むかしの俳句カレンダー
俳句日記
BBS/さら句会


■俳句カレンダー/2003■

【6月】

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1日(日)/あゆ漁解禁

鮎匂い鮎の山河を恋いわたる  川本臥風
 
鮎の生態をあますところなく表現した臥風先生の代表句。鮎は生ま
れた川の匂いをたどって上ってくる。豊かな水と緑したたる山河は
日本の夏の始まり。(高橋正子)


2日(月)

噴水や水無き空に立ち生まる  片平奈美

無機質と言わないまでも空には水がなく、今日の空は高い。そんな
空に水が噴き上がり、噴水として生まれた。面白い視点である。
(高橋正子)


3日(火)

ひらひらと午後の明るき竹落葉  多田有花

「竹落葉」を明るく捉えたところが若々しい。「ひらひらと」に透
明感があって、句の世界が広がった。(高橋正子)


4日(水)

むすび食う青嶺に雲の流れ来し  霧野萬地郎

おむすびの白と、青嶺の青の対比が、爽やかで夏らしい印象である
。「雲流れ来し」が、やすらいだ気持ちを表現して、夏山のトレッ
キングの楽しさを味あわせてもらえる。(高橋正子)


5日(木)/世界環境デー

一本の線にきりりと筆涼し  山野きみ子

書の線が、きりりとしていれば、涼しさとなる。墨の色も涼しい
。簡潔な表現がそれらをよく感じさせてくれる。(高橋正子)


6日(金)/芒種

青萩に埋もれて計る検針員  河 ひろこ

青萩がふさふさと茂る中に入って水道メーターの検針するのが、今
月である。夏の茂りがゆたかで心地よい。(高橋正子)


7日(土)

ギブス外し手の涼しさに指をおる  平野あや子

「指をおる」に、うれしさがある。「涼しさ」に開放感と、ほっ
そりした手が思い浮かぶ。(高橋正子)


8日(日)/上弦

ねむの花めざめて真青なる空に  祝 恵子

原句は<真青なる空にねむの花はめざめ>であるが、基本の写生
が大事なので、「めざめ」を中七に移した。「ねむの花」と「真
青なる空」との対比を明らかにさせ、青空に咲くねむの花を印象
づけた。(高橋正子)


9日(月)

信号機青に変わりて夏木立  青海俊伯

夏木立の間に、瞬間、青に変わった信号灯が涼しそうである。(高橋正子)


10日(火)/時の記念日

竹涼し青き日差しの幾筋も  堀佐夜子
「すずしさ」というのは、こういうことを言うのであろう。精神的
な涼しさへとつながっているところが、凄い句である。(高橋正子)


11日(水)/入梅

郭公啼くどこまでも見え駒ヶ岳  守屋光雅

どこまでも見える駒ケ岳は、やはり、盛岡から見える駒ヶ岳であろ
う。駒ケ岳から八幡平へはるかに続く山並みがこの日は望めて、郭
公の声が夏の幸せのようにひびく。駒ケ岳の青い色が芳しい。(高
橋正子)


12日(木)

はっきりともの言いたき日のグラジオラス  安増惠子
グラジオラスの明快な色と形は、「はっきりとものを言いたい」と
いう思いを肯定してくれそうである。(高橋正子)


13日(金)

つゆ晴間樋のたわみを修復す  野田ゆたか

梅雨の晴れ間に、樋のたわみを修復し、大雨にも十分備えられるよ
うにした。家はこまめに修理すると、気持ちよく住める。こんな暮
らしぶりがいいと思おう。(高橋正子)


14日(土)/満月

夏雲の樹間の空を次々と  馬場江都

夏雲と、樹と、空と。この三つによって作られるイメージが、明快
で、さわやかな夏が描き出されている。雲が次々動いて、しんしん
とした青い空を感じさせてくれる。(高橋正子)


15日(日)/父の日

梅熟れる香りの中に今日を寝る  古田けいじ

<今日は>を<今日を>とした。限定の「は」は詩情を削ぐ、から
である。(高橋信之)


