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立ちしものに光りを注ぎ冬満月 碇 英一 月光が、はるかより届き、さえざえと地を照らしている。丈高いものは、 降り注ぐ月光を受けて浮びあがり、月と地の間に澄み渡った世界を作って いる。「光を注ぎ」が、よい。(評:高橋正子)
寒餅を搗き上げ空の美しき 野田ゆたか こんな伝統的なことを経験されている作者が羨ましいです。お餅を搗き上 げた後、少し汗ばんで、ふと空に目をやると青い美しい空が拡がっている 。最高に気持ちいいでしょうね。(評:岩本康子)
豆撒きの豆を踏み割るわが不如意 高橋正子 自句自解 豆撒きの豆は、思いがけないところに転がっている。家事であちこちする うちに、豆を踏み割ることになって、「あれ!」と思おう。これが私の生 活である。 角生れし鬼の子にんまり節分会 右田俊郎 自句自解 幼稚園でのこと。角一本の可愛らしい鬼のお面を作った子がいて、先生に 誉められてにんまりとしていた。 年の豆片手に零れ街にいる 古田けいじ 自句自解 田舎の節分は、短冊に鬼の絵を描き、ひいらぎに指し、雨戸の節穴などに 指したものだった。お互いによその家のそれを朝早く取りに行くのが楽し みだったコンクリートの街には節穴が無い。豆まきだけは、今でもする。 昔はほんのちょっとだったが今の年の数の豆の良は片手であまるくらい。
スカーフの色を新たに今日立春 岩本康子 自句自解 立春とはいえ、まだ肌寒い。 でも、どこかに春の気配。スカーフを春の色 に変えたくなった。
洗面の水にキラキラ春陽差す 岩本康子 自句自解 手を切るように冷たかった水もさほどではなくなった。 そんな朝、洗面の 水にキラキラ朝日が反射している。
雷確か何と言っても春になる 相原弘子 自句自解 雷を季節や生活になぞらえること多い。二月になって、雷が聞こえると「春 雷」と声が弾む。春がまちがいないと心に言う。
乗り継ぎの三番ホーム春の草 相原弘子 自句自解 三番ホームは時々乗り降りする。駅の裏側にも思われる。そのためであろう か、春になると結構草が萌え出て、雀が降りたり立ったりしている。電車が 入ってくると、その草のことも、雀のことも忘れる。
いぬふぐり空の青さを真っ先に 右田俊郎 自句自解 春の野の宝石だと思います。罪な名前を冠せられて気の毒。それだけに一層 、健気さに打たれます。
桜草置きたる窓に大き空 阪本登美子 自句自解 大きな桜草の鉢を、おだやかな日差しいっぱいの窓辺に置いた。春日を包み こむ大きな青空があった。
鳥雲に午後のコーヒー香り満つ 阪本登美子 自句自解 鳥は、はるか北の故郷へ帰ろうとしている。私の暮らしはいつもと変わるこ となく、コーヒーの香りを楽しんでいる。この恵みに感謝したい。
東京の話ふくらむ浅蜊飯 藤田洋子 自句自解 東京での記念大会を前に準備に上京された高橋先生のお話を聞きながら昼食 をいただく。ふっくらと炊き上がった浅蜊飯に東京への思いをはせ楽しき話 の盛り上がる。
二月はや雛の鼓笛をもたさるる 高橋正子 自句自解 デパートには、早くも、ひな壇がしつらえられていますが、鼓笛を持つ雛が 楽を奏でるには、少し寒く感じられます。
うぐいすの声で始まる朝の庭 藤田洋子 自句自解 今年もまた春を告げる美しい囀りを聞く日が待ち遠しい。その清涼な円やか な美声に自ずから心楽しく明るくなる。
梅が香に背伸びしているランドセル 古田けいじ 自句自解 梅林で、といいたい所ですが、繁華街の食堂の入り口の鉢植えの梅の花を、 下校時の児童が背伸びしてかいでいた風景。この子、花が好きそうでいい 子になると思って。
思うことあって彼方の春の雲 吉田 晃 自句自解 仕事が一段落した。多分四月からは別の地で仕事をすることになるだろう。 そんな予感がする。彼方は、どっちの方向なのだろう。
早春の切れ味さくと髪鋏 野上哲斉 自句自解 私の子供達の散髪は、小学4・5年くらいまで私がしていた。少しくらい虎 刈りでも文句も言わず、娘達は家内が担当した。さくさくと早春らしい髪鋏 の音がしていた様に覚えている。
壁にある筆太の檄受験校 霧野萬地郎 自句自解 最寄駅の側にある、予備校の壁には生徒達への檄が応援歌の様に貼られてい る。しばらくすると、これらは、花丸付の合格者氏名になる。学生が一番緊 張する時でしょう。
早春の保育器の中の透明 野上哲斉 自句自解 孫の生まれたのは早春の明け方と記憶している、標準なみであったが、その お隣の保育器に入った赤ちゃんは色白であった。生命の神秘を感じつつ、明 るい保育器の中は透明であった。
ケーキ屋の早春エプロン色淡し 霧野萬地郎 自句自解 深川不動尊の参道にあるケーキ屋で、水煙句友と喫茶した。江戸下町の洋風 な店員の装いが印象的でした。
春泥のつきし長靴父帰る 堀佐夜子 一家の柱としての父の姿が見えてくる。働き者の父である。信頼されている 父である。(高橋信之)
目刺し焼く匂いが届きご飯です 守屋光雅 口語表現の「ご飯です」がこの句を生かした。家庭生活のあたたかさが伝わ ってくる。「目刺し」は春の季語である。(高橋信之)
極楽鳥の色添えられて春の雪 森竹智則 春の雪がテーマとなったこの景色は極楽鳥を配することで、まことに美しい 句となった。(高橋正子)
心地よしバッハのソナタ春そこに 福田由平 在り来たりの俳句ではないところに、この句のよさがありますね。自由なの で、作者の思いが伝わってきます。(高橋信之)
生駒山ぼんやり見えて春気配 堀佐夜子 自句自解 堤防へ上ると生駒山が良く見えます。けれど春霞がかかると薄ぼんやりと墨 絵のようです。
春の土手少し数増す万歩計 堀佐夜子 自句自解 今日は良いお天気で久しぶりに淀川の堤防へ。顔見知りの人達が元気良く歩 いていました。
白梅の空と接する円やかに 伊嶋高男 この頃は、白梅がだんだん好きになりました。桜より好きになったかもしれ ません。だんだん平安、奈良時代へと帰ってる、などと思わないでください 。空と接するがいいですね。(高橋正子)
火をつけて中州の葦の遅速あり 堀佐夜子 自句自解 淀川の葦焼はテレビにも放映される程です。
春灯へ丸い口開けている湯呑 高橋信之 自句自解 この句には、私の代表句としての愛着がある。私独自のユーモアがある句だ。