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▼俳句カレンダー1999〜2001
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木蓮のむらさき濃ゆく風高し 堀佐夜子 木蓮が咲く頃は、ずいぶん暖かくなる。風が心地よく感じられる。そんな 心地よさが、衒いなく詠まれている。(高橋正子)
ハンドルの視野に菜の花溢れ来る 太田淳子 素直な表現がなによりよい。車を運転しながら、視野に入る菜の花の明る さを楽しみ、それがまた生活の明るさへと繋がっているのがよい。(高橋 正子)
ペン運ぶ音の明るし新任者 日野正人 「新任者」は、季語ではないが、この句には、季感がある。新任の人を迎 え、迎える側も、気分が浮き立つ。新年度の始まりに職場も明るい雰囲気 に包まれる時である。(高橋正子)
鶯の笹の高さに来て鳴けり 金子孝道 「笹の高さ」は、笹薮の笹が、土地の命をもらって充分に伸びている様子 を思い起こさせてくれる。そこに鶯がのびやかに鳴き、山の自然が生きい きとしているのがよい。(高橋正子)
喪の旅の桜吹雪に列車待つ 堀佐代子 「桜吹雪」に悲しみを見た。詩情のある、いい句だ。(高橋信之)
花を見て花影を踏む石畳 霧野萬地郎 「花を見て花影を踏む」作者の姿が見えてきます。 長身の萬地郎さんが見えてきます。いい句ですね。(高橋信之)
アネモネの茎の長さを瓶の中 脇美代子 作者の眼がいい。眼を凝らしているのである。(高橋信之)
遠浅の浜に人あり散る桜 多田有花 手前に散り急ぐ桜を、遠くの浜に人を置いて、遠近感がよく出た風景と思 います。存分の春の光が感じられるのが、何よりもいいと思います。(高 橋正子)
蒼白なクレーの天使桜散る 戸原 琴 スイスの画家クレーについて、あるいは、具体的に「クレーの天使」につ いてたとえ知識がなくても、「蒼白な天使」という表現から、感覚的にク レーをキャッチすることができる。ペスミスティックなロマン的感覚が「 蒼白な天使」に漂っている。それは、「桜散る」を受け止める感覚に通じ るものである。(高橋正子)
駅頭に学生どっと新学期 八木孝子 ことが新しくなると、勢いがつく。「どっと」という言葉がこの勢いを表現 して、素直である。生命の勢いは、真っ直ぐである。この句に季語はないが 、季感は、充分に春である。(高橋信之)
歌声は公民館より八重桜 岩崎楽典 公民館のそばには、染井吉野に後れて八重桜が咲いている。窓が開け放た れて、歌声サークルの合唱の声がよく聞こえてくる。いい季節をむかえ、 みんなの活動が伸びやかになっているのがいい。(高橋正子)
杏咲く畝にくっきり影落とし やぎたかこ 杏の咲く村は、よく晴れて、のどかに杏の花に埋もれているのであるが、 杏畑に近寄ってみると、一樹の影が、くっきりとしている。やさしい杏の 花をつけて、一樹が、はっきり、くっきりしているのは、驚きである。 (高橋正子)
うぐいすの空気膨らせ鳴きにけり 碇 英一 うぐいすが、声を長く、のどかに鳴いている様子が、「空気膨らせ」で表 現された。鶯の声が澄み通る空気が、晴朗である。(高橋正子)
囀りの木々の間を直線に 日野正人 邪心のない、清潔な詩。下五の「直線に」は、簡潔な表現で、日本的な美 は、こういった世界であろう。(高橋信之)
大きもの隠されおりぬ八重桜 碇 英一 「八重桜」に隠された「大きもの」とは、作者の心に在る確かなもので、 それを、かるがると言葉にした。存在としての詩である。(高橋信之)
こでまりの庭に往く風のこる風 宮地ゆうこ 往く風は、通り過ぎる風で、こでまりを大きく揺らす。通り過ぎた風のあ とに、こでまりを小さく揺らす風がある。のこる風である。こでまりの枝 のしなやかさがよく表現された。(高橋正子)
田返しや雄山の風に土匂う 能作靖雄 「土匂う」が、自然体で捉えられたよさがある。北陸にも春がやって来、 田返しの農作業がはじまる。雄山から吹く風も明るくなって、土を匂わせ る。(高橋正子)
藤房の色の重みが揺れ動く 日野正人 藤房は、房の先に全てを集中するように下垂している。「色の重み」とな って垂れているのである。藤の花房の瑞々しさと、乱れずに揺れる姿に、 読み手の精神の張りが映し出された。(高橋正子)
永き日の野辺の日時計正午指す 平野あや子 「永き日」「野辺の日時計」「正午」のどの言葉にも、長閑な明るさがあ って、言葉と気持ちがよく一致している。日ごろ親しんでいる時計なので あろうか。(高橋正子)
春深し土の匂いの強さかな 池田和枝 春も長けると、植物の生長もますます盛んになり、雨なども土によく沁み 込んで、雨がりの日など強く匂うようになる。土の生命力を思うときであ る。足もとからの実感がよい。(高橋正子)
お遍路の鈴はればれと山をゆく 下地 鉄 お遍路さんの鳴らす鈴の音が、「はればれと」しているのがよい。はれば れとした心である。平坦な地ではなく、山道であるから、お遍路さんも、 通りすがりの作者も、心の深いところで触れ合って行き違ったのであろう と思われる。(高橋正子)
藤の花垂るれば風の走りけり 加納淑子 藤の花房が垂れて、房の先を、風がさらさらと漣のように通り過ぎる様子 が、「風の走りけり」である。藤の花いろと、光の感じをはっきりと思い 浮かばせてくれるいい光景である。(高橋正子)
がっしりと藤棚作り房あまた 祝恵子 藤棚が、がっしりと作られて、たくさんの藤房を支えている。がっしりと 支えられた藤が、端正な花房を揺らしている光景をありありと思い浮かべ ることができる。(高橋正子)
薬屋に貰う六角紙風船 池田和枝 富山の売薬さんの紙風船ですか。今も全国へ行商に出かけているようです ね。私も子どもの頃にもらった売薬さんの六角紙風船が懐かしいです。 (やぎたかこ)
帰り来て我が家の上の春北斗 八木孝子 春北斗に、ゆったりとした寛ぎが感じられ、春の夜空の潤いがよく詠まれ ている。(高橋正子)
ゆっくりと湾に向いて春の潮 岩本康子 春潮の干満が、眩しく胸元に残ります。遠くを見てしまいます。(相原弘子)
みちのくの花曇抜け隅田川 守屋光雅 みちのくは、今花のとき。旅立つ日は、高い曇り空。その曇り空を抜 け出て着いた東京の隅田川。隅田川をこの目で見た、たしかな嬉しさ が伝わってくる。(高橋正子)
春陰のどの地下口も入り易し 高橋正子 桜の咲くころのやや冷え冷えとして、曇りがちな空模様は、過ごしやすい 。「春陰」である。「地下口」は、都心の地下鉄への入り口であろうが、 「春陰」ならば、なお「入り易し」である。、「春陰」は、語感の違いが あるが、「花曇り」と同義。(高橋信之)
ランドセル躑躅の中を駆けてくる 宮地ゆうこ 躑躅が、つやつやを光りを返して咲いている中を、元気一杯の小学生が、 ランドセルを光らせながら駆けて来る。春たけなわの明るい、活力のある 光景である。(高橋正子)
チューリップ芯真向かいにエスプレッソ 戸原 琴 句がユニークで強いところがある。作者の内面の強さでもあろう。(高橋 信之)