むかしの俳句カレンダー
俳句日記
BBS/さら句会


■俳句カレンダー/2003■

【9月】

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2003年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

1日(月)

さわやかに高原走る陸上部/今井伊佐夫

よく日焼けした、しなやかな体で次々と走ってくる陸上部の生徒らは、高
原の風の中で、爽やかさそのもの。爽やかさの象徴である。(高橋正子)


2日(火)

新涼や卵の殻で瓶洗う/都 久俊

卵の殻を瓶に入れて、振り洗うと、瓶はきれいに透き通ってくる。新涼の
感じが、透明な瓶、清潔な白い卵殻によって、楽しく表現されている。余
談だが、茶渋のついた水筒に卵殻を入れて洗うと、水筒はピカピカになる
。これは私のお勧め。(高橋正子)


3日(水)

稲田の上を新幹線のすれ違う/相沢野風村

すっきりと広がる稲田の上を走る、新幹線のスピード感が爽快。(高橋正子)


4日(木)

色づきし毬わり栗のこぼれ落つ/右田俊郎

的確な写生で、色づいた栗の毬が、初秋に新鮮である。「こぼれ落つ」に
、この句を納得させる力がある。(高橋正子)


5日(金)

鰡飛べば汐満つ音の生まれけり/平野あや子
 
音が聞えて、満ちてくる汐の豊かさに、秋の詩情は高まる。汐の上を飛ぶ
鰡の勢いを得た姿に秋の海の詩情が集約された。 (高橋正子)


6日(土)

秋芝に寝て空までの高さかな/霧野萬地郎
 
胸の上ある秋空の高さに、両腕を広げてもかかえきれない広々とした大き
な世界にロマンがあって、すがすがしい。(高橋正子)


7日(日)

百日紅幹に夕日の滑り落つ/山野きみ子

夕日は低くなって、あらわな百日紅の幹に当たっている。まだ花を高々と
咲かせている明るさのなかにも、幹に当たる夕日には一抹の寂しさがあっ
て、日差しに秋めくものがあるのを感じる。(高橋正子)


8日(月)

新稲架の組まれバス終点の地に/脇美代子
 
バスの終点の地に立つと、はやも寒々しさが見えるが、新しい稲架が組ま
れて、そこには藁が匂い、日が匂い、はるかな人の営みの暖かさがある。
(高橋正子) 


9日(火)

澄む秋の空半分に穂高あり/多田有花
 
天に近いだけに、燦燦と日を浴びた穂高の峰が、澄んだ秋空に聳え、その
雄姿を登山者の目の位置で見せてもらえる。(高橋正子)


10日(水)

花野来て花野の夕暮れ見て帰る/戸原 琴

花野を歩んで来た心楽しさ、花野の夕暮れの地味なようだが、静かな華や
かさが、秋の野の美しさを伝えている。(高橋正子)


11日(木)

豆腐屋に沢水流れ水引草/守屋光雅

沢水を引き入れた豆腐屋さんには、水があふれています。水引草の朱が、
澄みきった初秋を告げて、目に移るものが,すべて澄んでいます。(高橋
正子)


12日(金)

山栗の硬き音なり山盛りに/日野正人 

この句の生命は、「山栗」。単刀直入な切り出しが、すっきりとして、山
の澄んだ空気とみずみずしさをよく感じさせてくれる。「硬き音」に、つ
ややかで色深い栗がイメージでき、秋の深まりが静か。(高橋正子)


13日(土)

虫の音に取り囲まれて闇にいる/祝 恵子

灯を消して、静かにしていると、虫の音が四方から聞こえてくる。虫の夜
がふっくらとして感じられる。(高橋正子)


14日(日)

木の実独楽歩き始めし子へ廻す/古田けいじ
 
歩き始めた子は、木の実独楽を、なんと不思議なものと思ったのに違いあ
りません。興味津々ですね。無垢な子どもとふれあう心があたたかい。(
高橋正子) 


15日(月)

群れつつも一本ずつの曼珠沙華/矢野文彦

曼珠沙華の咲き群れる光景に出会うと、あたりは、あの赤い色に塗られた
ようになるので、一本一本の花を意識しないのが、普通かもしれない。が
、よく意識すれば、それは、一本一本なのである。(高橋正子)


16日(火)

鶏頭の無駄省かれて濃い赤に/吉田 晃

鶏頭の花は、花茎から絞り上げたように、たくましいまでの濃い赤色をし
ている。それを「無駄省かれて」と掴みとったところに、押しも押されぬ
力強さがある。さすが、男性の句である。(高橋正子)


