月間賞と今週の秀句
俳句日記


■俳句カレンダー/2001■

【8月】

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1日(火)

土間涼し大黒柱の黒光り  伊嶋高男





日本家屋の原風景を詠んで余すところなし。夏はひんやり、冬


は温かであったことを思い出します。(守屋光雅)


2日(水)

イタリアで泳ぎし話し風通る  古田けいじ





日常を語ってリアルである。「風通る」が生きた言葉で、「イ


タリア」がリアルなものとなった。(高橋信之)


3日(木)

多弁な娘ハンカチーフを軽く手に  野田ゆたか


 


十七字音の世界に切り取って身近な日常がいきいきと再現され


た。手に取るように見えてくる。(高橋信之)


4日(金)

握手して足早に行くパナマ帽  堀佐夜子




無声映画のように、とても楽しいですね。でも少し寂しさもあ


ってしみじみと思うところのある俳句だと思いました。(高橋


正子)


5日(土)

羅の僧地下鉄の客となる  林 暁兵


 


僧衣も、夏は羅となって、下に着ている白い衣が透けて涼しそ


うである。地下鉄の中に、その人が一人いると、あたりが涼や


かな雰囲気になる。(高橋正子)


6日(日)/広島原爆の日

夏真昼固きレモンを真二つに  藤田洋子


 


「固きレモンを真二つに」に夏のだらけた心にビシッと新鮮な


風を吹き込んで呉れます。(評:碇 英一)


7日(月)

七夕の吹き流しゆれ顔にふれ  守屋光雅





平塚の七夕も最近は頑張っていますが、やはり、仙台が本場と


思っています。立ち並ぶ竹から、大きな吹き流しの飾りが歩行


者の顔に触れる、大掛かりな様子が分かります。(霧野萬地郎)


8日(火)/立秋

子らいまだ眠り立秋の空光る  高橋正子





自句自解


立秋の今日は、まだ夏休み。学校から抜けきって、子どもたち


はぐっすり眠っているが、秋立つ日の朝は、浅黄色の空がうつ


くしい。


9日(水)/長崎原爆の日

終章は祈りの和音原爆忌  古田けいじ





自句自解


平和を願う合唱の終りは上手いハーモニーで終った。歌い手の


平和への祈り

が天へ登って行く感じだった。


10日(木)

鬼灯を振れり空間多き音  相原弘子





自句自解


その朱に時に怖しいほどのものを覚えるのに、こんなにあっけ


ない音。

本当のことかしらと、又振ってみる。


11日(金)

水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ  高橋正子


 


姿と動きを表現するのは至難。トンボの軽快さ、リズミックな


動きも表現されています。(守屋光雅)


12日(土)

うまおいが来るパソコンの明るい部屋  吉田 晃


 


この状況は、本当にあかるくみずみずしいですね。現代の産物


であるパソコンの部屋に飛びこんできたみずみずしいもの、う


まおいがかがやいています。ふと思ったのですが、哲学者や思


想家が、人間のことをいろいろいいますが、人間にとって、一


番大切なことは、「みずみずしい」ことではないかしらと。み


んながみずみずしい心で暮らせたらいいなと思いました。(高


橋正子)


13日(日)

ふるさとの土間は凹凸ちちろ鳴く  古田けいじ


 


しっかりした構成の句。自分の根源的な感情が、飾ることなく


表され、それが多くの人に通じる力強さのあるところがいいと


思います。(高橋正子)


14日(月)

鰯雲見上げるポプラのその上に  霧野萬地郎


 


鰯雲は、高い雲。高いポプラのそびえる上に、青空を流れる小


さな小さな雲の群れ。伸びやかに空に広がる作者の心が、おの


ずからさらに広い空を希求しているのがいいと思う。(高橋正


子)


15日(火)/終戦記念日/月おくれ盆

白桃が三つテーブルにある平和  古田けいじ





自句自解


友人が白桃をおすそ分けで持ってきてくれた。テーブルにそれ


を置いた。今日は丁度、終戦記念日。小さくて余りよく覚えて


いないが田舎で終戦の日のラジオ放送だけは覚えている。50


年以上戦争をしなかった日本も最近はなんだかきな臭い。


16日(水)

