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視野一面烏賊火連なる砂丘沖 太田淳子 鳥取砂丘の沖に、烏賊火が連なり、夏の夜の風物詩を繰り広げ ている。手前に砂丘、向こうに見渡す限りの烏賊火の沖を配し 、広く大きな景色が詠まれた。(高橋正子)
差し出さるなすの丸みを両の手に 祝 恵子 差し出された茄子は採れたてであろうが、丸みがちょうど良く 手に納まる。いい丸さである。また、手から手へ渡される人の 付き合いがあって、庶民のいい生活がうかがえる。(高橋正子)
窓からの涼しき風を受け学ぶ 野仁志水音 「学ぶ」が自然であり、素直で、実がある。窓から涼しい風を 受けて学ぶ日もあって、落ち着いた態度がよい。(高橋正子)
土用芽の赤きを叩く雨の日々 山野きみ子 土用芽の勢いに、木の生命力を知らされるが、赤い土用芽は、 柔らかで、つやつやとしている。日々の雨のなかでも、赤い芽 のいとおしく、印象に残る。(高橋正子)
蜩や静かに暮るる雲の色 今井伊佐夫 静かに暮れてゆく雲に、蜩の声が沁み通るようであり、心を雲 の通わせている作者の姿が読み取れる。「雲の色」に、作者の たゆたう思いがある。(高橋正子)
噴水立って音が生まれる朝の池 山中啓輔 朝早く、噴水が立ち始めるときを捉えた句で、静かな池の平面 から立ち上がって噴く水が、音を生んでいる。水の音であり、 噴水そのものの涼しい音である。夏の朝の静けさがよく捉えら れている。(高橋正子)
夕焼けの映える海面波高し 高橋秀之 夕焼けの海は、それでもうすでに美しいが、作者の心を高揚さ せるように波が高く打っている。波打つ夕焼けの海面が生き生 きとした動きをもって詠まれた。(高橋正子)
子らいまだ眠り立秋の空光る 高橋正子 自句自解 立秋の今日は、まだ夏休み。学校から抜けきって、子どもたち はぐっすり眠っているが、秋立つ日の朝は、浅黄色の空がうつ くしい。
終章は祈りの和音原爆忌 古田けいじ 自句自解 平和を願う合唱の終りは上手いハーモニーで終った。歌い手の 平和への祈りが天へ登って行く感じだった。
栗の毬日ごと日ごとのたくましき 堀 幹夫 栗の毬の日ごとに育ちゆく、弾けるような力が、季節の新しさ をよく伝えている。(高橋正子)
水に触れ水に映りて蜻蛉飛ぶ 高橋正子 姿と動きを表現するのは至難。トンボの軽快さ、リズミックな 動きも表現されています。(守屋光雅)
うまおいが来るパソコンの明るい部屋 吉田 晃 この状況は、本当にあかるくみずみずしいですね。現代の産物 であるパソコンの部屋に飛びこんできたみずみずしいもの、う まおいがかがやいています。ふと思ったのですが、哲学者や思 想家が、人間のことをいろいろいいますが、人間にとって、一 番大切なことは、「みずみずしい」ことではないかしらと。み んながみずみずしい心で暮らせたらいいなと思いました。(高 橋正子)
緩やかな水の流れてお盆くる 青海俊伯 お盆が来れば、「緩やか」でゆっくりとした時間になる。昔の 時間が戻って、時代の流れの中で失われかけた自分を取り戻す 。(高橋正子)
秋立ちて車中のきものいろいろに 河野 齊 「秋立つ」、その言葉にも秋を感じさせる作用がある。通勤の 人たちだろうか、気温の感じ方はそれぞれで、、思い思いに秋 めいた服装になっている。それが、「いろいろに」。(高橋正 子)
白桃が三つテーブルにある平和 古田けいじ 自句自解 友人が白桃をおすそ分けで持ってきてくれた。テーブルにそれ を置いた。今日は丁度、終戦記念日。小さくて余りよく覚えて いないが田舎で終戦の日のラジオ放送だけは覚えている。50 年以上戦争をしなかった日本も最近はなんだかきな臭い。
