月別季語集/野田ゆたか作成
水煙ネット月間賞
俳句日記1月


■俳句カレンダー/2003■

【1月】

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1日(水)/元日

初明りしたまいて慈母観音像 川本臥風

「初明り」という美しい言葉で新年の清らかさを教えてくれて
います。また「寒清し床に白磁の観世音」という句もあって臥
風先生の心の向かう先が念仏の世界で、これは先生の身ほとり
にある世界のことでした。(高橋正子)


2日(木)

風吹いて正月二日となる夜に 高橋信之  

自句自解 
元日の夜は静かである。家族も寝静まると、なお静かになる。
ひとりの刻の 充実に浸り、少しの風音にも聡くなる。


3日(金)/新月

誕生日正月三日の眉月に 高橋正子  

自句自解 
誕生日と言っても、正月三日なので特に感慨はない。眉月が印
象に残っただ けの、ただそれだけの誕生日だった。


4日(土)

青空や都心四日の潔さ 霧野萬地郎   

初仕事であろう。新世紀の新年である。仕事に向かう作者の姿
勢が快く伝わ ってくる。(高橋信之)


5日(日)

下校児の竹馬に夕日ひかりけり 加納淑子
 
眼がいい。しっかりと見ていて、詩がある。(高橋信之)


6日(月)/小寒

葉牡丹の渦引き締まる明けの空 藤田洋子

葉牡丹の渦が、引き締まるような明け方の空。また逆に、寒冷
な空気と曙光が、そのまま葉牡丹となったような朝。身の引き
締まる朝である。(高橋正子)


7日(火)/七草

雪原に一戸を守る屋敷林 河ひろこ  

厳しい雪国の様子を想像しています。美しいこの風景も寒さと
風の厳しさを物語るのでしょう。地吹雪といい、その怖さを知
らない南国育ちは想像して止みません。体験して見たい等、少
し不謹慎でしたでしょうか。(脇美代子)


8日(水)

池真中寒鯉の居てそこに空 守屋光雅   

作者の視線は、風景の「真中」に絞り込まれている。作句の心
が集中されているのである。そして、ひろびろとした「空」が
ある。広がりがある。(高橋信之)


9日(木)

白菜の水の重みを一枚剥ぐ 日野正人
 
白菜の真を捉えた。「剥ぐ」のは、「水の重み」である。白菜
が瑞々しい。俳句が瑞々しい。(高橋信之) 


10日(金)/上弦

峡晴れて冬菜のつやの輝やけり 冬山蕗風
 
「冬菜のつや」を中心に、辺りすべてが「輝けり」という景色
になっている。しずかなものが輝く深さがよい。(高橋正子)


11日(土)

ラガーらの声押し戻し生駒山 野田ゆたか

花園ラグビー場であろうか。「押し戻し」にラグビーの緊張感
があり、季節の緊張感がある。(高橋信之) 


12日(日)/奈良若草山山焼き

葱太く畝真っ直ぐに清潔に 堀佐夜子

すべてが前向きである。冬にである。(高橋信之)


13日(月)/成人の日

白菜の真二つに割かれ干されおり 祝 恵子   

作者の軽い驚き。日常の軽い緊張は、生活の励みとなって、生
き生きさせて くれる。疲れない軽い緊張がいい。(高橋信之)


14日(火)

空風に角張りて干す潜水着 平野あや子
 
漁を終えて、肩を持ち上げるように干された潜水着だろうが、
その角張った独特な形の形容が目に楽しい。潜水着を脱いだ人
は、しなやかな人間の肉体だろうし、その対比も面白い。季語
「空風」がよく効いている。(高橋正子)


15日(水)/小正月

たっぷりの真水に冬菜解かれけり 脇美代子
 
冬菜を洗う水だけれども、たっぷりの真水なので、はやも水が
温んでくるような感じがする。冬菜の緑が水に放たれ、安堵の
ように洗われている。(高橋正子) 


16日(木)/やぶ入り

風に立ち冬芽しっかり銀を巻く 山野きみ子
 
テーマは「冬芽」。冬芽にもさまざまあるが、「銀を巻く」芽
に、春が確かに近付いていることを予感させてくれ明るさがあ
る。(高橋正子)


