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さわやかに高原走る陸上部/今井伊佐夫 よく日焼けした、しなやかな体で次々と走ってくる陸上部の生徒らは、高 原の風の中で、爽やかさそのもの。爽やかさの象徴である。(高橋正子)
新涼や卵の殻で瓶洗う/都 久俊 卵の殻を瓶に入れて、振り洗うと、瓶はきれいに透き通ってくる。新涼の 感じが、透明な瓶、清潔な白い卵殻によって、楽しく表現されている。余 談だが、茶渋のついた水筒に卵殻を入れて洗うと、水筒はピカピカになる 。これは私のお勧め。(高橋正子)
稲田の上を新幹線のすれ違う/相沢野風村 すっきりと広がる稲田の上を走る、新幹線のスピード感が爽快。(高橋正子)
色づきし毬わり栗のこぼれ落つ/右田俊郎 的確な写生で、色づいた栗の毬が、初秋に新鮮である。「こぼれ落つ」に 、この句を納得させる力がある。(高橋正子)
鰡飛べば汐満つ音の生まれけり/平野あや子 音が聞えて、満ちてくる汐の豊かさに、秋の詩情は高まる。汐の上を飛ぶ 鰡の勢いを得た姿に秋の海の詩情が集約された。 (高橋正子)
秋芝に寝て空までの高さかな/霧野萬地郎 胸の上ある秋空の高さに、両腕を広げてもかかえきれない広々とした大き な世界にロマンがあって、すがすがしい。(高橋正子)
百日紅幹に夕日の滑り落つ/山野きみ子 夕日は低くなって、あらわな百日紅の幹に当たっている。まだ花を高々と 咲かせている明るさのなかにも、幹に当たる夕日には一抹の寂しさがあっ て、日差しに秋めくものがあるのを感じる。(高橋正子)
新稲架の組まれバス終点の地に/脇美代子 バスの終点の地に立つと、はやも寒々しさが見えるが、新しい稲架が組ま れて、そこには藁が匂い、日が匂い、はるかな人の営みの暖かさがある。 (高橋正子)
澄む秋の空半分に穂高あり/多田有花 天に近いだけに、燦燦と日を浴びた穂高の峰が、澄んだ秋空に聳え、その 雄姿を登山者の目の位置で見せてもらえる。(高橋正子)
花野来て花野の夕暮れ見て帰る/戸原 琴 花野を歩んで来た心楽しさ、花野の夕暮れの地味なようだが、静かな華や かさが、秋の野の美しさを伝えている。(高橋正子)
豆腐屋に沢水流れ水引草/守屋光雅 沢水を引き入れた豆腐屋さんには、水があふれています。水引草の朱が、 澄みきった初秋を告げて、目に移るものが,すべて澄んでいます。(高橋 正子)
山栗の硬き音なり山盛りに/日野正人 この句の生命は、「山栗」。単刀直入な切り出しが、すっきりとして、山 の澄んだ空気とみずみずしさをよく感じさせてくれる。「硬き音」に、つ ややかで色深い栗がイメージでき、秋の深まりが静か。(高橋正子)
虫の音に取り囲まれて闇にいる/祝 恵子 灯を消して、静かにしていると、虫の音が四方から聞こえてくる。虫の夜 がふっくらとして感じられる。(高橋正子)
木の実独楽歩き始めし子へ廻す/古田けいじ 歩き始めた子は、木の実独楽を、なんと不思議なものと思ったのに違いあ りません。興味津々ですね。無垢な子どもとふれあう心があたたかい。( 高橋正子)
群れつつも一本ずつの曼珠沙華/矢野文彦 曼珠沙華の咲き群れる光景に出会うと、あたりは、あの赤い色に塗られた ようになるので、一本一本の花を意識しないのが、普通かもしれない。が 、よく意識すれば、それは、一本一本なのである。(高橋正子)
鶏頭の無駄省かれて濃い赤に/吉田 晃 鶏頭の花は、花茎から絞り上げたように、たくましいまでの濃い赤色をし ている。それを「無駄省かれて」と掴みとったところに、押しも押されぬ 力強さがある。さすが、男性の句である。(高橋正子)
