デイリー句会


■俳句カレンダー/2000■

【8月】

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2000年 101112

1日(火)

富士山を真向かいに見る夏館 阪本登美子



自句自解

真正面から見る夏富士の雄大さに圧倒された。その印象は今も薄れずに

残っている。




2日(水)

空だけが動いている蒲の村  吉田 晃



<蒲(がま)の村>とは、思い切った表現。<空だけが動いている>に実感

を与えた。訪ねてみたい風景だ。(高橋信之) 


3日(木)

夏富士に向け放水の弧を描く  安西さゆり

 

ホースからほとばしる水。その円弧の中に、黒々とした夏富士がでんと座っ

ている。大自然と向かうさゆりさんが見えます。(古田けいじ)


4日(金)

握手して足早に行くパナマ帽  堀佐夜子



無声映画のように、とても楽しいですね。でも少し寂しさもあってしみじみ

と思うところのある俳句だと思いました。(高橋正子)


5日(土)

豆腐屋の水槽からの冷奴  相原弘子



当たり前のことを詠んだ句だが、こうした風景に出会うのも、今は、珍しい

。作者の心が素直に伝わってくる。(高橋信之)


6日(日)/広島原爆の日

空の色変わらず在りし原爆忌  渡邉道郎



自句自解

8月6日、子どもたちは平和学習に登校し、私は例年のごとく広がった青空

に原爆忌を思った。当日も青い夏空が広がった朝であったこと、その青空が

一瞬にして地獄と化したこと。平和な空の色故にその恐ろしさを思い、二度

とあっては成らぬとの思いを新たにした。いつまでも変わらぬ空であって欲

しい。


7日(月)

人のいぬプールに椰子の影落ちる  林 緑丘



大変シンプルな俳句です。プールの青にそれより濃い青緑の椰子の葉が映っ

ていて人がいない時間。日本的な静けさとは違って、奥深く入っていかない

静けさですね。英語俳句にされたら、また違った良さがでるのではと、思い

ました。言葉と風土というのは、密接な関係があるような気がします。(高橋正子)


8日(火)/立秋

子らいまだ眠り立秋の空光る  高橋正子



自句自解

立秋の今日は、まだ夏休み。学校から抜けきって、子どもたちはぐっすり眠

っているが、秋立つ日の朝は、浅黄色の空がうつくしい。


9日(水)/長崎原爆の日

終章は祈りの和音原爆忌  古田けいじ



自句自解

平和を願う合唱の終りは上手いハーモニーで終った。歌い手の平和への祈り

が天へ登って行く感じだった。


10日(木)

鬼灯を振れり空間多き音  相原弘子



自句自解

その朱に時に怖しいほどのものを覚えるのに、こんなにあっけない音。

本当のことかしらと、又振ってみる。


11日(金)

秋桜の背よりも低き子等通る  渡邉道朗



コスモスの丈はおおよそ1m少々。それより低い子どもというのはおのずと

小さな子ども。このような光景は写真家に撮られることも良くあるかもしれ

ないが、この句には、子どもの生き生きした動きと、奥行きが加わって写真

ではあらわせない子どものよさが表現されている。(高橋正子)


12日(土)

秋蝉となりてちかぢかわれに鳴く  高橋正子



自句自解

せみ時雨となって聞こえていた蝉の声も、さすが鳴き疲れたのか、少しさみ

しげに、だがしっかりと自分の鳴き方で鳴いている。それが親しく身近に感

じられる。


13日(日)

水たっぷり真昼の父の墓洗う  古田けいじ



自句自解

父母の眠る墓へ。照りつける暑さの中で墓標にたっぷりの水を掛け、清貧な

人生を全うした父母を偲んだ。


14日(月)

盆の夜のいつものとおりの四方の虫音  高橋正子



自句自解

盆の夜といっても、虫は、静かにいつものとおりにないている。あたり四方

から、その家を包むように、鳴いてくれているのである。


15日(火)/終戦記念日/月おくれ盆

白桃が三つテーブルにある平和  古田けいじ



自句自解

友人が白桃をおすそ分けで持ってきてくれた。テーブルにそれを置いた。今

日は丁度、終戦記念日。小さくて余りよく覚えていないが田舎で終戦の日の

ラジオ放送だけは覚えている。50年以上戦争をしなかった日本も最近はな

んだかきな臭い。


16日(水)

