▼月別季語集/野田ゆたか作成
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▼俳句日記4月
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辞令書の白き重みや花吹雪 日野正人 作者の強い実感がいい。いい生活からいい俳句が生まれる。(高橋信之)
山風を聞くかたくりの花の蕊 石井信雄 俯き加減に花弁を反らして咲く、かたくりの花の自生の姿を眼前にするよ うである。「山風を聞く」に、対象を静かに聞き届けようとする姿勢が読 み取れる。(高橋正子)
初蝶の羽を休めて影を持つ 野田ゆたか 「初蝶」の静かに力を溜めている様子がいいですね。(高橋信之)
指で芽を確かめながら薯植うる 今井伊佐夫 種薯の芽は、目では確かめ難いものもある。指に触れてその感触で芽の場 所を確かめておいてうまく植え付けると、しっかりと芽を出す。人間のあ たたかさを感じさせてくれる句。(高橋正子)
ふるさとの海の暗さや達治の忌 安丸てつじ 達治の詩を思い起こさせる佳句である。大阪生まれの三好達治は詩人とし て著名。その忌日は、4月5日である。(高橋信之)
大干潟二つ重ねて海きらめく おおにしひろし 「海きらめく」にリアルな感情があって句が生き生きしている。下五の字 余りが効いた。「大干潟二つ重ねて」は、詩のある風景である。(高橋信之)
真ん丸の夕陽を包む春の海 野仁志水音 春の海に入る真ん丸い夕陽がおおらかで、明るい。海が、沈む夕陽を洗っ て、やがては包みとってしまった。(高橋正子)
独活の根に湿り土つき売られいる 山野きみ子 根に土を付けた独活が生きいきとしている。「湿り土」をよく見てとった 観察眼がよい。「湿り土」は、独活が採られて間もないこと、生きている ことの証となっている。(高橋正子)
むきし独活真白く反りて水に匂う 馬場江都 独活のさくさくとした白が、放たれた水に反って匂い、料理をする手元が 見えるよう。独活の香りに、台所も春の気配に満たされる。(高橋正子)
崖下に妻を残してたらめ摘む 古田けいじ 「崖下に妻を残して」に、たらの芽の有り場所がよくわかり、その上妻へ の優しさがあって、読み手の私も、崖下で、無事たらの芽が摘まれるのを 、待っている感じです。(高橋正子)
尾根越えの風膨らむや竹の秋 霧野萬地郎 植物が盛んに燃える季節、黄ばんで竹の秋を迎えている竹ばやしは、尾根 を越える風を孕んで、ひとところ目立った存在である。「風膨らむ」が、 凋落の時を豊かに生きる竹の姿をよく言い得ている。(高橋正子)
囀りと朝日背にして今朝の道 安田明子 朝の出勤の爽やかな気持ちが、よく出ている。囀りとあたたかい朝日を背 にして、今日も一日はつらつと働けることは、うれしい。(高橋正子)
藤の花垂るれば風の走りけり 加納淑子 藤の花房が垂れて、房の先を、風がさらさらと漣のように通り過ぎる様子 が、「風の走りけり」である。藤の花いろと、光の感じをはっきりと思い 浮かばせてくれるいい光景である。(高橋正子)
四月暑し大樹の下の子守唄 堀佐夜子 作者の心の姿がいい。「子守唄」が聞こえ、「大樹の下」は、充分な世界 である。(高橋信之)
シャボン玉虹を包みて飛び去りぬ 都久俊 シャボン玉が、風に包み取られるように、輝きながら吹かれて飛び去った のである。「虹を包みて」に、それが感じられ、自然な心の動きがよい。 (高橋正子)
香を放つ高き梢の朴の花 右田俊郎 強い芳香が、人にまで届く。見上げると高い梢に朴の花が咲いている。津 軽の朴の花であろうか。そんな雰囲気をもった句である。(高橋正子)
差し出した両手にあふるつくしんぼ 池田多津子 「つくしんぼ」を詠んで、口語表現が生きた。「両手にあふる」に偽りが ない。(高橋信之)
玄関を全開にして今四月 河ひろこ 雪の生活から解放されたあとの、四月は本当にうれしいのだろう。玄関を すっかり開け放って、湿気なども追い出して、四月の今をを満喫する。心 が開かれる句である。(高橋正子)
永き日の野辺の日時計正午指す 平野あや子 「永き日」「野辺の日時計」「正午」のどの言葉にも、長閑な明るさがあ って、言葉と気持ちがよく一致している。日ごろ親しんでいる時計なので あろうか。(高橋正子)
鳥曇り私鉄沿線ストライキ 小峠静水 社会性のある句で、季語「鳥曇」に詩がある。「鳥曇」の後の切れがいい 。(高橋信之)
お遍路の鈴はればれと山をゆく 下地 鉄 お遍路さんの鳴らす鈴の音が、「はればれと」しているのがよい。はれば れとした心である。平坦な地ではなく、山道であるから、お遍路さんも、 通りすがりの作者も、心の深いところで触れ合って行き違ったのであろう と思われる。(高橋正子)
田を鋤けば水の流れの新しき 宮地ゆうこ 的確な写生で、それが幸いして新鮮である。生産的で、いい生活から生ま れた。(高橋信之)
灯台の礎石も濡れて春の霧 安増惠子 海はすっかり霧なのである。灯台を支える礎石は、不安定な岩の上などに 築かれるが、この句は海とそのあたりの様子を見せてくれている。灯台の 白と、春霧の海とは、内面を映す景色であろう。(高橋正子)
香りくる木の芽美しちらしずし 藤田洋子 「木の芽美し」が、風のある明るい春をよく言いえていると思います。こ の感覚は、洋子さん独特のうるおいのある感覚と思います。(高橋正子)
種芋の網に包まれ芽ぶく店 祝 恵子 「芽ぶく」ものの発見である。日常でのうれしい発見である。(高橋信之)
蒔いてすぐ土に紛れし花の種 脇美代子 花の種は小さいものが多いが、土に蒔けば、すぐどこに蒔いたかわからな くなる。土に紛れてしまって、蒔いた間隔も、すじも見極めがたくなる。 花種を蒔くときのささやかな感想である。(高橋正子)
みちのくの花曇抜け隅田川 守屋光雅 みちのくは、今花のとき。旅立つ日は、高い曇り空。その曇り空を抜け出 て着いた東京の隅田川。隅田川をこの目で見た、たしかな嬉しさが伝わっ てくる。(高橋正子)
春陰のどの地下口も入り易し 高橋正子 桜の咲くころのやや冷え冷えとして、曇りがちな空模様は、過ごしやすい 。「春陰」である。「地下口」は、都心の地下鉄への入り口であろうが、 「春陰」ならば、なお「入り易し」である。、「春陰」は、語感の違いが あるが、「花曇り」と同義。(高橋信之)
風に揺れる高さとなりて今年竹 加納淑子 すっくと伸びてきた今年竹が、葉を開き風を受けて揺れるようになった。 目にしなやかで、さわやかな今年竹の姿がいい。(高橋正子)
鳶飛ぶ春の空気を胸にだき 斎藤のぶこ 春になって、気持ちよさそうに空を舞う鳶の姿を目にし、晴ればれとした 気持ちになる。「空気を胸に抱き」に、春の空気の心地よさを感じる。 (高橋正子)