人の手に触るることより新豆腐/野田ゆたか この句は、「より」の解釈に重点がある。冷たい水から掬う、あるいは、 掌にのせることによって、今年の大豆で作られた豆腐は、できたばかりの ほのかな匂い、柔らかな白い色、水に触れていた切り口などが、生き生き としてくる。新豆腐を感覚的に捉えた作者の新境地といえる句。(高橋正 子)
ミシン踏めば夜汽車のような秋の夜/河ひろこ 足踏みミシンのカタカタという音を一人聞きながら、秋の夜長に縫い物を している。ミシンの音も、手元を照らす灯りも、まるで夜汽車のようであ る。優しい女性像が描かれている。(高橋正子)
豊作の田を貫きしひかり号/堀 佐夜子 新幹線ひかり号が、豊作の田を貫いて、走って行ったということなのだが 、読後の爽やかさが、なんと言っても、いい。すっきりと、きれいなのが いいですね。(高橋正子)
富士山に雲あそぶ日の蜜柑狩/大給圭泉 「富士山に雲あそぶ」のおおらかで明るい捉え方に、読み手までものんび りした気持ちになる。富士山の見えるところで、蜜柑狩りを楽しむ麗らか な秋の日の風景が鮮明。(高橋正子)
奔放に高さ競いて芦の花/石井信雄 静かな芦の花にも、奔放で、競いあうような時がある。静かな花の、自由 な奔放さは、愛すべきもの。聴こうとすれば、水音さえも聞こえて来る景 色。(高橋正子)
ざっくりと束ね新藁眼に青し/池田多津子 「ざっくり」と表現され、藁を束ねる音まで聞こえそうである。まだ青さ の残る新藁が束ねられると、眼にはっきりと青が印象付けられる。(高橋 正子)
朝霧の晴れて港に外国船/安増惠子 朝霧が晴れてみれば、外国船が港に来ている。港が霧に包まれているうち に、遠くからやってきたのだろう。来たばかりの外国船が、新鮮な気持ち で受け入れられ、船さえも、新鮮な呼吸をしている感じがする。(高橋正 子)
コスモスのそこから上を空とする/小原亜子 コスモスの花と、その上の空とに分割されている景色。コスモスは空に花 を浮かべるようにそよいでいるだろうし、空はその花に応えるように青く 広がっている。伸びやかで、きっぱりとした捉え方がよい。(高橋正子)
朴の木の真横に満ちし秋の星/碇 英一 大きな朴の木の、横に数え切れない星が出ている。秋の星は、冷ややかさ を纏って、澄んだ光を投げかけている。(高橋正子)
菊畑摘みし香を着て日の暮れる/守屋光雅 一日菊畑に居たことで、菊の香を着るまでになったのです。「香を着て」 に、菊のあかるさと、あたたかさが感じられて、心にしっとり馴染んでき ます。(高橋正子)
流星の後も見ている沖の船/野田ゆたか はるかなものを見ている心境がよい。沖の船の明かりも、流星の去った空 の星も同じ光りである。 (高橋正子)
秋風を集めて深し空の青/安田明子 秋風が、空に吸い込まれてかのようである。それだけ空は高い。吹く秋風 をすべて集めたら、どんなに深く青い空ができるのだろうかと思う。新鮮 で詩的な発想。(高橋正子)
オカリナや色無き風を染めて吹く/池田和枝 「風を染めて」という表現は、ポップスなどの歌詞に安易に使われている のが多いが、この句では、オカリナの音色を上手く表している。オカリナ が遠く響いているのである。(高橋正子)
草刈られ新芽ふたたび影を持ち/岩本康子 夏草が刈られた辺りは、すがすがしく、清潔になる。そこから新しい芽が 出て、幼い姿ながら、影をもっている。そういう姿は、フレッシュであり ながら、凛としたところがあってよい。(高橋正子)
手のひらの新米光りつつこぼる/藤田洋子 身近な生活を詠んで輝いている。いい生活である。(高橋信之)