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やわらかき光の海や霧の都市 三浦絹子 「やわらかき光」は、作者の内面の輝きでもある。私の好きな句。(評:高 橋信之)
海の色残し味噌煮の秋の鯖 北村ゆうじ 鯖の「海の色」が、味噌煮の中に光っている。秋も深まれば、味噌煮が、い っそう、あたたかく懐かしいものに思われる。(高橋正子)
勲章は孫の作なり文化の日 野田ゆたか 自句自解 還暦を子供達が祝ってくれた時、孫が折り紙の勲章をかけてくれまし。その 時の言葉や料理は忘れましたが、この勲章は今でも持っています。
冷まじや颪に星の出揃いぬ 相原弘子 「冷まじ」は、「すざまじ」と読み、秋深くなったころの寒さを覚え、もの 衰えるころの季語。石鎚颪が吹き始めたようである。塵一つない澄んだ夜空 に、どの星も隠れることなく輝いているのである。(高橋正子)
秋の夜の灯影に生るもの長し 高橋正子 自句自解 秋夜も更け、一人寝残されると、いろんな調度や、置かれたものの影が、濃 く長くなっているのに気づく。
秋の朝花屋の鋏冴えわたる 岩本康子 さまざまな色のあふれる秋の花屋は、澄んだ色の世界。そこに鉄の鋏があっ て、冴え冴えしている。この感覚がいい。(高橋正子)
立冬のポプラ天より光受く 高橋正子 自句自解 ポプラの樹を見ると、東欧的なものを思ってしまう。片側にポプラ並木の続 く白い道をイメージしてしまうのは、ロシア映画のせいか。住まうところは 変わったけれど、高階住まいの我が家の窓から、一日中ポプラのそよぎを愉 しんでいる。モダンジャズ午後の語らい風の色 阪本登美子
新しい筆箱出来て冬に入る 相原弘子 自句自解 文房具はどこか心が満たされる。新しい筆箱はセルロイド。手提げ袋の中で、 カタカタ鳴るのがいい。
白浜の岸壁険し石蕗の花 堀佐夜子 自句自解 岸壁にへばり付いたような石蕗の黄と海の青が印象に残っています。
帰りし子の手の冷たさを手で包み 藤田洋子 自句自解 外から帰る子のその冷えきった手に驚く。とっさに我が手のぬくもりに包 みこむ。
蕪切り甘き香りの立つを知る 霧野萬地郎 自句自解 蕪を切ると香りがすること、今まで気にしなかった。台所を覗くと、旬の 句材がかなりある。
凩や涛ふくらみて静まりぬ 阪本登美子 自句自解 冬になると一変する海凩のときの海は全体が白いかたまりのようだ。自然 現象の変化のまどわせされることなく毎日を生きていきたい。
冬晴れの柱を削る乾きし音 野上哲斉 自句自解 冬晴れの午後、大工さんが柱を削っている。シュルルー、シュルルーと長 い鉋屑の木片と同時に乾いた音をはき出していた。
それぞれの風過ぎゆくや冬木群 阪本登美子 自句自解 今年もいろいろのことがあった。一年は本当に風のように早く過ぎる。今は 葉を落とした木々も、ふたたび芽吹きの時が来る。来年も平凡に1日1日を 大事にしたい。
靄去りて海澄明に冬立ちぬ 安丸てつじ 冬立つ日の海が澄明であるのは、心も晴れて素晴らしいこと。(評:高橋正 子)
冬霧の深ぶか今朝も児を包む 吉田 晃 自句自解 この時季の盆地の霧はすごい。何もないところから、子どもたちの声が聞こ えてきて、やがて姿がだんだん濃く見えてくる。霧は,今朝も元気な子どもた ちの朝を優しく包んでいる。
露霜に陽が満遍の雑木林 森 隆博 世界を肯定的に捉えていますので、句がいきいきしています。 命が輝いてい ます。(高橋信之)
初冬の青空を中心に散策する 森竹智則 これらの句の良さは、作者が自然との関わりを楽しんでいることです。自然 とうまく心を通い合わせています。俳句の心ですね。(高橋信之)
田に立ちて土の固さに冬を知る 林 緑丘 しっかりした句です。作者の生活がしっかりしているからでしょう。(高橋信之)
大根一本もらって飴色に炊く 吉田 晃 日常身辺を詠んでさりげない句ですが、内面に力強いものがあります。日常 生活が充実しているからでしょう。(高橋信之)
はなみずき落葉静かに裏返る 古田けいじ これは、日本の美です。日本の自己主張ですね。俳句は、南窓にではなく、 北窓にある、と言われます。「表」ではなく、「裏」にある、と言ってもよ いでしょう。ヨーロッパの文学、芸術は、華やかで、「表」ですが、日本の 文学、芸術は、本来「裏」である、と言ってよいものですが、美の心は、洋 の東西、表裏一体です。本質は、同じものです。(高橋信之)
冬帽子誰かがピアノの上に置き 相原弘子 特別な俳句ではありませんが、作者の心の動きがこちらに強く伝わってきま す。それがよいのです。 (高橋信之)
植木屋の親子揃ひの冬帽子 阪本登美子 和やかなのがいいですね。俳句ですね。(高橋信之)
バス下る雪の月山振り返る 野上哲斉 自句自解 10月の山形に初雪がありました。一夜にして月山に冠雪、山を下る道々、 振り返りながらその絶景に見とれてしまいました。
黄落に市の賑わい染みにけり 福田由平 フリーマーケットや決まった日の市など、人々が、気楽に、賑やかに楽しめ るのが、市の楽しさ。その賑やかさが、街全体を黄色く染める銀杏などの黄 葉に染みて渾然となる黄落期がいい。(評:高橋正子)
枝に残る紅葉が揺れて陽も揺れる 目見田郁代 枝に少なくなった紅葉が風にわずかに揺れ、日差しを受けたその葉も揺れて いるという広がりのある句。(評:高橋信之)
そこだけがひときわ明るく桜紅葉 岩本康子 「桜紅葉」に絞り込んで、それを句の終わりに置いた。「そこだけ」、「ひ ときわ」、そして「明るく」と畳み掛けて下五の「桜紅葉」を際立たせて、 力強い句。(評:高橋信之)
風なくて花の重みに山茶花揺れ 目見田郁代 「風なくて」は、見えないものを見たのである。これが俳句の心であって、 作者は、深く感じたのである。(評:高橋信之)
鵙が鳴く小さな体で今朝も鳴く 祝 恵子 冬になって、鳴き声もあまり聞かれなくなった鵙だが、この鵙は、今朝も、 体いっぱいで鳴いている。小柄な鳥の体いっぱいの力を感じる。(評:高橋 正子)
美(は)しきものみな地に返し山眠る 北村ゆうじ レベルの高い勝れた句。作者の心境がいい。心の姿がいいのである。(評: 高橋信之)