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星の数増えて今年も秋来る/霧野萬地郎 自句自解 駅から自宅まで15分程、歩く。街灯かりが急に少なくなって、自宅に近づく と空を見上げて、やれやれ致します。秋ともなれば、夜空の星のまたたきが 増えてきます。
平仮名で記して優しいすすきです/相原弘子 自句自解 平仮名はむつかしい。一字一字声にして読んで意味がわかってくる。「すす き」と書いた。やさしくみえてくるばかり。
濃龍胆美空ひばりの碑の蔭に/野田ゆたか 自句自解 杉の大杉を訪ねた際、美空ひばりさんの歌碑に寄った。ひばりさんが好んだ 龍胆が周辺に咲いていました。
キュッキュッと洗う新米夕厨/堀佐夜子 自句自解 新米を炊ぐとき気持良い音を立てて呉れます。感謝を込めて頂きます!
天に近き古城ホテルの流れ星/古田けいじ 自句自解 オーストリアの古城のあったところに建てられたホテル。夜、旅行仲間が集 まって、星座に詳しいと自称する友人の説明で星座鑑賞会。天の川もくっき り見える暗さで、流れ星がいくつも見えた。
蜻蛉群れはこぶ風あり光あり/阪本登美子 自句自解 透明な光の中を、風にさそわれる様に青空にすいこまれていった。
さやかなる大気病む子の体内へ/藤田洋子 自句自解 季節の変わり目によく喘息を起こしていた子供。心身に感じる秋涼の大気に 子の体内が充たされれば、快復の兆しが見える気がした。
秋の蝉古く大きな木の響き/相原弘子 自句自解 秋蝉の思わぬ程の強い声。終焉への声だろうか。古く大きな木がついそう思 わせる。
丘を越え気球の運ぶ秋の色/霧野萬地郎 自句自解 英国の丘陵を気球が浮いて動いていました。その丘陵は既に秋の色が始まっ ています。まるで、気球が秋を運んできた様でした。
帰り遅き子を案ずれば虫の声/古田けいじ 自句自解 今夜もアルバイトへ行った息子。12時を過ぎてもまだ帰らず心配。こおろぎ の声に慰められて眠りにつこう。
東山日暮れは早く酔芙蓉/古田けいじ 自句自解 銀閣寺近く。東山に向かって歩いていると、ある旧家の塀越しに酔芙蓉の 花。早くなった日暮れの中で
ただいまの声の後ろに月まるく/安西さゆり 自句自解 日の落ちるのが日に日に早くなり、子供の帰宅するころ外はもう真っ暗.玄 関チャイムの音とともに開けたとき、子供がお月様を連れ帰ってきたのかと 思うような大きくまん丸の十五夜でした。
落日やまわる風あり芒原/阪本登美子 自句自解 落日で風の吹き方に微妙な変化をみた。芒が夕日に丸く染まりとても 美しかった。
花博や花壇に勝る虫の声/野田ゆたか 自句自解 花は、変わり映えしなかった。しかし昼の虫でしたが、虫に興味をおぼえ た。
月上る大海原の真ん中に/藤田洋子 自句自解 昨年、旅の船上で素晴らしい月夜に出会う。地上とはまた違ったそのさやけ き月の趣は、今でも忘れられない。
秋刀魚食う苦味もともに呑み込めり/安西さゆり 自句自解 秋刀魚の苦味がなぜおいしいのかまったく分かりませんでした. でも今年の初秋刀魚のとき、あの苦味がうそのように旨みに感じられたのです。
忌を終えし今朝の白菊よく匂い/藤田洋子 自句自解 その翌朝の白菊の香にとても心癒やされました。今年もまた大切な人を忍ぶ かのように、菊の蕾が開きだしました。
学童の見上げる空の鰯雲/阪本登美子 自句自解 小学生たちがマンションの公園でサッカーボールで遊んでいた。急に 静かになった。7,8人の子供が腕組みをし植え込みのブロックに一 列になって空を見上げていた。私も思わず空を見た、本当にきれいな 雲がゆっくり流れていた。
わが背の低ければ木犀の匂い濃き/吉田 晃 自句自解 今日も箒を持って、学校の玄関を掃除する。いつものところに来ると,一層 濃い匂いが私の頭上に降りかかってきて、私の肺は大きく動いてしまう。
池に水動いて二十三夜月/相原弘子 自句自解 暗い。本当に暗い。縁側から池を見た。どこかが動いた。/font>
みずひき草の朱が試験期の図書館に/高橋正子 自句自解 30年も前の学生時代の句なのですが、大学で一番自由な気分でいられるの は、中でも図書館でした。広い机とだれにも邪魔されない自由さが気に入っ ていました。図書館に活けられる花は、清楚であったり、つつましくあった り、野の雰囲気があって、心がすっとするものでした。そんな印象のみずひ き草でした。
そこに光り集めて木犀落下する/古田けいじ 自句自解 塀を越えて木犀の枝があり、道路へその橙色の、小さな花を散らしている。 道路に丸く落ち敷かれた花。今も小さく散っている花。そこに日が当たりそ の色をさらに鮮やかにしている。
仲間等の顔引き締まる九月かな/野田ゆたか 自句自解 涼しさを感じると、緩んでいた心身もしゃっきりし、学業の顔、仕事の顔、 また遊びの顔を取り戻してくる。
乾杯の信濃の新酒溢れけり/古田けいじ 自句自解 友人の計らいで蓼科高原の洒落たホテルに泊まった。夕食の時、今年の信濃 のぶどう酒で乾杯した。グラスを合わせ、学生時代の話など、尽きぬ団欒と なった。
頬杖の少女の視線の天高し/吉田 晃 自句自解 教室での授業。講義をしながら目をやると、頬杖をついた少女に気づく。注 意をしようとしたが、彼女の目の涼しさに注意をするのがもったいなくて、 彼女の視線を追ってしまった。<
鶏頭の何れも紅く暮れ残る/渡邉道朗 自句自解 たまたま少し早めに社を出たその日もほとんど暮れかかっていた。通りかか った民家の、いつも見る庭の、ほとんどのものがすでに闇に溶けた中で、鶏 頭の深紅だけがあちこちに残っていた。暗いのを良い事にじっくりと見せて もらった。
武蔵野の風の中なる秋桜/阪本登美子 自句自解 吉祥寺に久しぶりにでかけた。駅をでるとコスモス畑が一面に広がり、心地 よい風が頬をなでた。気がつくとコスモスの中を歩いていた。
早稲の香に動き始める村の朝/森 隆博 自句自解 5時の早朝、早稲の四隅に機械を入れるための手苅りをしている。朝の空気 に躍動の村が包まれている。
秋あかね無言で征きし画学生/古田けいじ 自句自解 長野県にある戦没画学生の残した絵を中心とする美術館「無言館」を訪れた 。質素な構えの美術館の方から、秋あかねの群れが飛んできた。何だか、画 学生の生まれ変わりのように思ってしまった。
大いなる薄一叢空海展/野上哲斉 自句自解 先日空海展を見学した。1220余年も以前に実在の人物である。遣唐使時代の 空海修業先であった、西安の青龍寺も拝観の機会に恵まれた。ますます空海 が身近な人物と思えてきた。堀之内の薄も、心なしか風に揺れて見えた。