わが街の盆の花火へ機を降りる 吉田 晃 いい句ですね。「わが街」が生きています。(高橋信之)
盆過ぎの静けき居間の畳拭く 藤田洋子 畳を拭きながら充実感に浸っておられるのでしょう。今年もい いお盆だったのですね。今度みんなの健康な姿を見られるのは お正月でしょうか。日本の文化を大切にした生活をしておられ ますね。(吉田 晃)
海よりの風白かりき盆の過ぎ 岩本康子 お盆が過ぎると、やっと落ち着いた心持ちになる。吹く風もし らしらと感じられて、一夏の終わりを思う。新涼の季節がそこ まで来ている。(高橋正子)
朝市やぶどうの葉に乗せぶどう売る 戸原 琴 朝市で売られているぶどうの露けさが、「ぶどうの葉に乗せ」 で十分に詠まれている。ぶどうの葉の切れ込みや、少し枯れか けた色合いなど、絵心を誘われる。(高橋正子)
蜩や聲明と和す境内に 堀佐夜子 自句自解 幼いころ、祖母に連れられてよくあっちこっちのお寺に参り ました。子供ですので本堂の縁側で遊んでいますと、読経と 蜩の声が私には子守唄と感じられて何時しか寝てしまい、祖 母に起こされるまで夢うつつでした。
稲田の上を新幹線のすれ違う 相沢野風村 すっきりと広がる稲田の上を走る、新幹線のスピード感が爽快 。(高橋正子)
秋晴れに産着の真白風と揺れ 祝 恵子 なにをおいても、無条件に喜びたい静かな心境。「風と揺れ 」は、上手だと思います。「風に揺れ」でないところに、作 者の喜びが表され、生命の輝きを素直に詠っています。(高 橋正子)
山水のこぼれる葡萄の房置けば 吉田 晃 みずみずしい葡萄の房が見えてくるようだ。思わず手を出し たくなる。(高橋信之)
呼んでみるかなたの空の雲の秋 高橋正子 こんな風景に出会いながら作句できませんでした。正子先生 有難う御座います。とても好きです、この句。(堀佐夜子)
御岳の雲掃われて秋空へ 古田けいじ 懸かっていた雲が払われて御岳の雄姿が現れた。親しんでいる 山が、季節を新たにして、秋空にすっきりと聳え立つのがいい 。(高橋正子)
つくつくぼうし鳴くたび空色塗り替える 日野正人 心を日々新しく、心に新鮮な感動、なかなか出来ないことです が、この句に相応しい言葉です。いい句を読ませて頂きました 。(高橋信之)
群れおりてとんぼとんぼの高さなる 碇 英一 とんぼの群れを見れば、それぞれが自分の飛ぶ高さをもって、 かがやきながら水平に飛んでいる。それを「とんぼとんぼの高 さ」と言った。軽やかさがいいと思います。(高橋正子)
ふるさとの土間は凹凸ちちろ鳴く 古田けいじ しっかりした構成の句。自分の根源的な感情が、飾ることなく 表され、それが多くの人に通じる力強さのあるところがいいと 思います。(高橋正子)
秋天や留めるものの無き高さ 大石和堂 抜けるように青く高い秋天を、「留めるものの無き」と感じた 。留めるものとは、なんだろうと哲学的な問いが湧く。切り込 みが深い。(高橋正子)
小鳥来る清しさに明け子の発つ日 宮地ゆうこ 夏休みに帰省していた子どもが、また勉学のために帰ってゆく ときの親の気持ちである。親子ともども良い休暇が過ごせたこ とであろう。すがすがしく明けた朝に、その気持ちがある。( 高橋正子)
レタス出荷トラック霧の坂下る 古田けいじ 自句自解 知人の信州の別荘に泊まってのゴルフに行った。別荘のある一 帯はレタス御殿が建つと言われるほどのレタスの産地。夕方、 霧が深くなった落葉松の坂を、レタスを積んだトラックが下っ て行くのが別荘のベランダから見えた。