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八十八夜のポプラに雀鳴きあそぶ 高橋正子 自句自解 我が家の居間の窓からは、年中ポプラのそよぐのが見られる。今はやわらか な緑がしずかに音を立てて、風の様子を見せてくれている。いい天気の昼下 がり、鳴き始めた雀は、いつまでたっても鳴きやまない。一人遊びをしてい るように、夏の近づく日差しを楽しんでいた。
ハーブ園包む青空聖五月 阪本登美子 自句自解 ハーブの香をのせた風がほほを優しくなで、五月の青空にすい こまれていった。
定年に五月の空の眩しかり 野上哲斉 自句自解 十数年も以前のこと、定年を迎えた五月の太陽の眩しかった感じを素直に表 現しました。
五月晴ジャックと豆の木絵本展 阪本登美子 自句自解 実にユニークでカラフル、飛び出す絵本や色々の絵本を眺めてい るうち、すっかり童心にかえっている自分に気づいた。
子どもの日の夜の安らぎをどの家も 高橋信之 自句自解 休みが続くので、誰もが一息つく。親も子も誰もが和やかになる。快い季節 でもある。
流れきて抜けてゆきつつ風かおる 相原弘子 自句自解 歩くこと、自転車のペダル。どれも止めることが惜しいかの心地になる。し あわせである。
民家園疎開の匂い初夏の風 霧野萬地郎 自句自解 川崎にある古い民家を集めたり、復元したりした民家園。農家の匂いは、疎 開した、山梨の母の実家を思い出します。
路地裏の白き風あり花こぶし 阪本登美子 自句自解 満開のこぶしの花が、目に白い風となって映った。いつもの路地裏が別世界 のようだった。
川鳴りの深く届いて桐の花 相原弘子 自句自解 何度見ても桐は高い樹。あの天辺は、川の音はどう聞こえるのであろうか。
寝転んで山毎動く若葉風 古田けいじ 自句自解 行き付けの緑地へ行った。良く晴れた日だったので寝転んでみた。向こうの 山の若葉に風が在り、森全体が揺れ動いていた。心をなでてくれるような木 々の揺れであった。
ベネチアングラス乾杯夏の訪れに 岡本栄一 この句の良さは、不要なおしゃべりのないことで、多くを語ってはいません が、それでいて、直に伝わってくるものがあって、それが読み手の心の中で 快くふくらんできます。(高橋信之)
花みかん匂う野の道一番星 堀佐夜子 お友達との楽しかった一日が伝わってきます。一番星に語りかけたい思いです 。(相原弘子)
滴りのスイッチバック箱根山 堀佐夜子 例の如く主人と姪二人と四人で小田原から箱根電鉄に乗った五月の1日です。 初めて乗る登山電車に興奮した事です。
子の文字が素直に並ぶ母の日よ 藤田洋子 自句自解 朝のテーブルに置かれた子供たちからの手紙はどんな贈り物よりも嬉しいプ レゼントになりました。
ネクタイ締めてほんのり涼しい初夏が良い 霧野萬地郎 自句自解 ネクタイを気持ちよく締められる季節は初夏と秋。サラリーマンのユニフォ ームの一部です。
アカシヤの花の北京と記憶せし 野上哲斉 自句自解 中国は私の生まれ故郷、19歳の北京でのアカシヤの花は、私の青春のノス タルジヤ、このころの北京は美しい。
万緑のニッポンに出よニッポニア 古田けいじ 自句自解 朱鷺が誕生した。卵の殻を割るけなげな命に感動。時は新緑盛んな日本。元 気な姿で出てきて欲しい。
青嵐この村ぬけて登山口 北村勇治 読者を自然の喜びの中に連れ出してくれる。作者とともに登山を楽しむこと のできる俳句の喜びでもある。(高橋信之)
朝の薔薇露もろともに壷の中へ 安西さゆり 朝の花壇から切り取ったばかりの薔薇です。生き生きとした薔薇に今日の始 まりを励まされます。嬉しい今日の始まりです。(高橋信之)
新緑の光り手のひら透くほどに 藤田洋子 自句自解 初夏のみずみずしい緑の美しさは言うまでもありません。新緑の木洩れ日に 手をかざせば、まるで透き通るほどの眩しさです。
矢車草揺れねば立っておれぬらし 相原弘子 自句自解 なぜああも揺れるのだろう。いっそう全て摘み取って、胸に抱きしめようか と思う。
満々と水張る瓶の鉄線花 渡邉道朗 充分に水を吸い上げて鉄線のみずみずしい花が咲いている。落ち着いて読め る句である。(高橋信之)
のみの音がのぼる夏空どこまでも 森 隆博 人の姿は、全く見えず、夏空にひびく音だけ。空の高さ、青さを感じます。 (高橋正子)
夏走る青年息も乱さずに 安西さゆり 夕暮れ時でしょうか、黙々と走る青年の姿が目に浮かびます。私の住まいの 近くに消防署がありますが、まさにこう言う姿で空いた時間に皆さん走られ ています。(渡邉道朗)
五月空白球きれいに弧を描き 藤田洋子 自句自解 爽やかに抜ける五月の空。打ち合うテニスボールの美しい曲線に思わず見と れてしまいました。
休日の校庭広く夕焼ける 渡邉道朗 夕焼けが広い校庭をそめて、いかにも夏らしい。(高橋正子)
ゆっくりと朝日ほほえむ草清水 森 隆博 自句自解 長い目で見守ってくれている優しさがあるからこそ小さなものから自然が育 み、自らが輝ける。
大水車水の重さを音にして 森 隆博 自句自解 この時期、より多く無くては生らない水、諸々の力を借りての共同作業が聞 こえてくる。
少年の潔癖白き靴を買う 渡邉道朗 自句自解 仕事を終え帰宅すると、玄関に真っ白な靴が揃えてある。生徒手帳には確か に「靴は白」と書いてあるが、普段に履く靴までこだわる必要は無かろうと 思う。しかし、口を挟む余地は無い。玄関の薄明かりの中の白が眩しい。
緑陰に楽しき声のよく通り 藤田洋子 自句自解 初夏の吟行で保内町の平家谷へ出かけた時のこと。谷間の初夏の日差しに若 葉の影がゆれ、楽しい声が響きとても良い思い出になりました。
五月雨に黙して通夜の人帰る 渡邉道朗 自句自解 子どもの同級生のお父さんが亡くなった。私よりも何歳か若い。その通夜帰 りの列に出会った。雨の中を、それぞれが故人の思い出を噛み締めるように 、一様に黙って歩いていた。明るい風景ではないが、心に残った。