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茄子をもむ塩の白さの消えるまで 吉田 晃 茄子の紺と塩の白、相互に関わり合うことによって互いの色をより強く 引き出していると思います。また、塩の白さが消えるまでもむ手の表情 に、動きと色のよく見える句だと思います。(藤田洋子)
夏鶯森の空気を押し出して 日野正人 鶯の声を「空気を押し出して」と感じれる内面の力がいいですね。夏鶯 の鳴き声が、いきいきと聞こえてくる。(高橋正子)
触れたれば薄刃鋭し青すすき 霧野萬地郎 すすきの葉を薄い刃という鋭敏な感じかたが、かえって青すすきをしな やかに、ういういしいものとして、捉えることになった。(高橋正子)
新緑の山毛欅の林にコンサート 磯部勇吉 山毛欅の新緑に、コンサートの響きが伝わって広がる。初夏のいい季節 が、明るく、気持ちも高く詠われた。(高橋正子)
薫風や電池換えたる車いす 矢野文彦 電動車椅子の電池を取り替え、外出の準備も万端。風薫る中へ車椅子を 颯爽と進ます漲る力が、頼もしい。(高橋正子)
冷酒や訃報は耳に残るまま 林 暁兵 訃報を耳にし、いろいろ思いめぐることがある。冷酒を飲みながらも、 冷酒の味は消え、冷たさが喉を通る。冷たさが喉を過ぎれば、また思い が湧く。人の死はやるせない。(高橋正子)
紫陽花が明るくぬれて通学路 北村ゆうじ 学校へ向かう子供、傘の色、そして紫陽花、雨の日でも明るい取り合わ せ。(霧野萬地郎)
昨日より高き空行く夏燕 音羽和俊 次第に夏に向って行く。昨日より今日の空が、高い。燕も空の高さに従 って飛ぶ。私には、こういうことが、何にも増して素晴らしいことに思 える。(高橋正子)
立葵真っすぐが好き空が好き 平川康子 立葵は、いつ見ても、またいつの時からも、まっすぐ空をあこがれるよ うに立ち上って咲く。(高橋正子)
竹涼し青き日差しの幾筋も 堀佐夜子 「すずしさ」というのは、こういうことを言うのであろう。精神的な涼 しさへとつながっているところが、凄い句である。(高橋正子)
海沿いの電車紫陽花揺らし行く 目見田郁代 海に沿ってゆく電車は、はや、それが詩情である。紫陽花もきっと青い 色の花鞠にちがいない。瀬戸内らしい景色ではないだろうか。(高橋正 子)
はっきりともの言いたき日のグラジオラス 安増惠子 グラジオラスの明快な色と形は、「はっきりとものを言いたい」という 思いを肯定してくれそうである。(高橋正子)
銀座裏氷ひく鋸光りけり 伊嶋高男 銀座も裏へ回れば、こういう光景に出会うのか。銀座を支えている裏方 の生活が、生き生きと詠まれている。氷で冷えた鋸や氷くずが、涼しさ をよぶ。(高橋正子)
紫陽花の水に触れたり撓みつつ 脇美代子 「撓みつつ」で、句に動きが出た。紫陽花が水にふれて、紫陽花本来の 姿になっているように思う。紫陽花も本意を得たといいうところ。(高 橋正子)
豌豆の香り丸めてにぎりめし 大石和堂 豌豆ご飯が、おにぎりとなったところに、野趣味がある。香りまで丸め られて、お米の味も上々で、季節の食の楽しがある。(高橋正子)
泰山木その上空のあるばかり 藤田洋子 洋子様、このお句でくよくよしてた私が何処かへ消え去りました。あり がとう御座いました。(堀佐夜子)
枇杷の駅発車の笛と挙がる手と 相原弘子 駅が近いと生活の中に動きがみえます。駅員さんの動作と色づいた枇杷 が写生している様に写ってまいります。(目見田郁代)
虫除けの御幣の白し青田風 八木孝子 このような伝統的な風習が残されて、それが、目にさやかな青田として 句に詠まれたことに意義がある。このような感覚は、日本的なもの。都 会中心主義、地方中心主義を排して、お互いが共存できる感覚を持ちた いものと思う。(高橋正子)
富士仰ぎ一気に風の田植唄 阪本登美子 一面に田が植えられ、裾野を広げる富士山が見えている。田を渡る風が 、田植え唄のようにはればれと、さわやかに聞こえる。それが「一気に 風の田植え唄」として作者を句に駆り立てている。(高橋正子)
岩一つ滴り通す水の音 小峠静水 滴りが、冷たく澄んで、一徹に滴り通すところに、意志の強さを感じる 句。(高橋正子)
梅雨晴れ間森の緑に染まり行く 古田けいじ けいじさんの森の句は好きですね。日本民族の原点は、森にあると見て います。(高橋信之)
冷や奴飾る葉っぱを日替わりに 芦本照代 冷や奴に、心遣いの涼しげな葉っぱが飾られていれば、うれしく思う。 青楓などのほかに、どんな葉っぱを添えるのだろうか。明日の葉っぱを 思って見るのも楽しい。(高橋正子)
紫陽花の暗き真昼にいきいきと 三浦絹子 「暗き真昼」は、すごいですね。紫陽花が、きらきら、いきいきしてい ます。見に行きたいですね。(高橋正子)
雨上がり鉄砲百合の同じ向き 岩本康子 鉄砲百合がかたまって咲くのを見れば、同じ方向を向いて咲く花の不思 議に、誰だって驚かされているに違いない。それが雨上がりなら、雨滴 をつけた花の姿がますますリアルになって、意識の内に、一叢の白百合 の世界が確として生まれる。(高橋正子)
六月の落暉涼しき丸さかな 碇 英一 「涼しき丸さ」が、六月の太陽を見事にあらわしていると思う。暑い一 日の終わりの夕日を涼やかに感じれる心境がいいと思う。(高橋正子)
墨書涼し紙一杯に句意溢れる 山野きみ子 私も会場で拝見しましたが、信之先生をはじめ現在活躍中の俳人の作品 を書家が揮毫するというユニークな企画に感心しました。大半の書が、 そのまま読める書道展はほかでは見たことがありませんね。<句意溢れ る>を私はそのように理解しました。(伊嶋高男)
さくらんぼ軸を結べば雨の音 多田有花 うっとしいこの頃、可愛らしいさくらんぼを直ぐに食べられなくて、雨 の音を聞きながら軸を結んでいる有花さんを想像しています。(堀佐夜 子)
郭公啼くどこまでも見え駒ヶ岳 守屋光雅 どこまでも見える駒ケ岳は、やはり、盛岡から見える駒ヶ岳であろう。 駒ケ岳から八幡平へはるかに続く山並みがこの日は望めて、郭公の声が 夏の幸せのようにひびく。駒ケ岳の青い色が芳しい。(高橋正子)
海見えて紫陽花の毬はずみおり 阪本登美子 詠み手の弾む心が、「毬はずみをり」となった。海の光を受けて紫陽花 の色が明るくみずみずしい。(高橋正子)
まいまいの音無き世界を独り舞う 右田俊郎 言葉遊びとなるか、ならないかのぎりぎりの句だが、「独り舞う」は、 水澄ましの生態をよく示し、独りで舞うことの寂しさが滲んでいるよう に、受け取れる。静御前の舞いを思い出した。(高橋正子)