俳句カレンダー/2001
俳句日記


■俳句カレンダー/200年■

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1日(火)/元日

初明りしたまいて慈母観音像 川本臥風





「初明り」という美しい言葉で新年の清らかさを教えてくれています。また


「寒清し床に白磁の観世音」という句もあって臥風先生の心の向かう先が念


仏の世界で、これは先生の身ほとりにある世界のことでした。(高橋正子)








せせらぎの砂に日差してお元日  高橋正子





自句自解


松山の護国神社へ家族で初詣をしたときのこと。神社のすぐ前のせせらぎの


砂が、元日の日差しを受けてあまりに清らかだったので、思わずできた句。


2日(水)

風吹いて正月二日となる夜に 高橋信之





自句自解


元日の夜は静かである。家族も寝静まると、なお静かになる。ひとりの刻の


充実に浸り、少しの風音にも聡くなる。


3日(木)

誕生日正月三日の眉月に 高橋正子





自句自解


誕生日と言っても、正月三日なので特に感慨はない。眉月が印象に残っただ


けの、ただそれだけの誕生日だった。


4日(金)

青空や都心四日の潔さ 霧野萬地郎


 


初仕事であろう。新世紀の新年である。仕事に向かう作者の姿勢が快く伝わ


ってくる。(高橋信之)


5日(土)/寒の入り

寒餅を搗き上げ空の美しき 野田ゆたか





こんな伝統的なことを経験されている作者が羨ましいです。お餅を搗き上げ


た後、少し汗ばんで、ふと空に目をやると青い美しい空が拡がっている。最


高に気持ちいいでしょうね。(岩本康子)


6日(日)

生き生きと声が動いて初句会 藤田洋子





自句自解


高橋先生のご自宅での初句会。新しい年の緊張感と共に明るく生き生きとし


た声の飛び交う楽しい句会となる。


7日(月)

炊き上げし七草粥の火の匂い 阪本登美子





自句自解


七草を俎板の上できざむ。炊き上がった鍋のなかへ七草をちらす。1月7日


は私しの誕生日である。来年も健康でこの日を迎える事が出来ることを願い


、味わった。


8日(火)

池真中寒鯉の居てそこに空 守屋光雅


 


作者の視線は、風景の「真中」に絞り込まれている。作句の心が集中されて


いるのである。そして、ひろびろとした「空」がある。広がりがある。(評


:高橋信之)


9日(水)

しんしんと時深めゆく春の雪 阪本登美子


 


「深め」は、もともと空間に使うものだが、詩では許される。時間を空間に


置き換えて表現する。抽象的な時間を具象的な空間に置き換えて表現するの


である。そして、心理的なものが実感を持って来る。上五の「しんしんと」


がいい。言葉を生かしている。(高橋信之)


10日(木)

立ちしものに光りを注ぎ冬満月 碇 英一


 


月光が、はるかより届き、さえざえと地を照らしている。丈高いものは、降


り注ぐ月光を受けて浮びあがり、月と地の間に澄み渡った世界を作っている


。「光を注ぎ」が、よい。(高橋正子)


11日(金)

白菜の真二つに割かれ干されおり 祝 恵子


 


作者の軽い驚き。日常の軽い緊張は、生活の励みとなって、生き生きさせて


くれる。疲れない軽い緊張がいい。(高橋信之)


12日(土)

誰かに呼ばれているらしい一月の晴れ 相原弘子





自句自解


晴れ渡ってあらゆるものがその中へ吸われる。寒だからこそであろう。名を


呼ぶ声が貫けてくるようだ。誰も呼んでないだろうに。


13日(日)

カーディガン月光に冷えあす成人 高橋正子





自句自解


学生時代、生家に帰省していて出来た句。そとの用事をいろいろしていて、


黒いカーディガンが、毛羽立つように、白く霜を帯びたような感じで冷え


ていた。あす成人となることをふと思った。祖母の葬儀のための用事をし


ていた日のこと。


14日(月)/成人の日

冬木坂梢明るく空を突く 山野きみ子





冬木の坂が心楽しく、明るく詠まれていますね。空を突くは、厳しいようだ


が、作者の心の明るさなのです。(高橋正子)


15日(火)

ポッケトにまるめておりぬ冬帽子 相原弘子





自句自解


帽子を被ると自分の頭がわかるようでおかしくなってくる。ポケットにまる


めている時はどうなんだろうと、又、おかしい。


16日(水)

寒林をゆけばしんしん胸が充つ 高橋正子





「寒林(かんりん)」、「しんしん」といった言葉の響きがいい。「胸が充つ


」は、詩的な表現。俳句が詩であることを教えてくれる。(高橋信之)


17日(木)

