むかしの俳句カレンダー
俳句日記
BBS/さら句会


■俳句カレンダー/2002■

【9月】

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1日(日)

秋天や留めるものの無き高さ/大石和堂



抜けるように青く高い秋天を、「留めるものの無き」と感じた。留めるも

のとは、なんだろうと哲学的な問いが湧く。切り込みが深い。(高橋正子)


2日(月)

新涼や卵の殻で瓶洗う/都 久俊



卵の殻を瓶に入れて、振り洗うと、瓶はきれいに透き通ってくる。新涼の

感じが、透明な瓶、清潔な白い卵殻によって、楽しく表現されている。余

談だが、茶渋のついた水筒に卵殻を入れて洗うと、水筒はピカピカになる

。これは私のお勧め。(高橋正子)


3日(火)

稲田の上を新幹線のすれ違う/相沢野風村



すっきりと広がる稲田の上を走る、新幹線のスピード感が爽快。(高橋正子)


4日(水)

色づきし毬わり栗のこぼれ落つ/右田俊郎



的確な写生で、色づいた栗の毬が、初秋に新鮮である。「こぼれ落つ」に

、この句を納得させる力がある。(高橋正子)


5日(木)

真四角の柿の葉すしをむく夜長/平野あや子



柿の葉すしは、お土産なのだろう。柿の葉にきちっと四角に包まれたすし

を、むく所作に、夜長の思いが湧く。熱いお茶も淹れられているだろうか

ら、よいひと時である。(高橋正子)


6日(金)

巨峰買うセロファンごしの豊さを/霧野萬地郎



「セロファンごしの豊かさ」によって、大粒の紫の葡萄のみずみずしさが

、よく伝えられている。セロファンの透明感が新しい。(高橋正子)


7日(土)

百日紅幹に夕日の滑り落つ/山野きみ子



夕日は低くなって、あらわな百日紅の幹に当たっている。まだ花を高々と

咲かせている明るさのなかにも、幹に当たる夕日には一抹の寂しさがあっ

て、日差しに秋めくものがあるのを感じる。(高橋正子)


8日((日)

大根蒔く畝の深さに日の射して/脇美代子



朝夕が涼しくなり、大根を蒔くときになった。夏から秋へと、日差しが傾

斜してくる。畝に深く差してくる。その畝には、すぐに貝割菜が、育って

くると思うと楽しい。(高橋正子)


9日(月)

シベリアの秋茫々と湖(うみ)の数/多田有花

 

シベリアを飛行機で越えるとこうなのである。物音一つないような森林の

なかに点在する湖。世界一の水深を誇るバイカル湖もあるであろう。季節

が秋ならば、シベリヤは「茫々と」なのである。(高橋正子)


10日(火)

花野来て花野の夕暮れ見て帰る/戸原 琴



花野を歩んで来た心楽しさ、花野の夕暮れの地味なようだが、静かな華や

かさが、秋の野の美しさを伝えている。(高橋正子)


11日(水)

栗渋皮剥く包丁の固き音/守屋光雅



原句の「渋剥く」は、日常的には、そう言われているのかもしれないが、

「渋」ではなく「渋皮」とした。栗を剥き続けると、栗を剥く音は、確か

に固い音として捉えられる。物の本質へと迫る意志がよく感じられる。

(高橋正子)


12日(木)

コルク栓抜けば月夜に音残す/日野正人



月夜に、なにか物語りが始まるような気配があって、ユニークな句。静か

ないい月夜という平面に、ワインを開ける音がはっきりとして、三次元の

世界を構成している。(高橋正子)


13日(金)

虫の音に取り囲まれて闇にいる/祝 恵子



【評】灯を消して、静かにしていると、虫の音が四方から聞こえてくる。

虫の夜がふっくらとして感じられる。(高橋正子)


14日(土)

御岳の雲掃われて秋空へ/古田けいじ



懸かっていた雲が払われて御岳の雄姿が現れた。親しんでいる山が、季節

を新たにして、秋空にすっきりと聳え立つのがいい。(高橋正子)


15日((日)