17日(水)

人の手に触るることより新豆腐/野田ゆたか
 
この句は、「より」の解釈に重点がある。冷たい水から掬う、あるいは、
掌にのせることによって、今年の大豆で作られた豆腐は、できたばかりの
ほのかな匂い、柔らかな白い色、水に触れていた切り口などが、生き生き
としてくる。新豆腐を感覚的に捉えた作者の新境地といえる句。(高橋正
子) 


18日(木)

ミシン踏めば夜汽車のような秋の夜/河ひろこ

足踏みミシンのカタカタという音を一人聞きながら、秋の夜長に縫い物を
している。ミシンの音も、手元を照らす灯りも、まるで夜汽車のようであ
る。優しい女性像が描かれている。(高橋正子)


19日(金)

豊作の田を貫きしひかり号/堀 佐夜子

新幹線ひかり号が、豊作の田を貫いて、走って行ったということなのだが
、読後の爽やかさが、なんと言っても、いい。すっきりと、きれいなのが
いいですね。(高橋正子)


20日(土)

富士山に雲あそぶ日の蜜柑狩/大給圭泉
 
「富士山に雲あそぶ」のおおらかで明るい捉え方に、読み手までものんび
りした気持ちになる。富士山の見えるところで、蜜柑狩りを楽しむ麗らか
な秋の日の風景が鮮明。(高橋正子)


21日(日)

奔放に高さ競いて芦の花/石井信雄

静かな芦の花にも、奔放で、競いあうような時がある。静かな花の、自由
な奔放さは、愛すべきもの。聴こうとすれば、水音さえも聞こえて来る景
色。(高橋正子)


22日(月)

ざっくりと束ね新藁眼に青し/池田多津子
 
「ざっくり」と表現され、藁を束ねる音まで聞こえそうである。まだ青さ
の残る新藁が束ねられると、眼にはっきりと青が印象付けられる。(高橋
正子)


23日(火)

朝霧の晴れて港に外国船/安増惠子
 
朝霧が晴れてみれば、外国船が港に来ている。港が霧に包まれているうち
に、遠くからやってきたのだろう。来たばかりの外国船が、新鮮な気持ち
で受け入れられ、船さえも、新鮮な呼吸をしている感じがする。(高橋正
子) 


24日(水)

コスモスのそこから上を空とする/小原亜子
 
コスモスの花と、その上の空とに分割されている景色。コスモスは空に花
を浮かべるようにそよいでいるだろうし、空はその花に応えるように青く
広がっている。伸びやかで、きっぱりとした捉え方がよい。(高橋正子)


25日(木)

朴の木の真横に満ちし秋の星/碇 英一 

大きな朴の木の、横に数え切れない星が出ている。秋の星は、冷ややかさ
を纏って、澄んだ光を投げかけている。(高橋正子)


26日(金)

菊畑摘みし香を着て日の暮れる/守屋光雅

一日菊畑に居たことで、菊の香を着るまでになったのです。「香を着て」
に、菊のあかるさと、あたたかさが感じられて、心にしっとり馴染んでき
ます。(高橋正子) 


27日(土)

流星の後も見ている沖の船/野田ゆたか

はるかなものを見ている心境がよい。沖の船の明かりも、流星の去った空
の星も同じ光りである。 (高橋正子)


28日(日)

秋風を集めて深し空の青/安田明子

秋風が、空に吸い込まれてかのようである。それだけ空は高い。吹く秋風
をすべて集めたら、どんなに深く青い空ができるのだろうかと思う。新鮮
で詩的な発想。(高橋正子)


29日(月)

オカリナや色無き風を染めて吹く/池田和枝

「風を染めて」という表現は、ポップスなどの歌詞に安易に使われている
のが多いが、この句では、オカリナの音色を上手く表している。オカリナ
が遠く響いているのである。(高橋正子)


30日(火)

草刈られ新芽ふたたび影を持ち/岩本康子
 
夏草が刈られた辺りは、すがすがしく、清潔になる。そこから新しい芽が
出て、幼い姿ながら、影をもっている。そういう姿は、フレッシュであり
ながら、凛としたところがあってよい。(高橋正子)


31日(水)

手のひらの新米光りつつこぼる/藤田洋子

身近な生活を詠んで輝いている。いい生活である。(高橋信之)