わが街の盆の花火へ機を降りる  吉田 晃


 


いい句ですね。「わが街」が生きています。(高橋信之)


17日(木)

盆過ぎの静けき居間の畳拭く  藤田洋子





畳を拭きながら充実感に浸っておられるのでしょう。今年もい


いお盆だったのですね。今度みんなの健康な姿を見られるのは


お正月でしょうか。日本の文化を大切にした生活をしておられ


ますね。(吉田 晃)


18日(金)

ゆっくりとしている時間草は実に  相原弘子


 


草木の充実の時は、ゆっくりと過ぎて行く。季語の「草は実に


」に詩があり、作者の心に詩がある。(高橋信之)


19日(土)

おにぎりの正三角や秋初め  相原弘子





「正三角」がきりりとして、「秋初め」らしい。(高橋信之)


20日(日)

蜩や聲明と和す境内に  堀佐夜子





自句自解


幼いころ、祖母に連れられてよくあっちこっちのお寺に参りま


した。子供ですので本堂の縁側で遊んでいますと、読経と蜩の


声が私には子守唄と感じられて何時しか寝てしまい、祖母に起


こされるまで夢うつつでした。


21日(月)

青栗や過ぎし日の母の子守唄  阪本登美子





叙情的な句ですが、「青栗」という季語がしっかりしています


ので、叙情的に流れてしまうのを押さえています。季感の働き


が小さな「私」の世界と、自然、社会、宇宙といった大きな世


界とを結びつけてくれます。季語、季感は、その結び目となっ


ています。(高橋信之)


22日(火)

秋晴れに産着の真白風と揺れ  祝 恵子


 


なにをおいても、無条件に喜びたい静かな心境。「風と揺れ」


は、上手だと思います。「風に揺れ」でないところに、作者の


喜びが表され、生命の輝きを素直に詠っています。(高橋正子)


23日(水)

山水のこぼれる葡萄の房置けば 吉田 晃





みずみずしい葡萄の房が見えてくるようだ。思わず手を出した


くなる。(高橋信之)


24日(木)

呼んでみるかなたの空の雲の秋 高橋正子




こんな風景に出会いながら作句できませんでした。正子先生有


難う御座います。とても好きです、この句。(堀佐夜子)


25日(金)

露の上きょうを大きく日が昇り 相原弘子





天と地の大きな空間を切り取った。「きょうを」という時間の


言葉がその要となって、ひとつの世界ができあがった。乱れが


ない。(高橋信之)


26日(土)

つくつくぼうし鳴くたび空色塗り替える  日野正人


 


心を日々新しく、心に新鮮な感動、なかなか出来ないことです


が、この句に相応しい言葉です。いい句を読ませて頂きました


。(高橋信之)






27日(日)

群れおりてとんぼとんぼの高さなる  碇 英一





とんぼの群れを見れば、それぞれが自分の飛ぶ高さをもって、


かがやきながら水平に飛んでいる。それを「とんぼとんぼの高


さ」と言った。軽やかさがいいと思います。(高橋正子)


28日(月)

夜の八百屋葡萄巨峰と筆太で  守屋光雅


 


骨太で、技巧のない句だが、そこに存在感があり、人間らしさ


を感じ取る。(高橋信之) 


29日(火)

抱き帰る芒が何にでも揺れる  相原弘子




自句自解


ほしいだけ刈り取った。抱きかかえてのその歩になんと揺れる


ことか。何に活けよう。ふと思ったのは一斗升。ゆさゆさと活


けた。


30日(水)

学童の見上げる空の鰯雲  阪本登美子





自句自解


小学生たちがマンションの公園でサッカーボールで遊んでいた


。急に静かになった。7,8人の子供が腕組みをし植え込みの


ブロックに一列になって空を見上げていた。私も思わず空を見


た、本当にきれいな雲がゆっくり流れていた。


31日(木)

レタス出荷トラック霧の坂下る  古田けいじ





自句自解


知人の信州の別荘に泊まってのゴルフに行った。別荘のある一


帯はレタス御殿が建つと言われるほどのレタスの産地。夕方、


霧が深くなった落葉松の坂を、レタスを積んだトラックが下っ


て行くのが別荘のベランダから見えた。