群れつつも一本ずつの曼珠沙華/矢野文彦



曼珠沙華の咲き群れる光景に出会うと、あたりは、あの赤い色に塗られた

ようになるので、一本一本の花を意識しないのが、普通かもしれない。が

、よく意識すれば、それは、一本一本なのである。(高橋正子)


16日(月)

秋耕に電柱長き影下ろす/吉田 晃



「長き影下ろす」が、すべてを言い切っている。秋耕(しゅうこう)の音

も静かな土の光をよく表している。静かで深い心境がよい。(高橋正子)


17日(火)

長き夜に広げてみるや山の地図/林 暁兵



夜も長くなると、自分だけの時間が少し長くなる。そんなとき、好きな山

に登るコースなどの地図を広げて、山の景色を想像したりするのも、楽し

い時間である。(高橋正子)


18日(水)

ミシン踏めば夜汽車のような秋の夜/河ひろこ



足踏みミシンのカタカタという音を一人聞きながら、秋の夜長に縫い物を

している。ミシンの音も、手元を照らす灯りも、まるで夜汽車のようであ

る。優しい女性像が描かれている。(高橋正子)


19日(木)

しみじみと十五夜の月観て寝ねり/堀佐夜子



十五夜の月の光りが、体にしずかにしみ込んでいる。「しみじみと」にそ

れが感じられ、ほんとうにいい月である。(高橋正子)


20日(金)

群生を少し離れて曼珠沙華/平川康子



このように咲く曼珠沙華もある。群生し、あかあかと燃える曼珠沙華に離

れて、別世界のように咲いている曼珠沙華の姿である。俗をはなれて、さ

んさんと輝くものの世界を見るようである。(高橋正子)


21日(土)

奔放に高さ競いて芦の花/石井信雄



静かな芦の花にも、奔放で、競いあうような時がある。静かな花の、自由

な奔放さは、愛すべきもの。聴こうとすれば、水音さえも聞こえて来る景

色。(高橋正子)


22日(日)

手水舎に小鳥つぎつぎ来ては去る/磯部勇吉



次々に水を飲みに来ては去る小鳥の楽しい姿がある。ほんの少しの水に乾

きを潤わせて足りる小動物の生き方がかろやかである。(高橋正子)


23日(月)

実椿を風が吹き過ぎ石畳/安増惠子



石畳に沿って植えられている椿だろうか。実が色づいて輝いている。それ

を風が吹き、通りすぎて行く風情は、捨てがたい。(高橋正子)


24日(火)

異国語も混じる埠頭の天高し/小原亜子



埠頭には、海の空もあって、心は広く開かれる。異国の言葉は、異国の人

たちの望郷の思いのようにも聞こえる。(高橋正子)


25日(水)

新藁を積みしトラック村下る/碇 英一



新藁を満載した農作業用のトラックが、村の坂道を下ってゆく。その姿を

見送る目に、新藁の色が、新鮮に映る。刻々に移ってゆく季節が詠まれた

。(高橋正子)


26日(木)

信濃路や陽をふっくらと稲架襖/八木孝子



信濃路という語がやさしく響く。稲架に架けられた稲が、静かに陽を吸っ

てふっくらして、あたたかく心休まる光景。(高橋正子)


27日(金)

流星の後も見ている沖の船/野田ゆたか



はるかなものを見ている心境がよい。沖の船の明かりも、流星の去った空

の星も同じ光りである。 (高橋正子)


28日(土)

秋風を集めて深し空の青/安田明子



秋風が、空に吸い込まれてかのようである。それだけ空は高い。吹く秋風

をすべて集めたら、どんなに深く青い空ができるのだろうかと思う。新鮮

で詩的な発想。(高橋正子)


29日((日)

オカリナや色無き風を染めて吹く/池田和枝



「風を染めて」という表現は、ポップスなどの歌詞に安易に使われている

のが多いが、この句では、オカリナの音色を上手く表している。オカリナ

が遠く響いているのである。(高橋正子)


30日(月)

秋天に風吹き通る文化祭/岩本康子



文化祭の日には、抜けるような青い空が広がったのでしょう。秋風も空高

くを吹きぬけています。文化祭が晴れやかな空気に包まれました。(高橋

正子)


31日(火)

手のひらの新米光りつつこぼる/藤田洋子



身近な生活を詠んで輝いている。いい生活である。(高橋信之)