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土間涼し大黒柱の黒光り 伊嶋高男 日本家屋の原風景を詠んで余すところなし。夏はひんやり、冬 は温かであったことを思い出します。(守屋光雅)
イタリアで泳ぎし話し風通る 古田けいじ 日常を語ってリアルである。「風通る」が生きた言葉で、「イ タリア」がリアルなものとなった。(高橋信之)
多弁な娘ハンカチーフを軽く手に 野田ゆたか 十七字音の世界に切り取って身近な日常がいきいきと再現され た。手に取るように見えてくる。(高橋信之)
握手して足早に行くパナマ帽 堀佐夜子 無声映画のように、とても楽しいですね。でも少し寂しさもあ ってしみじみと思うところのある俳句だと思いました。(高橋 正子)
羅の僧地下鉄の客となる 林 暁兵 僧衣も、夏は羅となって、下に着ている白い衣が透けて涼しそ うである。地下鉄の中に、その人が一人いると、あたりが涼や かな雰囲気になる。(高橋正子)
夏真昼固きレモンを真二つに 藤田洋子 「固きレモンを真二つに」に夏のだらけた心にビシッと新鮮な 風を吹き込んで呉れます。(評:碇 英一)
七夕の吹き流しゆれ顔にふれ 守屋光雅 平塚の七夕も最近は頑張っていますが、やはり、仙台が本場と 思っています。立ち並ぶ竹から、大きな吹き流しの飾りが歩行 者の顔に触れる、大掛かりな様子が分かります。(霧野萬地郎)
子らいまだ眠り立秋の空光る 高橋正子 自句自解 立秋の今日は、まだ夏休み。学校から抜けきって、子どもたち はぐっすり眠っているが、秋立つ日の朝は、浅黄色の空がうつ くしい。
終章は祈りの和音原爆忌 古田けいじ 自句自解 平和を願う合唱の終りは上手いハーモニーで終った。歌い手の 平和への祈り が天へ登って行く感じだった。
鬼灯を振れり空間多き音 相原弘子 自句自解 その朱に時に怖しいほどのものを覚えるのに、こんなにあっけ ない音。 本当のことかしらと、又振ってみる。
水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ 高橋正子 姿と動きを表現するのは至難。トンボの軽快さ、リズミックな 動きも表現されています。(守屋光雅)
うまおいが来るパソコンの明るい部屋 吉田 晃 この状況は、本当にあかるくみずみずしいですね。現代の産物 であるパソコンの部屋に飛びこんできたみずみずしいもの、う まおいがかがやいています。ふと思ったのですが、哲学者や思 想家が、人間のことをいろいろいいますが、人間にとって、一 番大切なことは、「みずみずしい」ことではないかしらと。み んながみずみずしい心で暮らせたらいいなと思いました。(高 橋正子)
ふるさとの土間は凹凸ちちろ鳴く 古田けいじ しっかりした構成の句。自分の根源的な感情が、飾ることなく 表され、それが多くの人に通じる力強さのあるところがいいと 思います。(高橋正子)
鰯雲見上げるポプラのその上に 霧野萬地郎 鰯雲は、高い雲。高いポプラのそびえる上に、青空を流れる小 さな小さな雲の群れ。伸びやかに空に広がる作者の心が、おの ずからさらに広い空を希求しているのがいいと思う。(高橋正 子)
白桃が三つテーブルにある平和 古田けいじ 自句自解 友人が白桃をおすそ分けで持ってきてくれた。テーブルにそれ を置いた。今日は丁度、終戦記念日。小さくて余りよく覚えて いないが田舎で終戦の日のラジオ放送だけは覚えている。50 年以上戦争をしなかった日本も最近はなんだかきな臭い。
わが街の盆の花火へ機を降りる 吉田 晃 いい句ですね。「わが街」が生きています。(高橋信之)
盆過ぎの静けき居間の畳拭く 藤田洋子 畳を拭きながら充実感に浸っておられるのでしょう。今年もい いお盆だったのですね。今度みんなの健康な姿を見られるのは お正月でしょうか。日本の文化を大切にした生活をしておられ ますね。(吉田 晃)
ゆっくりとしている時間草は実に 相原弘子 草木の充実の時は、ゆっくりと過ぎて行く。季語の「草は実に 」に詩があり、作者の心に詩がある。(高橋信之)
おにぎりの正三角や秋初め 相原弘子 「正三角」がきりりとして、「秋初め」らしい。(高橋信之)
蜩や聲明と和す境内に 堀佐夜子 自句自解 幼いころ、祖母に連れられてよくあっちこっちのお寺に参りま した。子供ですので本堂の縁側で遊んでいますと、読経と蜩の 声が私には子守唄と感じられて何時しか寝てしまい、祖母に起 こされるまで夢うつつでした。
青栗や過ぎし日の母の子守唄 阪本登美子 叙情的な句ですが、「青栗」という季語がしっかりしています ので、叙情的に流れてしまうのを押さえています。季感の働き が小さな「私」の世界と、自然、社会、宇宙といった大きな世 界とを結びつけてくれます。季語、季感は、その結び目となっ ています。(高橋信之)
秋晴れに産着の真白風と揺れ 祝 恵子 なにをおいても、無条件に喜びたい静かな心境。「風と揺れ」 は、上手だと思います。「風に揺れ」でないところに、作者の 喜びが表され、生命の輝きを素直に詠っています。(高橋正子)
山水のこぼれる葡萄の房置けば 吉田 晃 みずみずしい葡萄の房が見えてくるようだ。思わず手を出した くなる。(高橋信之)
呼んでみるかなたの空の雲の秋 高橋正子 こんな風景に出会いながら作句できませんでした。正子先生有 難う御座います。とても好きです、この句。(堀佐夜子)
露の上きょうを大きく日が昇り 相原弘子 天と地の大きな空間を切り取った。「きょうを」という時間の 言葉がその要となって、ひとつの世界ができあがった。乱れが ない。(高橋信之)
つくつくぼうし鳴くたび空色塗り替える 日野正人 心を日々新しく、心に新鮮な感動、なかなか出来ないことです が、この句に相応しい言葉です。いい句を読ませて頂きました 。(高橋信之)
群れおりてとんぼとんぼの高さなる 碇 英一 とんぼの群れを見れば、それぞれが自分の飛ぶ高さをもって、 かがやきながら水平に飛んでいる。それを「とんぼとんぼの高 さ」と言った。軽やかさがいいと思います。(高橋正子)
夜の八百屋葡萄巨峰と筆太で 守屋光雅 骨太で、技巧のない句だが、そこに存在感があり、人間らしさ を感じ取る。(高橋信之)
抱き帰る芒が何にでも揺れる 相原弘子 自句自解 ほしいだけ刈り取った。抱きかかえてのその歩になんと揺れる ことか。何に活けよう。ふと思ったのは一斗升。ゆさゆさと活 けた。
学童の見上げる空の鰯雲 阪本登美子 自句自解 小学生たちがマンションの公園でサッカーボールで遊んでいた 。急に静かになった。7,8人の子供が腕組みをし植え込みの ブロックに一列になって空を見上げていた。私も思わず空を見 た、本当にきれいな雲がゆっくり流れていた。
レタス出荷トラック霧の坂下る 古田けいじ 自句自解 知人の信州の別荘に泊まってのゴルフに行った。別荘のある一 帯はレタス御殿が建つと言われるほどのレタスの産地。夕方、 霧が深くなった落葉松の坂を、レタスを積んだトラックが下っ て行くのが別荘のベランダから見えた。