枯れ葉舞う美術館への石畳 阪本登美子





自句自解


星野富広絵画展をみた。花の絵の中に囲まれてゆったりした刻であった。絵


の中の花びらのような真っ赤な葉っぱが一枚、石畳の上でくるくるとまわっ


ていた。


18日(金)

鉛筆の机をころぶ寒夜かな 堀佐夜子





自句自解


空気の乾燥する冬の夜は小さな音でも大きく響くように思われます。


19日(土)

冬木立つその確かなる影を踏む 藤田洋子





自句自解


冬の大気の中、力強い生命力を内に秘め立つ冬木。その影もまた輪郭のはっ


きりした確かさを持ち、心惹かれるものがあります。


20日(日)

冬木立リヤカー曳いてチマチョゴリ 古田けいじ





自句自解


ソウルへ旅した。滞在中ずっと天候が悪く寒かった。郊外の、古い時代の民


家などを集めた民族村へいった時、原色のチマチョゴリをきた女性がリヤカ


ーを曳いて、向こうの木立の中を通っていった。その時また雪が降り出した。


21日(月)

コーヒーの匙上向きてすぐ冷ゆる 高橋正子





自句自解


学生の時代の句。下宿の八畳間は、良く冷え込んで、コーヒーを混ぜたスプ


ーンは、寒寒とすぐに冷えてしまった。「上向きて」は、そのときの感懐な


のだが、それがこの句を、「天狼」同人で、英詩の授業をしてくださった、


谷野予志先生がお褒めくださる結果となった。この以後、谷野先生は英文科


の先生方に、この句を何度となくおっしゃって、感覚の鋭さを指摘されたと


聞いた。自分の個性の一つを知った思い出の一句。一草庵での句会の句。


22日(火)

今朝は先ず車掘り出す雪仕事 霧野萬地郎





自句自解


ニューヨーク郊外の豪雪。露天に駐車した車は完全に雪に覆われました。ス


コップを使って、雪と汗まみれになって、車を掘り出し、また道路までの導


入路、と歩行者用の道作り。車道の除雪は都市、そこに至るまでの私道の除


雪は個人の責任。滑って怪我すれば、訴訟にもなる。この日は除雪アルバイ


トが来ませんでした。


23日(水)

雪原に一戸を守る屋敷林 河ひろこ





厳しい雪国の様子を想像しています。美しいこの風景も寒さと風の厳しさを


物語るのでしょう。地吹雪といい、その怖さを知らない南国育ちは想像して


止みません。体験して見たい等、少し不謹慎でしたでしょうか。(脇美代子)


24日(木)

寒行の聲の野太く過ぎにけり 田岡 弘





「野太く過ぎにけり」は、事実そのままであってよい。それによって、読み


手は、寒行僧の声を聞くことができ、姿を思い起こすことができる。「けり


」の詠嘆もよく効いている。(高橋正子)


25日(金)

もろもろの影の留まる冬日中 柳原美知子





冬日の差すところを見れば、物の影が、一つひとつに生まれている。冬の日


によって、生み出されている物影のさまざまであることよ。改めて自然を感


じるのである。(高橋正子)


26日(土)

風花の中モノレール曲がり来し 堀佐夜子





風花の舞う空の高さが目に浮びます。その空からモノレールがカーブしてや


って来ます。そこに心惹かれるのは、未来都市を夢見る少年少女のような心


ではないでしょうか。(高橋正子) 


27日(日)

冬晴るる駅までの道大股に 林 暁兵


 


「大股に」は、おそらく作者であろうと思う。夾雑物がないので、作者の世


界にやすやす入って、読者は「冬晴るる」風景を共にする。わたしの好きな


句。(高橋信之)


28日(月)

陽を浴びて寝転ぶ空へ冬木立 古田けいじ





自句自解


近くに残った里山へ散歩。日の当たる落ち葉の上で寝転んだ。こんな高い木


のてっぺんまで水を吸い上げる冬木立の生命力に改めて敬服。


29日(火)

冬耕の畝立てられている日暮れ 吉田 晃





自句自解


山の冬は寂しい。しかし、至る所に人間の強さが見える。立てられた畝は、


春には芽吹く地となる。寂しいと感じるのは土に生きていない者の感傷かも


しれない。


30日(水)

蝋梅の枝の明るさ空に置き 目見田郁代





「蝋梅」は、冬、葉に先だって黄色の花弁を開くので、「枝の明るさ」とは


、上手い表現であり、その写生を、「空に置き」が完成する。(高橋信之)


31日(木)

冬えんどう藁のたらされ少し巻く 祝 恵子





作り手の優しさが伝わってくる。生命へのいたわりでもある。(高橋信之)