27 28 29 30 31 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 |
白日のすすき金銀使いきり 金子孝道 真昼間のすすきの原が、天の持つ金と銀の絵の具を使いきって描か れたほど、金と銀の光りに輝いている。「使いきり」と言い切った ところが潔い。(高橋正子)
灯火親し手のひらに反る新書本 多田有花 ユニークな句だが、作者のいい実感が伝わってきて、リアルである。 情景が明らかなのでいい。(高橋信之)
秋蝶の溢れんばかりキャベツ畑 祝恵子 キャベツ畑には、「溢れんばかり」の蝶がいる。蝶の乱舞する美し さがある。キャベツ畑が童話的雰囲気をだしている。(高橋正子)
秋雨止めば空へ鳥湧く低きより 柳原美知子 冷えびえとした雨が上がって、鳥がつぎつぎ空へ飛び翔ってゆく 。「低きより」は、小鳥の力強さである。(高橋正子)
晴れわたる峡をゆっくり鳥渡る 脇美代子 晴れて澄みきった峡の空を、ゆっくりと押し渡ってゆく鳥の姿は、 いつ見ても感動的である。(高橋正子)
秋しぐれ雲間に深き青湛え 岩本康子 秋の時雨は、日が差していたかと思うと、にわかに曇って白く 降 り始める。雲の間にまだ深い青空の青があるというのに。こ んな 自然現象には、人間の知の領域をはるかに越えたものがあ るよう な気がする。(高橋正子)
立冬の部屋の香となる焼き林檎 戸原琴 焼き林檎は、寒い国や地方の食べ物として思い浮かぶが、寒さの訪 れに林檎を焼いて、部屋にその香を満たし、ゆたかな時間を過ごす 。「立冬」が、冬の始まりだけにその感が強い。(高橋正子)
落葉踏む音の高さに振り向きて 大石和堂 自分の踏む落葉の音に、思わず後を振り返ることがある。落葉を踏 んでいるところが、自分の世界であることを知る。(高橋正子)
初鴨の水掻く足の浅黄色 石井信雄 今年初めて鴨に出会った新鮮な気持ちが、とてもいい。初冬の 水 の景色が、透明感を持って描かれた。水を掻く浅黄色の足が 、か わいくさえ思え、印象的である。(高橋正子)
白菜をばっりと割きて陰干しに 能作靖雄 白菜を割けば、ばりっと音がして新鮮そのもの。清冽な句。白菜 漬けの用意だろう。並べられた白菜も清らか。(高橋正子)
残る葉も積もる落葉も日の中に 藤田洋子 「日の中に」あって、いい風景である。共生する幸せを思う。 待 てば、日の光は、すべてを照らし、すべてを輝かしてくれる 。 (高橋信之)
池小春水浴びの鳥つぎつぎと 加納淑子 池小春が明るく穏やかである。「つぎつぎと」には、小春日の詠者 の、はずんだ明るい心がよく感じられる。(高橋正子)
野良猫の通う道あり石蕗の花 福島節子 野良猫の通う石蕗の道が、初冬の冷たさをよくあらわしている。野 良猫と石蕗を取り合わせた作者の感性にしなやかな個性がある。( 高橋正子)
初冬や馬房の寝藁を厚く敷き 安増惠子 冬が来たので、温かく眠れるように馬の寝藁を厚く敷いた。その藁 は、今年採れたばかりの、まだ青く清潔な藁であろう。やさしい心 遣いがいい。(高橋正子)
旅なれば十一月の雨軽し 野田ゆたか 旅のよさなのでしょう。、旅の身には、少し冷たい十一月の雨 も 、情緒のある雨となっています。これこそ、旅の心なのでし ょう ね。(高橋正子)
夜に落つかりんの実の恐ろしき音 冬山蕗風 夜の暗さに、花梨の実の色と大きさを思い浮かべて見ると、シュー ルな感じがしてくる。拳くらいの花梨の実が落ちる音は、「恐ろし き音」となるのである。鋭い感覚がある。(高橋正子)
連山の一つを近くに冬夕陽 岩本康子 自分のところから始まる連山の一つを、夕陽が照らし浮かして、寒 々とした景色のなかにも暖かさを感じさせてくれている。(高橋正 子)
遠く日の風吹き残る切り干しに 小峠静水 しなやかなリズムに叙情と確かな写生があって、心静かな晩秋の風 景が詠まれている。「遠く日の」で一息入れて読む。切り刻んだ切 干大根に遠くから日が差して、風も切干の間に残っているのである 。(高橋正子)
風吹けば日の輝きに落葉散る 安田明子 乾燥した冬の陽射しと、落葉が清潔で、句にきらめきがある。(高 橋正子)
蕪切り甘き香りの立つを知る 霧野萬地郎 「知る」と言い切ったところに作者の新鮮な感動があり、表現の素 直で平明なのがよい。(高橋信之)
片付けて四隅ありたる冬座敷 戸原琴 和室は、いろんな住まい方ができる。普段の部屋も、来客があると なとなれば、きちんと物を取り払って、凛とした座敷になる。冬座 敷の凛とした清潔さがいい。(高橋正子)
椋鳥(むく)渡り空の広さの定まりぬ 宮地ゆうこ 「椋」は木を指す。日常椋鳥のことを「むく」というが、俳句では 、「むく」と平かなで書くか「椋鳥」と書いて「むく」と読ませて いる。空の広さは、定め難いが、椋鳥が渡ると、空の広さの程度が 意識されるというのである。(高橋正子)
冬空を蹴ってブランコ水平に 日野正人 水平にまで、ブランコを漕ぐ元気な子どものたくましさが、冬空の 曇りを払いのけてくれる。力の湧く句。(高橋正子)
短日の早くもかげり星ともる 堀佐夜子 夕方の寒さが押し寄せると、日の短いことが、実感される。暮れた かと思うと、もう空には、明るくつぶらな星が灯っているのである 。(高橋正子)
黄落に市の賑わい染みにけり 福田由平 フリーマーケットや決まった日の市など、人々が、気楽に、賑やか に楽しめるのが、市の楽しさ。その賑やかさが、街全体を黄色く染 める銀杏などの黄葉に染みて渾然となる黄落期がいい。(高橋正子)
縁側に白菜ならべ陽のみどり 守屋光雅 「陽のみどり」は、感覚的な捉え方で、高い精神を感じます。白菜 に当たる陽が、清浄なまでに輝いています。(高橋正子)
石蕗咲くや朝に大きく生き生きと 碇 英一 石蕗の花は、冬の季語で、初冬の庭に「大きく生き生きと」である 。秋の花々が途切れた頃の庭を楽しませてくれる。(高橋信之)
日向ぼこ人それぞれに日を頒つ 小峠静水 一人ひとりの日向ぼこに射している暖かい日光。その光は、みんな に分けられて、大きな太陽から届いている。心の隅まで暖められる 句。(高橋正子)
たっぷりと白菜を切り鍋に盛る 吉田 晃 平明で、無駄な言葉がない。種も仕掛けもない。身近な生活を詠ん で佳句。(高橋信之)
地下街を出れば冬芽が夜空指す 古田けいじ 名古屋の地下街であろう。「地下街」は、現代社会の典型的な生活 様式で、「夜空」の「冬芽」は、その対象にある。都会の真っ只中 に在って、自然の生命を見逃さないのが嬉しい。(高橋信之)