▼俳句雑誌「水煙」の秀句
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▼俳句日記11月
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秋耕の光たっぷり苗いろいろ 祝 恵子 秋蒔き苗の畝が整えられて、たっぷりと光をあびている。そこ へいろんな生きのいい苗が運ばれてきて、植付けの準備が整っ た。すべて生き生きしてよい。(高橋正子)
団栗や女の好きなカプチーノ 林 暁兵 団栗の転がっているようなところで、熱いカプチーノが飲める くつろいだ時間は、楽しくてとても素敵です。「女の好きな」 というのは、確かにそうでしょう。この語句によって、明るい 世界がもたらされました。(高橋正子)
秋澄むや明日踏む峰を指差せり 多田有花 秋澄む心持が、溌剌と表現された。人間生活の健康で、活動的 な一面は、誰にとっても、さわやかに思えることだ。(高橋正 子)
紅葉山バスも丸ごと染まりけり 河ひろこ すっかり紅葉した山に、バスが入っていくと、どの窓からも紅 葉が見えて、バスの中まで、紅葉の色に染まったようになる。 紅葉の美しさが楽しめる句。(高橋正子)
冷えてきし床の固さを踏みにけり 脇美代子 「踏みにけり」と静かに言い終えたところに実感があり、内へ と向かう精神の充実がある。「冷えてきし」は、気温が日々下 がってゆくのを、日々感じて始め言えることである。そこに、 偽りの無い確かさがある。(高橋正子)
秋しぐれ雲間に深き青湛え 岩本康子 秋の時雨は、日が差していたかと思うと、にわかに曇って白く 降り始める。雲の間にまだ深い青空の青があるというのに。こ んな自然現象には、人間の知の領域をはるかに越えたものがあ るような気がする。(高橋正子)
青き葉を選りて食む牛冬立つ日 右田俊郎 本格的な冬を控えて少ない青草を食んで余念のない牛。まだ、 あたたかな日和ではあってもぴんと張りつめたように澄んだ平 原の空と空気が目の前に拡がります。(福田由平)
白鳥の飛来して居り今朝は晴れ 守屋光雅 白鳥の清憐なすがたを感覚的に表現しています。素直な詠み方 が、句にやわらかさと輝きを与えていますね。気温もずいぶん 下がって来て、晴れた日は空気がきらきらしていることでしょ うね。(高橋正子)
初鴨の水掻く足の浅黄色 石井信雄 今年初めて鴨に出会った新鮮な気持ちが、とてもいい。初冬の 水の景色が、透明感を持って描かれた。水を掻く浅黄色の足が 、かわいくさえ思え、印象的である。(高橋正子)
一斉に飛び翔つ鴨の青空へ 磯部勇吉 休息をとった鴨が、一斉に飛び立ち、空へ浮上する力は、どこ か力学にかなっているように思える。鴨が一斉に飛び翔った池 は、空と同様に真っ青なのであろう。空と池とは、青く光りあ っている。鴨の羽色が、印象的。(高橋正子)
残る葉も積もる落葉も日の中に 藤田洋子 「日の中に」あって、いい風景である。共生する幸せを思う。 待てば、日の光は、すべてを照らし、すべてを輝かしてくれる 。(高橋信之)
山晴れて花温室(はなむろ)の屋根開きおり 堀佐夜子 冬晴の開放感をうまく言葉で捉え、明るいのがいい。作者を取 り囲んだ交流が伝わってきて楽しい。(高橋信之)
山がうつくしかったねと冬菜買う 八木孝子 平明な口語俳句で、身辺のすべてが親しい。日常を表現 するには、口語表現が最適である。(高橋信之)
冬雲の揃って丸くどこかへ行く 相原弘子 上五の「冬雲」は季語、中七の「揃って丸く」は写生、下五の 「どこかへ行く」は主情で、この三つの畳み掛けがよく、俳句 の主要な要素が揃っている。下五が破調の6音で、現代語的口 語表現であるのも、作者の思いに相応しいのである。(高橋信 之)
