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腕まくりして迎えたる十二月/岩本康子 何事にも前向きな作者。一年の締めくくりの月を迎えた 心意気が伺えます。(野田ゆたか)
冬木立あちこち巣箱現るる/相沢野風村 すっかり葉を落とした木立に、高々と現れたのは巣箱。 葉が茂っていたときは隠れていたものが現れて、意外に も楽しい光景となった。冬の明るさがよい。(高橋正子)
レモン一つ冷たき丸さ渡される/碇 英一 「レモン」である前に「冷たき丸さ」。感覚的で好きな 句です。(宮地ゆうこ)
蓮枯れて枯れゆく山の映るのみ/金子孝道 枯れてゆく蓮の水に、枯れてゆく山が映って蕭条とした 景色だが、景色がよく澄んで緊張感がある。一旦は枯れ るものに再生の力がしっかりと準備されていることが伺 える。(高橋正子)
冬の虹隠岐の海より立ちあがる/加納淑子 「立ちあがる」虹は、片虹であろう。その虹によって隠 岐の海が寒々と、見えぬ水蒸気が上がっているように感 じられる。深い余情がある。(高橋正子)
落ち口の注連縄けぶる冬の那智/石井信雄 冬の那智の滝の、清浄な感じがよく表されていますね。 寒さの中にも、滝の水が、命あるもののように生き生き として感じられます。(高橋正子)
カレンダー一枚となり冬座敷/冬山蕗風 作者の思いが静かに伝わってくる。過ぎ去った一年の思 いが「カレンダー一枚」に残された。(高橋信之)
髪洗う耳に木枯し届きけり/多田有花 髪を洗うときに耳の辺りが一番ひんやりするが、そこに 木枯らしが吹く音が届いた。「耳に届く」は、リアル。 季語は「木枯らし」。(高橋正子)
しなやかに立つマヌカンの赤マフラー/平野あや子 「マヌカン」はマネキンのことで、フランス語。よく見 かける街の風景であるが、うまく言葉に乗せた。(高橋信之)
顔ほどの冬日と歩き暮れてゆく/宮地ゆうこ 上五の「顔ほどの」は、従来の俳句にあまり見られない 表現だが、「冬日」を身近に引き付けたので、現代風で リアルな俳句。(高橋信之)
障子開け日本海を近づける/大給圭泉 旅の宿であろう。障子を開けたときに見えて、自分に迫 る冬の日本海への新鮮な驚き。その驚きが読む者をそこ へ連れて行ってくれる。(高橋正子)
山を出づ冬月大きく真正面/池田多津子 山を出たばかりの月が煌々と輝いて、真正面にあるとい う感動が大きい。秋の月よりも厳しく澄んでくる冬月が 、心の内まで照らしているようである。(高橋正子)
森騒ぐ音の近けり北風吹く夜/おおにしひろし 耳を良く澄ませ、気持ちを一つの方向に向けた詩情のあ る句。北風の吹く音に、生きている森を感じた。(高橋正子)
白息を集めて手配師点呼取る/野田ゆたか 生きていくことのギリギリの営みが寒さの中の白息に表 れています。(碇 英一)
ゆらぎつつ澄みつつ冬の泉湧く/吉田 晃 冬の泉が、澄んでいながらも動きあるものとして、律動 的に詠まれている。(高橋正子)
白菜の内なる白を光らせる/古田けいじ 白菜の清冽さを、うまく表現した。冬の輝きである。内 に秘められたものを見たのである。(高橋信之)
混ぜ合いの暮らしの音や十二月/霧野萬地郎 忙しさの中にも楽しさがあるのがいい。(高橋信之)
冬の夜のオリオンを背に風見鶏/安増惠子 「風見鶏」に絞られている焦点がいい。「冬の夜」のひ ろびろとした世界に心を遊ばせた。(高橋信之)
冬遍路笠に朝日をもらいつつ/日野正人 早立ちの遍路は、上から差す朝の日を先ずもらう。遍路 笠は、その形から日を滑らせるように受ける。「もらう 」は、遍路の身であれば、なおさらの感慨。(高橋正子)
南天の実を密にして日を弾く/藤田洋子 南天の実の輝きが、確実に詠み込まれている。「密」「 弾く」が、写生の確実さ、観察の確かさを伝えている。 (高橋正子)
大根に水切る如く刃を入れる/戸原琴 みずみずしい大根を切る感触を、このように「水切る如 く」と言った。大根の太さ、みずみずしさは、やはり冬 の季節のもの。
柚子風呂を沸かしなさいと一抱え/碇 英一 やや押し付けがましい行為だが、思いやりのある行為。 こういわれると、柚子風呂をたてなければならない気に なる。それが、無病息災につながるのだから、いいでは ないですか。口語が面白い効果を出している。(高橋正子)
日々冬菜茹でてみどりを滴らす/柳原美知子 毎日の台所仕事の中での楽しみですね。(脇 美代子)
聖イヴの大き絵本を子に広げ/高橋正子 クリスマスにふさわしい絵本は、いくつもあると思うが 、ここに広げた絵本は、「てぶくろ」というロシア民話 の話だと記憶している。幼い子が、脚など伸ばして、大 きな絵本を読んでいる姿は、かわいらしい。
クレソンは霜に焼けつつ色をなし/守屋光雅 クレソンは、ステーキや、サラダなどに添えられ、西洋 三つ葉とも言われて、独特の香気とピリッとした辛い味 が魅力の野菜。濃い緑色は、霜に当たって、一層濃くな る。霜の朝のきりっとした清々しさがよいと思います。 (高橋正子)
澄み渡る冬の日の一面の大空/福田由平 自然の大きさは、何のこだわりもなく、曇りなく広がっ ている。そこを捉えた作者の心も、大きく、透明になっ ているのである。(高橋信之)
大屋根を木枯し越えて雲に入る/大石和堂 大きく吹く木枯しが、空間の大きさ、高さ、広さを十分 感じさせてくれている。木枯しの行方を雲としたのは、 一見平凡なようだが個性的。(高橋正子)
大根を包む新聞濡らしけり/堀佐夜子 「新聞濡らしけり」は、大根のみずみずしさを言い換え てほかならない。水対する感覚といえるかもしれない。 いきいきして、フレッシュである。(高橋正子)
音全て寝静まりてより霜たてり/小峠静水 霜が立つとは。寝静まった大地が冷えて、霜がむっくり 起き上がる。冬の夜の静けさと冷たさを感じました。 (古田けいじ)
冬晴れや大利根太く河口まで/小原亜子 利根川に沿って行ったのであろう。空もよく晴れて、利 根川も坂東太郎というだけに、堂々と流れていて力強い 。句が巧まず、堂々としているのがよい。(高橋正子)
ここでも子ら笑う大晦日の湯舟/高橋信之 自句自解 昭和45年の作。この頃の借家には浴室がなく、誰もが 銭湯に出かけた。この句に出会うと、その日の情景があ りありと浮かんで、子ども達の笑い声が聞こえてくる。 懐かしい思い出の句。