16日(月)

てのひらに豆腐きりわけ朝涼し  宮地ゆうこ

日常の季節感がすばらしいと思います。包丁の刃がてのひらに触れ
る涼しさも感じます。(霧野萬地郎)


17日(火)

梅雨晴れて路の白線北に向く  相沢野風村
 
「北に向く」は、梅雨晴れの日差しを南から明るく受けて、道路の
白線が北の方向に伸びている印象を言ったもの。車などを運転して
いて感じたことだろうが、梅雨晴れの明るさと「北」のもつ抒情が
うまく交じり合っている。(高橋正子)


18日(水)

海の上(え)に夕陽高かり夏至近し  岩本康子

夏至が近くなると、日が入るのが当然遅くなる。「夕陽高かり」は
、海の上に高々とある夕陽に対して、明るく高揚した気持ちを詠い
あげている。(高橋正子)


19日(木)

さくらんぼ軸を結べば雨の音  多田有花

うっとしいこの頃、可愛らしいさくらんぼを直ぐに食べられなくて
、雨の音を聞きながら軸を結んでいる有花さんを想像しています。
(堀佐夜子)


20日(金)

岩一つ滴り通す水の音  小峠静水

滴りが、冷たく澄んで、一徹に滴り通すところに、意志の強さを感
じる句。(高橋正子)


21日(土)/下弦

夕涼に轡外して馬放つ  碇 英一

夕方の涼しさに、轡を外された馬が勇んで走っていく姿がいい。自
由と躍動がある。(高橋正子)


22日(日)/夏至の日

駅発車夏至の空指す白手袋  柳原美知子

車掌さんの白手袋、盛夏真近の午後のホーム、見慣れた風景にも詩
があります。(安丸てつじ)


23日(月)

峯雲へクレーン仰角大きくす  相沢野風村

真っ白く湧きあがる雲に、作者を仰がせるほど、クレーンが腕をぐ
ーんと伸ばしていく様子がさわやかで、気持ちが開かれてくる。仰
角という用語が新鮮。(高橋正子)


24日(火)

雨上がり鉄砲百合の同じ向き  岩本康子

鉄砲百合がかたまって咲くのを見れば、同じ方向を向いて咲く花の
不思議に、誰だって驚かされているに違いない。それが雨上がりな
ら、雨滴をつけた花の姿がますますリアルになって、意識の内に、
一叢の白百合の世界が確として生まれる。(高橋正子) 


25日(水)

六月の落暉涼しき丸さかな  碇 英一

「涼しき丸さ」が、六月の太陽を見事にあらわしていると思う。暑
い一日の終わりの夕日を涼やかに感じれる心境がいいと思う。(高
橋正子)


26日(木)

トマト摘む手にも肺にも青き匂い  太田淳子

トマトを摘み、トマトの木に触れれば、トマト独特の強い、青を感
じさせる匂いに包まれる。手にも青臭さが残り、肺までも青い匂い
に満たされる。トマト畑に自分の世界がつくられて、たのしい生活
がある。(高橋正子)


27日(金)

朝風に一度に動く夏木立 小原亜子

涼しい朝の風がひと吹きすると、木々の葉が一様に揺れる。葉騒も
すずし気である。夏木立が、若若しい感性で捉えられている。(高
橋正子)


28日(土)

葛切りもグラスも透けるティータイム 霧野萬地郎

洒落た感覚の俳句ですね。葛餅もグラスも本当に涼しげです。ティ
ータイムという言葉がいきいきとして、いいティータイムだったこ
とが伺えます。(高橋正子)


29日(日)

梅の実の陽の色つけて匂いけり 磯部勇吉

梅に熟れ色がついて、いい香りがしている。梅雨の「陽の色」がい
い香りを実感させてくれる。(高橋正子)


30日(月)/新月

黒南風や暮るる山並み黒々と 安丸てつじ

梅雨時の南風が、黒南風。多くを語っていない句だが、南風が吹い
て、黒々と暮れてゆく山並みにしみじみとした思いが湧く。(高橋
正子)