしょう。(森 隆博)

茄子送らる田舎の紺の匂い詰められ/森竹智則

紺いろの茄子の新鮮さが伝わってくるすがすがしい句。対象の選び取り方は、とても上手いと思うが、主語と述語の関係を すっきりさせなければ読者が迷ってしまう。短いからこそ、文法が生きてくるのですから。(高橋正子)

案山子手を挙げている向こうにも案山子/八木泰子

【最高点句/2句同点】

満月にまっすぐ向いて家路につく/林 緑丘

家路につこうとすると、我が家の方向に満月が煌煌と輝いている。それに向かえば気持ちも晴れ晴れしてくる。 まっすぐだから、しばらくは月光を浴びながら歩けたのである。よい月夜を経験されましね。(高橋正子)
充実した日々を送っているのか、はたまたもっと充実させようとしているのか。どちらにしても、自分の生き様に 自信を持っているのが感じられて、読み手にもエネルギーを分けてもらったような気になります。(吉田晃)

案山子手を挙げている向こうにも案山子/八木泰子



【投句全作品】

01.広がる輪古里人の盆踊り
02.虫の音と今日の出来事共に聞き/森陽子(泰子、正子、信之選)
03.荒庭のバラは密かに香を放つ
04.秋の夜の白きを開き句を記す
05.新涼のレースカーテン風を抱く/八木泰子(洋子、道朗、良一、晃選)
06.新盆を済ませし人がバケツ提げ
07.たましいのバランス崩れ流れ星
08.満月をくずして川面風わたる/林緑丘(良一、智則選)
09.秋桜の背よりも低き子等通る/渡邉道朗(正子、弘子、晃選)
10.朝青き宇宙に秋を耕せり/八木泰子(雷太、良一選)

11.山霧の濃く淡くなる家並かな/阪本登美子(泰子選)
12.霧よりの声やがて姿見ゆ登校路
13.犬は犬猫にはあらず秋刀魚焼く/渡邉道朗(雷太選)
14.みちのくの風の軽さよ稲穂波/阪本登美子(洋子選)
15.おなごらの一升瓶の糸瓜水/森隆博(雷太、弘子選)
16.残り火にホツホツと沸く秋の風呂/吉田晃(洋子、道朗、良一選)
17.無花果の触れてはならぬ柔らかさ
18.バロックや週末一人秋真昼
19.時々にちちろの声の重なりぬ/渡邉道朗(雷太、弘子選)
20.パレットの朱色に絞る山粧ふ/阪本登美子(道朗選)

21.冬瓜の二つに割られて売られをり/吉田晃(良一選)
22.見るからに土の乾きの秋旱/相原弘子(正子、智則選)
23.頬杖の窓より眺め秋の海
24.満月にまっすぐ向いて家路つく/林緑丘(洋子、泰子、正子、智則、晃選)
25.茸山の入札終わり笑い顔
26.鮎あわれ硬直みせてうすくれない
27.秋灯の輪の下なれば親しさに/高橋信之(晃選)
28.案山子手を挙げている向こうにも案山子/八木泰子(洋子、道朗、弘子、信之選)
29.稲架組む夕暮れ解れる包被り
30.子の刻に鼾と共に月を愛で

31.枝先を風にまかせて萩ゆれる/高橋正子(智則、晃、信之選)
32.秋暑し受験勉強する子らに/高橋信之(弘子選)
33.秋日和一人留守番茶をたてる
34.爽涼の今朝がうれしくワイン買う/藤田洋子(隆博、信之選)
35.風鈴に心開いて夏終わる
36.晩夏の夜干されし上着の揺れ静か/森竹智則(泰子選)
37.茄子送られ田舎の紺の匂い詰められ/森竹智則(正子、信之選)
38.透きとおる子らの歌声秋立てり/藤田洋子(智則選)
39.山清水顔つけて飲む澄み渡る
40.出会いあり車窓の青田続くまで/鳩崎良一(雷太、道朗選)

41.ふれあえし肌のぬくもり知る秋や/藤田洋子(泰子選)
42.卵割る黄身の上へと秋の光


【互選評】

<残り火にホツホツと沸く秋の風呂/吉田晃>
秋の静かな夜、ホツホツと聞こえる湯を沸かす音、何かしらとても心落ち着くようで好きな句です。(藤田洋子)

<ふれあえし肌のぬくもり知る秋や/藤田洋子>
電車に隣り合わせた人と軽く腕がふれあうことがある。その温もりにふと遠い記憶もよみがえり、 秋の初めの人恋しさを思う。(八木泰子)

<新涼のレースカーテン風を抱く/八木泰子>
秋の涼しさと、白いレースのカーテンでしょうか、柔らかく風にゆれている様が、 あたかも風を抱いているように見えています。その情景から、清潔な部屋、安らぎのある家庭が伺えます。 まさに泰子さんならではの句ですね。(吉田晃)
夏も終わり、秋風のさわやかさを日常生活の中で感じ取れます。「カーテンが風を抱く」という表現が面白い。(鳩崎良一)

<時々にちちろの声の重なりぬ/渡邉道朗>
こんな時、自分を振り返る思いにかられます。夜の出来事でしょうか、昼の出来事でしょうか。(相原弘子)

<透きとおる子らの歌声秋立てり/藤田洋子>
音楽会か学芸会の場面であろう。子供達の澄みきった歌声は、心地良いものにしてくれる。その歌声が、澄みきった 秋の空をより身近に感じさせてくれている事を、作者に感じさせてくれたのであろう。「秋立てり」が、上手く生き ている句である。(森竹智則)

<見るからに土の乾きの秋旱/相原弘子>
無駄のない句。水不足の懸念されるこのごろの乾いた天気をぴたりと詠んでいる。(高橋正子)

<秋桜の背よりも低き子等通る/渡邉道朗>
コスモスの丈はおおよそ1m少々。それより低い子どもというのはおのずと小さな子ども。このような光景は写真家に 撮られることも良くあるかもしれないが、この句には、子どもの生き生きした動きと、奥行きが加わって写真ではあら わせない子どものよさが表現されている。(高橋正子)
この時期にはこの時期の子どもの新鮮さがありますね。秋の句ですが、春夏秋冬の子どもの姿を思い浮かべました。 内面の新鮮な子どもに育てたいと悩んでいます。(吉田晃)

<秋灯の輪の下なれば親しさに/高橋信之>
コメントすることをお許しください。秋の空気と、そして秋の空気に柔らかく光る灯は車座の人の距離を好ましい近さ まで引き寄せます。人の体温と息遣いと声の響きがさらに人と人の心を物理的な距離以上に引きつけるのです。(吉田晃)

  


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