デイリー句会月間賞
俳句日記


■俳句カレンダー/2002■

【5月】

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1日(水)/メーデー

労働歌職にある日の遠退きぬ 野田ゆたか



メーデーに関わった日々が、蘇る。世界中の勤労者の祭典も、昨今は様変

わりしているが、活力みなぎって、懸命に働いた日々は、遠い思い出とな

りつつある。(評:高橋正子)


2日(木)/八十八夜

八十八夜朝餉の食器ととのえる 相原弘子



八十八夜を迎え、朝食のテーブルに置かれる、食器の音や色合い、触れ合

う音がすがすがしい。すがすがしい朝は、今日の元気を生み出してくれる。

(評:高橋正子)


3日(金)/憲法記念日

蒔いてすぐ土に紛れし花の種 脇美代子



花の種は小さいものが多いが、土に蒔けば、すぐどこに蒔いたかわからな

くなる。土に紛れてしまって、蒔いた間隔も、すじも見極めがたくなる。

花種を蒔くときのささやかな感想である。(評:高橋正子)


4日(土)/下弦

鳥曇いつものバスの吊革に 青海俊伯



「いつもの」生活に感慨がある。生活に詩がある。(評:高橋信之)


5日(日)/こどもの日

獅子舞の笛や太鼓に風光る 堀佐夜子



春のまつりの獅子舞が、やってきた。門先なのであろう。お囃子の笛や太

鼓も、その動きに風を光らせている。その音色や音までも、きらきら輝い

ている。(評:高橋正子)


6日(月)/立夏

魚市場どら声高く初鰹 平川康子



初鰹の生きの良さ、魚市場の活気が、青葉の季節をいっそう元気あふれる

ものにしてくれます。(評:高橋正子)


7日(火)

鮮やかに菖蒲すらりと湯に浮ける 福田由平



菖蒲湯に浮く菖蒲の姿が、さらりと詠まれた。そのため、読者は鮮やかな

みどり、剣のようなすらりとした葉の香気を楽しめる。(評:高橋正子)


8日(水)

蕗の広葉の風を受けつつ水平に 日野正人



蕗の広い葉は、雨を受けても、風を受けても涼しげある。(評:高橋正子)


9日(木)

青麦に風行き過ぎて光り置く 山野きみ子



青麦を吹き分ける風を、きらきらと輝く光の印象としてとらえて、野が明

るくさわやか。(評:高橋正子)


10日(金)

柏餅無骨なる葉の手に馴染み 右田俊郎

 

柏餅を包む柏の葉の無骨さ。文人好みの形や手触りである。それが手に馴

染むのであるから、その手もおそらく無骨に働いた手なのである。(評:

高橋正子)


11日(土)

包丁の音埋もれゆく新キャベツ 宮地ゆうこ



「音埋もれ行く」で、さくさくと刻まれてゆくキャベツの色と柔らかさが

想像されます。(評:古田けいじ)


12日(日)/新月

彫り上げて木屑の匂う麦の風 野田ゆたか



麦の風に、木屑が匂うと、広々とした、のびやかな世界へ連れてゆかれる。

(評:高橋正子)


13日(月)

アカシアの花へ風来て薄みどり 古田けいじ



アカシアの白い花房が、風にゆらぎ、かすかに緑を帯びて感じられる。ア

カシアの葉のさやぎと、ひとつひとつの花が、ちらちらと目に入り合って

、薄みどりとなった。風のやわらかさ、花のゆたかさがいい。(評:高橋

正子)


14日(火)

河鹿鳴く石ころの角みなとれて 磯部勇吉



石ころが、丸くなるあたりの清流が、目に浮かんでくる。河鹿の声が澄ん

でいる。「角みなとれて」は、経験によって生まれたやさしさの表出。

(評:高橋正子)


15日(水)

芍薬の花の白さや雲湧きぬ 戸原琴



芍薬は、牡丹と似ているが、牡丹よりも清冽。白がいい。その背景の雲も

まっ白であろう。東京では、安曇野の白い芍薬が花舗に並ぶそうであるが

、清冽なイメージがあってよいものである。(評:高橋正子)


16日(木)