旅なれば十一月の雨軽し 野田ゆたか 旅のよさなのでしょう。、旅の身には、少し冷たい十一月の雨 も、情緒のある雨となっています。これこそ、旅の心なのでし ょうね。(評:高橋正子)
海光にかぶり直して冬帽子 阪本登美子 中七の「かぶり直して」は、技巧だが、「海光」と「冬帽子を つないでリアリティーがある。読み手を納得させのである。( 高橋信之)
乗鞍の雪嶺青くオリオン座 堀 幹夫 乗鞍岳の雪嶺の青く厳しい様と、オリオン座の揺るぎ無く組ま れた星座の形が、鮮明なイメージを作っている。それが読み手 の気持ちをしっかりと掴んでいる。「乗鞍」の山名も充分生き ている。(高橋正子)
どこまでも膨らめる空小六月 碇 英一 小春日和の空を詠んで、その本質を捉えたのである。春のよう に、晴れた暖かい日和の「どこまでも膨らめる」空である。小 春・小六月は、陰暦10月の異名で、今年の新暦では、11月 15日から12月14日まで、なのだが、俳句では、「日和」 の意味を含ませている。(高橋信之)
小春日やゴム飛行機浮くその一瞬 伊嶋高男 ゴムという言葉を最近あまり聞かなくなったような気がします が、「ゴム」は、ある時代想起させますね。戦後しばらくの時 代を。小春日とゴム飛行機が、のどかな光景を作り出していま す。(高橋正子)
蕪切り甘き香りの立つを知る 霧野萬地郎 「知る」と言い切ったところに作者の新鮮な感動があり、表現 の素直で平明なのがよい。(高橋信之)
片付けて四隅ありたる冬座敷 戸原琴 和室は、いろんな住まい方ができる。普段の部屋も、来客があ るとなとなれば、きちんと物を取り払って、凛とした座敷にな る。冬座敷の凛とした清潔さがいい。(評:高橋正子)
風なくて花の重みに山茶花揺れ 目見田郁代 「風なくて」は、見えないものを見たのである。これが俳句の 心であって、作者は、深く感じたのである。(評:高橋信之)
冬空を蹴ってブランコ水平に 日野正人 水平にまで、ブランコを漕ぐ元気な子どものたくましさが、冬 空の曇りを払いのけてくれる。力の湧く句。(評:高橋正子)
日溜まりをぎっしりうめて冬木の芽 八木孝子 冬日向に、どの木々もつやつやと芽をつけている。小さな芽 の生き生きした様子に、元気を与えられる。(評:高橋正子)
黄落に市の賑わい染みにけり 福田由平 フリーマーケットや決まった日の市など、人々が、気楽に、賑 やかに楽しめるのが、市の楽しさ。その賑やかさが、街全体を 黄色く染める銀杏などの黄葉に染みて渾然となる黄落期がいい。 (評:高橋正子)
橋脚を叩く冬波船来るたびに 北村ゆうじ 港湾をまたぐ橋でしょうか。橋の下を船が潜るたびに、波 ができ橋脚に押し寄り、橋脚を叩いています。濁った海水 の波音がリアルで力強く感じられます。(評:高橋正子)
遠く泛く鳰のいずれも虹を負い 高橋正子 自句自解 バルコニーから見える池の水がところどころきらっと輝いてい る。鳰が潜っていたのである。泛いてきた鳰は、十羽あまり。 遠目には、朝日を受けてどれも小さな虹を背負っていた。
山茶花のそこだけ明るい夕暮れ 三浦絹子 山茶花は、初冬から冬を彩って、私たちの気持ちを和ませる。 慌しく過ごしている一日の「明るい夕暮れ」である。(評:高 橋信之)
たっぷりと白菜を切り鍋に盛る 吉田 晃 平明で、無駄な言葉がない。種も仕掛けもない。身近な生活を 詠んで佳句。(評:高橋信之)
地下街を出れば冬芽が夜空指す 古田けいじ 名古屋の地下街であろう。「地下街」は、現代社会の典型的な 生活様式で、「夜空」の「冬芽」は、その対象にある。都会の 真っ只中に在って、自然の生命を見逃さないのが嬉しい。(評 :高橋信之)