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果樹園に秋水流れ音高し/守屋光雅果樹園はよく晴れて、水は、澄んでいて流れる音を休めない。静かで、澄明な世界はいい。(高橋正子)
雲ひとつなき青空の松手入れ/相原弘子松が手入れされ、細い葉の隙にも青い空が見え、さらに上には、真っ青な秋の天が広がってすがすがしい。(高橋正子)
秋蒔きの畝ふり分けて暮れにけり/脇美代子秋蒔き野菜をあれこれの種類、蒔いたのであろう。いろんな芽生えが、それぞれの畝にあって、暮れてゆくときも、はっきり何の畝か分かるのである。土や野菜への親しみ方が優しい。(高橋正子)
朝顔の澄み切る空になお澄めり/右田俊郎咲き残る朝顔は、朝夕の気温の差も手伝ってか、澄み切った色になる。澄んだ空の下で、その色は、ますます澄んで、目に映る。(高橋正子)
刈田の畦背丈揃いし曼珠沙華/目見田郁代稲が刈り取られ、田はひろびろと平面を見せています。そこに田を縁取るように赤い曼珠沙華が咲き揃っています。すっきりとした風景です。(高橋正子)
秋天に風吹き通る文化祭/岩本康子文化祭の日には、抜けるような青い空が広がったのでしょう。秋風も空高くを吹きぬけています。文化祭が晴れやかな空気に包まれました。(高橋正子)
木の実独楽歩き始めし子へ廻す/古田けいじ歩き始めた子は、木の実独楽を、なんと不思議なものと思ったのに違いありません。興味津々ですね。無垢な子どもとふれあう心があたたかい。(高橋正子)
綿の実の裂けて白きがふんわりと/岩崎楽典さりげなく詠まれているふうに見えるが、心の向く対象が、はっきりしていて、精神がよく集中されている。綿の実が、白くはじけている「ふんわりと」した世界に慰められる。(高橋正子)
群れつつも一本ずつの曼珠沙華/矢野文彦曼珠沙華の咲き群れる光景に出会うと、あたりは、あの赤い色に塗られたようになるので、一本一本の花を意識しないのが、普通かもしれない。が、よく意識すれば、それは、一本一本なのである。(高橋正子)
コスモスの愁いの束を抱え来し/戸原琴コスモスの花のマッスを愁いといった。画家や詩人の思いである。(高橋正子)
長靴を借り秋耕の畦の道/伊嶋高男友人の長靴を拝借して、稲を刈ったあとの田を鋤き起こしている畦を通った。晴ればれして楽しいことである。晴れ渡った空や、畦のひやひやした草や小さな草の花がいっそう楽しい気持ちにさせてくれる。(高橋正子)
日に空に向いて真っ直ぐ薄立つ/日野正人日・空・薄の3つが作る世界が、若やいでいて、しなやかなである。真っ直ぐ立つ薄によって、いっそう芯の通った句となった。(高橋正子)
白きを干す金木犀を楽しんで/祝恵子金木犀のいい匂いの中で、、秋晴れの空へ向けて真っ白く洗いあがったものを干す。毎日のことであるのに、金木犀が香ると、こんなにもたのしい洗濯になる。(高橋正子)
秋あかね日を浴び草の高さに飛ぶ/山野きみ子草の丈を飛ぶ茜とんぼが、日の光をうけて、まぶしいばかりである。叙情的な日本の光景である。(高橋正子)
杉山は昏れてよく澄む水の音/小峠静水杉山は、昼間でもうすっらと暗く静かである。昏れなずむと杉山はいっそう暗くなり、耳が敏くなる。流れる水音が、はっきり澄んで聞こえてくる。(高橋正子)
蟹籠を秋水こぼしつつ上げる/吉田晃「秋水」ならば、「蟹」は、川蟹であろう。水も空気も、すべてがきらきらと光って、川蟹の動きが見えてくる。(高橋信之)
天高し線路は山まで真っ直ぐに/林曉兵視線は、「山」へ「真っ直ぐに」である。「天」へ「真っ直ぐに」である。作者の心は、自然と直に結びつく。そして読者の心もまた大自然へと誘って、そこに結びつける。(高橋信之)
村じゅうに大きな秋がやって来る/河ひろこ村のすべてがすっぽりと「大きな秋」に包み込まれた。大きな実りの秋である。(高橋信之)
秋の虹一人ゆくことまた楽し/堀佐夜子秋の虹の下で、心が自由になっている楽しさである。自立した人間が得られる心の楽しさなのであろう。それにしても秋の虹には、澄んだ奥深さが感じられ、夏の虹とはまた違った趣きがある。(高橋正子)
ゆくほどに空青かりし花野道/阪本登美子花野の美しさに、身も心も染まっていくようである。花野が美しく感じられれば、感じられるほど、空は青く極まってゆく。(高橋正子)
奔放に高さ競いて芦の花/石井信雄静かな芦の花にも、奔放で、競いあうような時がある。静かな花の、自由な奔放さは、愛すべきもの。聴こうとすれば、水音さえも聞こえて来る景色。(高橋正子)
鶏頭の倒れて種をこぼしけり/磯部勇吉「実相観入」という言葉がある。この句は、まさに「実相観入」の句である。鶏頭の姿を、しっかりと見極め、深く自然に感じ入ったとろが素晴らしい。(高橋正子)
鳴き交わし霧のなか行く馬の群/安増惠子霧の中を、嘶きながら連れ立って行く馬の群れが、幻想的に詠まれた。霧の美しさ、群れてゆく馬の美しさが、「鳴き交わし」で感覚的にとらえられている。(高橋正子)
地図の旅巡り終へたる秋灯下/平野あや子「終へたる」は、一巡りの旅の道順をたどったあとの安心感の表れであろうか。旅の道順が、しっかりと自分に畳み込まれたのだろう。秋の灯が華やかにさえ思われる。(高橋正子)
新藁を積みしトラック村下る/碇 英一新藁を満載した農作業用のトラックが、村の坂道を下ってゆく。その姿を見送る目に、新藁の色が、新鮮に映る。刻々に移ってゆく季節が詠まれた。(高橋正子)
信濃路や陽をふっくらと稲架襖/八木孝子信濃路という語がやさしく響く。稲架に架けられた稲が、静かに陽を吸ってふっくらして、あたたかく心休まる光景。(高橋正子)
坂のぼり行けば行くほど秋の底/野田ゆたか高くのぼり来れば、足元まで、秋の空気が満ち満ちている。歩く足があるところが、底というわけなのだろう。全身が秋の真っ只中にある。(高橋正子)
秋風を集めて深し空の青/安田明子秋風が、空に吸い込まれてかのようである。それだけ空は高い。吹く秋風をすべて集めたら、どんなに深く青い空ができるのだろうかと思う。新鮮で詩的な発想。(高橋正子)
アイロンのすべる軽さや秋うらら/池田和枝アイロンがけの楽しさが、主婦ならではの感覚で詠まれている。明るい生活の句。(高橋正子)
稲刈られ稲田は軽く広がれり/霧野萬地郎稔りに穂を垂れた稲を刈り取ると、田んぼは、軽々した感じとなる。稲を刈りとったあとの、しばしの田の休息といえる。(高橋正子)
コスモスが風の高さに揺れ揃う/藤田洋子コスモスが、咲きそろい、しなやかに風に揺れている。その様子を、「風の高さに」とした。コスモスがよく描かれた。(高橋正子)