送り火や親子の顔を近づけり  吉田 晃



いい句ですね。晃さんの良いところがでています。人の気づかないところに

向けられた優しさです。(高橋信之)


17日(木)

盆過ぎの静けき居間の畳拭く  藤田洋子



畳を拭きながら充実感に浸っておられるのでしょう。今年もいいお盆だった

のですね。今度みんなの健康な姿を見られるのはお正月でしょうか。日本の

文化を大切にした生活をしておられますね。(吉田 晃)


18日(金)

虫の音と今日の出来事ともに聞く  森 陽子



いかにも、虫が家の中でも外でもよく鳴いている様子です。今日の出来事も

虫の音も、作者には日常なのですが、気がつくと俗世に風雅が混在している

のですね。それを同時にできるのに驚いてしまう。(高橋正子)


19日(土)

おにぎりの正三角や秋初め  相原弘子



「正三角」がきりりとして、「秋初め」らしい。(高橋信之)


20日(日)

蜩や聲明と和す境内に  堀佐夜子



自句自解

幼いころ、祖母に連れられてよくあっちこっちのお寺に参りました。子供で

すので本堂の縁側で遊んでいますと、読経と蜩の声が私には子守唄と感じら

れて何時しか寝てしまい、祖母に起こされるまで夢うつつでした。


21日(月)

青栗や過ぎし日の母の子守唄  阪本登美子



叙情的な句ですが、「青栗」という季語がしっかりしていますので、叙情的

に流れてしまうのを押さえています。季感の働きが小さな「私」の世界と、

自然、社会、宇宙といった大きな世界とを結びつけてくれます。季語、季感

は、その結び目となっています。(高橋信之)


22日(火)

洗濯物うすくたたまれ秋に入る 森 隆博



日常を詠んでユニークなのがよい。(高橋信之)


23日(水)

山水のこぼれる葡萄の房置けば 吉田 晃



みずみずしい葡萄の房が見えてくるようだ。思わず手を出したくなる。(高橋信之)


24日(木)

呼んでみるかなたの空の雲の秋 高橋正子



こんな風景に出会いながら作句できませんでした。正子先生有難う御座いま

す。とても好きです、この句。(堀佐夜子)


25日(金)

露の上きょうを大きく日が昇り 相原弘子



天と地の大きな空間を切り取った。「きょうを」という時間の言葉がその要

となって、ひとつの世界ができあがった。乱れがない。(高橋信之)


26日(土)

稲の穂が道をつつみてバス走る  森 隆博



いい景色ですね。「道をつつむ」ほどの稲の穂は、幸せの象徴ですね。バス

には幸せな家族や、家路を急ぐ幸せなサラリーマンが乗っているのでしょう。

(高橋信之)


27日(日)

榧の実の生きた重さの音で落つ  渡邉道郎



なかなかの俳句です。百聞は一見に如かず、という言葉がありますが。(高橋信之)


28日(月)

鱗雲一枚になる日暮れ時  森 隆博



個性があっていい句です。(高橋信之)


29日(火)

抱き帰る芒が何にでも揺れる  相原弘子



自句自解

ほしいだけ刈り取った。抱きかかえてのその歩になんと揺れることか。何に

活けよう。ふと思ったのは一斗升。ゆさゆさと活けた。


30日(水)

学童の見上げる空の鰯雲  阪本登美子



自句自解

小学生たちがマンションの公園でサッカーボールで遊んでいた。急に

静かになった。7,8人の子供が腕組みをし植え込みのブロックに一

列になって空を見上げていた。私も思わず空を見た、本当にきれいな

雲がゆっくり流れていた。


31日(木)

レタス出荷トラック霧の坂下る  古田けいじ



自句自解

知人の信州の別荘に泊まってのゴルフに行った。別荘のある一帯はレタス御

殿が建つと言われるほどのレタスの産地。夕方、霧が深くなった落葉松の坂

を、レタスを積んだトラックが下って行くのが別荘のベランダから見えた。