17日(金)/土用入り

湧水の冬草洗い流れゆく 守屋光雅 

湧いては流れてゆく水が、冬草を洗い、越えてゆく。湧水だか
ら、辺りの温度より幾分かは、温みがあるかもしれない。水が
いきいきとして、輝いている。厳寒のなかの生き生きとした水
の活動がよい。(高橋正子) 


18日(土)/満月

立ちしものに光りを注ぎ冬満月 碇 英一   

月光が、はるかより届き、さえざえと地を照らしている。丈高
いものは、降り注ぐ月光を受けて浮びあがり、月と地の間に澄
み渡った世界を作っている。「光を注ぎ」が、よい。(高橋正
子)


19日(日)

丸餅になって蓬のいい匂い 吉田晃

ひとつひとつ丸められた蓬餅になって、いっそう生き生きと香
る蓬の匂いを、いい匂いというほかはない。(高橋正子)


20日(月)/大寒

水色のマフラー孫のプレゼント 斎藤のぶこ
 
とても若々しい色のマフラーで、お似合いのことでしょうね。
(高橋正子)


21日(火)

玻璃越しに大寒の空ゆたかなり 小原亜子

雲の多さ、空のひろがりなど、大寒の空の大いなるゆたかさで
ある。部屋内の暖房に居ての感受であろう。(高橋正子)


22日(水)

靴跡を浅く残して雪止みぬ 河ひろこ

雪に残る靴跡に、また雪が降って止んだけれども、靴跡は埋ま
りきらずに、浅くやわらかに残っている。雪は、物語るように
やさしく降って止んだのであろう。(高橋正子)


23日(木)

水仙の茎青々とガラス器に 岩本康子

水仙の真っ直ぐな青い茎。ガラスの花器に透ける「青」という
色が、大変に美しい。茎の先には、水仙の花がもちろんあるこ
とだろうし、その香気だけを暗示して、茎の青を印象づけてい
る。(高橋正子)


24日(金)

転舵して檣灯冬潮に大きく傾ぐ おおにしひろし
 
破調だが、クラッシックな俳句の趣きがある。転舵(てんだ)
に傾ぐマストの灯が、冬潮に映り、また潮に点る灯りが心象に
残る。「傾ぐ」に作者と対象との一体感がある。(高橋正子)


25日(土)/下弦

暖房が止まりて軋む椅子の音 龍造寺規谷

かすかな暖房の音が止まって気付く椅子の音。座っている椅子
の音は、人によって作り出される。その音を鋭敏によく聞き届
けた。(高橋正子)


26日(日)

山茶花の花こぼしつつ咲きつづき 大給圭泉

ありのままを、今感じるそのままの心で詠んでいて、余分も不
足もない、つつましくていい句ですね。(高橋正子)


27日(月)

冬耕の土藁しかと鋤き込まる 河勝比呂詩
 
「しっかりと鋤き込まる」に、田を打つものの力がある。風に
晒された土に、藁が鋤きこまれ、土が生き、温かさがあるよう
に感じられる。(高橋正子)


28日(火)

群れ来たりまた大空へ寒すずめ 石井信雄

雀が群れて来て、また大空へ羽ばたいてゆく寒雀の無邪気さ。
自然の中で自由に生きる雀に、心を寄せている作者の心こそが
「大空へ」開かれている。(高橋正子)


29日(水)

真白き障子のそばでアンネ読む 野仁志水音
 
光を白く透す障子のそばで、日本の少女が「アンネの日記」を
読んでいる姿に共感を呼びます。(高橋正子)


30日(木)

冬オリオン街に明かりを滴らす 藤田荘二

オリオン座の星の一つ一つが、寒空に輝き、その明かりが滴り
おちている感じの夜である。「滴らす」によって明りが浮き上
がり潤った。(高橋正子)


31日(金)

大寒の夜のウインナを熱く茹で 多田有花

ごくごく身近な事柄を、句にして楽しそうだ。冷え込みが厳し
い大寒の夜は、ウインナソーセージを、熱くして食べたい。寒
い夜が暖かくなる。(高橋正子)