蛸壺に草花咲かせ浜薄暑 堀佐夜子



蛸壺は、俳諧的素材。浜薄暑と、蛸壺に咲かす草花で、薄暑の景色が、す

っきりと詠まれた。(評:高橋正子)


17日(金)

枇杷を剥く水滴れり枇杷色に 八木孝子



枇杷の熟れ色が、滴りとなって、みずみずしい。「枇杷」の繰り返しも気

にならない。(評:高橋正子)


18日(土)

丸々と光を溜めて若葉雨 日野正人



「丸々と」した若葉の雨滴が、はつらつとして輝いている。生命力がある。

(評:高橋正子)


19日(日)

チェンバロの調律つづく青嵐 伊嶋高男



チェンバロの調律中の、あまり響かない、弾くような音に、よい雰囲気が

生まれている。青嵐によって句に深みがでた。(評:高橋正子)


20日(月)/上弦

青空や今朝ヨシキリは葭の原 守屋光雅



青空と葭の原、そこで鳴くヨシキリの声が、よく響く。夏がきたことが実

感できる。「今朝」が良い。(評:高橋正子)


21日(火)/小満

海からも山からも葉桜へ風 藤田洋子



「葉桜」が季節を充分に語って、海、山、風は、初夏である。(評:高橋

信之)


22日(水)

水打ちて神輿出を待つ静けさに 山野きみ子



「神輿」の季語は夏だが、「水打ちて」が、祭りが夏のものであることを

、いっそう確かに教えてくれている。三社祭の光景であろうか。祭りの清

らかさが詠われた。(評:高橋正子)


23日(木)

直角に水の流れや薔薇花壇 霧野萬地郎



薔薇の花壇を流れる水が、鮮やかである。「直角に」流れる水は、意匠さ

れたものであろうが、薔薇の花によく馴染んでいる。(評:高橋正子)


24日(金)

浴衣着てバスに二人の相撲取り 林 暁兵 



相撲取りがバスにのると、いつものバスも楽しい雰囲気になる。普通の人

の二倍、三倍の浴衣布の分量も、夏らしさを伝えいて、迫力がある。気持

ちが軽く、楽しくなる句。(評:高橋正子)


25日(土)

五月雨やアジアへ向かう貨物船 霧野萬地郎



五月雨が景色全体を包み、大きな光景。。インドネシアやフィリピンやと

いったくにに向うか貨物船の姿の外形を表現して、内実を考えさせる句。

五月雨が効いた。(評:高橋正子)


26日(日)/満月

どちらへも十字路平ら花柘榴 相原弘子



石榴の花の割くころのしらしらした景色がよく詠われている。「どちらへ

も十字路」は、広々とした田園の十字路が伸びる様子。(評:高橋正子)


27日(月)

哲学の真理は一つ夏木立 野田ゆたか



哲学の道を歩かれてのことだろう。歩きながら、「真理は一つ」とこれま

での経験と思いから、実感されたことである。夏木立の、緑蔭があればこ

そ。(評:高橋正子)


28日(火)

薫風や電池換えたる車いす 矢野文彦



電動車椅子の電池を取り替え、外出の準備も万端。風薫る中へ車椅子を颯

爽と進ます漲る力が、頼もしい。(評:高橋正子)


29日(水)

生かされてある幸せや夏野行く 安丸てつじ



広がる夏野の光景に、じみじみ生かされている幸せを感じる。自然が静か

に心に染み込んで、どこか遠くを思う懐かしさのある句。(評:高橋正子)


30日(木)

東京の空は凸凹駅に蟻 金子孝道



東京の駅に降り立ち、空を見上げると、高いビル、窪んだビルが、空に凹

凸を作って都会を感じさせてくれる。ふと足元を見ると都会にも、自分の

住む町と同じように、小さな蟻がいて、自然が変わらず東京にあるのがう

れしい。それは、東京に来ても変わらぬ、作者自身の体にある自然でもあ

る。(評:高橋正子)


31日(金)

青嵐この村ぬけて登山口    北村勇治



読者を自然の喜びの中に連れ出してくれる。作者とともに登山を楽しむこと

のできる俳句の喜びでもある。(高橋信之)