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鮎匂い鮎の山河を恋いわたる 川本臥風 鮎の生態をあますところなく表現した臥風先生の代表句。鮎は生ま れた川の匂いをたどって上ってくる。豊かな水と緑したたる山河は 日本の夏の始まり。(高橋正子)
噴水や水無き空に立ち生まる 片平奈美 無機質と言わないまでも空には水がなく、今日の空は高い。そんな 空に水が噴き上がり、噴水として生まれた。面白い視点である。 (高橋正子)
ひらひらと午後の明るき竹落葉 多田有花 「竹落葉」を明るく捉えたところが若々しい。「ひらひらと」に透 明感があって、句の世界が広がった。(高橋正子)
むすび食う青嶺に雲の流れ来し 霧野萬地郎 おむすびの白と、青嶺の青の対比が、爽やかで夏らしい印象である 。「雲流れ来し」が、やすらいだ気持ちを表現して、夏山のトレッ キングの楽しさを味あわせてもらえる。(高橋正子)
一本の線にきりりと筆涼し 山野きみ子 書の線が、きりりとしていれば、涼しさとなる。墨の色も涼しい 。簡潔な表現がそれらをよく感じさせてくれる。(高橋正子)
青萩に埋もれて計る検針員 河 ひろこ 青萩がふさふさと茂る中に入って水道メーターの検針するのが、今 月である。夏の茂りがゆたかで心地よい。(高橋正子)
ギブス外し手の涼しさに指をおる 平野あや子 「指をおる」に、うれしさがある。「涼しさ」に開放感と、ほっ そりした手が思い浮かぶ。(高橋正子)
ねむの花めざめて真青なる空に 祝 恵子 原句は<真青なる空にねむの花はめざめ>であるが、基本の写生 が大事なので、「めざめ」を中七に移した。「ねむの花」と「真 青なる空」との対比を明らかにさせ、青空に咲くねむの花を印象 づけた。(高橋正子)
信号機青に変わりて夏木立 青海俊伯 夏木立の間に、瞬間、青に変わった信号灯が涼しそうである。(高橋正子)
竹涼し青き日差しの幾筋も 堀佐夜子 「すずしさ」というのは、こういうことを言うのであろう。精神的 な涼しさへとつながっているところが、凄い句である。(高橋正子)
郭公啼くどこまでも見え駒ヶ岳 守屋光雅 どこまでも見える駒ケ岳は、やはり、盛岡から見える駒ヶ岳であろ う。駒ケ岳から八幡平へはるかに続く山並みがこの日は望めて、郭 公の声が夏の幸せのようにひびく。駒ケ岳の青い色が芳しい。(高 橋正子)
はっきりともの言いたき日のグラジオラス 安増惠子 グラジオラスの明快な色と形は、「はっきりとものを言いたい」と いう思いを肯定してくれそうである。(高橋正子)
つゆ晴間樋のたわみを修復す 野田ゆたか 梅雨の晴れ間に、樋のたわみを修復し、大雨にも十分備えられるよ うにした。家はこまめに修理すると、気持ちよく住める。こんな暮 らしぶりがいいと思おう。(高橋正子)
夏雲の樹間の空を次々と 馬場江都 夏雲と、樹と、空と。この三つによって作られるイメージが、明快 で、さわやかな夏が描き出されている。雲が次々動いて、しんしん とした青い空を感じさせてくれる。(高橋正子)
梅熟れる香りの中に今日を寝る 古田けいじ <今日は>を<今日を>とした。限定の「は」は詩情を削ぐ、から である。(高橋信之)
てのひらに豆腐きりわけ朝涼し 宮地ゆうこ 日常の季節感がすばらしいと思います。包丁の刃がてのひらに触れ る涼しさも感じます。(霧野萬地郎)
梅雨晴れて路の白線北に向く 相沢野風村 「北に向く」は、梅雨晴れの日差しを南から明るく受けて、道路の 白線が北の方向に伸びている印象を言ったもの。車などを運転して いて感じたことだろうが、梅雨晴れの明るさと「北」のもつ抒情が うまく交じり合っている。(高橋正子)
海の上(え)に夕陽高かり夏至近し 岩本康子 夏至が近くなると、日が入るのが当然遅くなる。「夕陽高かり」は 、海の上に高々とある夕陽に対して、明るく高揚した気持ちを詠い あげている。(高橋正子)
さくらんぼ軸を結べば雨の音 多田有花 うっとしいこの頃、可愛らしいさくらんぼを直ぐに食べられなくて 、雨の音を聞きながら軸を結んでいる有花さんを想像しています。 (堀佐夜子)
岩一つ滴り通す水の音 小峠静水 滴りが、冷たく澄んで、一徹に滴り通すところに、意志の強さを感 じる句。(高橋正子)
夕涼に轡外して馬放つ 碇 英一 夕方の涼しさに、轡を外された馬が勇んで走っていく姿がいい。自 由と躍動がある。(高橋正子)
駅発車夏至の空指す白手袋 柳原美知子 車掌さんの白手袋、盛夏真近の午後のホーム、見慣れた風景にも詩 があります。(安丸てつじ)
峯雲へクレーン仰角大きくす 相沢野風村 真っ白く湧きあがる雲に、作者を仰がせるほど、クレーンが腕をぐ ーんと伸ばしていく様子がさわやかで、気持ちが開かれてくる。仰 角という用語が新鮮。(高橋正子)
雨上がり鉄砲百合の同じ向き 岩本康子 鉄砲百合がかたまって咲くのを見れば、同じ方向を向いて咲く花の 不思議に、誰だって驚かされているに違いない。それが雨上がりな ら、雨滴をつけた花の姿がますますリアルになって、意識の内に、 一叢の白百合の世界が確として生まれる。(高橋正子)
六月の落暉涼しき丸さかな 碇 英一 「涼しき丸さ」が、六月の太陽を見事にあらわしていると思う。暑 い一日の終わりの夕日を涼やかに感じれる心境がいいと思う。(高 橋正子)
トマト摘む手にも肺にも青き匂い 太田淳子 トマトを摘み、トマトの木に触れれば、トマト独特の強い、青を感 じさせる匂いに包まれる。手にも青臭さが残り、肺までも青い匂い に満たされる。トマト畑に自分の世界がつくられて、たのしい生活 がある。(高橋正子)
朝風に一度に動く夏木立 小原亜子 涼しい朝の風がひと吹きすると、木々の葉が一様に揺れる。葉騒も すずし気である。夏木立が、若若しい感性で捉えられている。(高 橋正子)
葛切りもグラスも透けるティータイム 霧野萬地郎 洒落た感覚の俳句ですね。葛餅もグラスも本当に涼しげです。ティ ータイムという言葉がいきいきとして、いいティータイムだったこ とが伺えます。(高橋正子)
梅の実の陽の色つけて匂いけり 磯部勇吉 梅に熟れ色がついて、いい香りがしている。梅雨の「陽の色」がい い香りを実感させてくれる。(高橋正子)
黒南風や暮るる山並み黒々と 安丸てつじ 梅雨時の南風が、黒南風。多くを語っていない句だが、南風が吹い て、黒々と暮れてゆく山並みにしみじみとした思いが湧く。(高橋 正子)