むかしの俳句カレンダー
俳句日記
俳句掲示板


■俳句カレンダー/2003■

【10月】

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2003年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

1日(水)

数本の摘みしコスモス母に出し/高橋秀之

原句は、「秋桜」と書き、「コスモス」と読ませているようだが、コスモス
と読むなら「コスモス」と書くべき。コスモスを摘んできたのは、幼い子ど
もであろうが、小さな手には、数本で溢れるほどである。きれいな花を母に
摘んであげる子どもらしい優しさと、それを受け取る母の温かさが滲んでい
る句。(高橋正子)


2日(木)

咲き満ちし女郎花ざくざく束に刈られ/おおにしひろし

女郎花は目には、繊細で、清楚に映るのであるが、実際は、たいへん茎も丈
夫な花である。ざくざくと束にされるのは、女郎花の「実」の姿のあらわれ
といってよい。(高橋正子)


3日(金)/上弦

枝豆の実の充実を籠に受く/守屋光雅

枝豆を一つ一つ、籠に摘み取っていっているのであろう。手に触って、また
、籠に落ちる音を聞いて、確かな実の入り具合を、つまり充実を体で知るこ
とである。(高橋正子)


4日(土)

秋オリオン仰ぎてザイル結びけり/多田有花

モンテローザ登山の句。命の綱のザイルを結ぶのに仰ぐ空に、オリオン座が
その形を明らかに、輝いている。なんの他の雑念も許さず、ザイルはしっか
りと結ばれたことであろう。(高橋正子)


5日(日)

山迫る町に秋水流れ入る/安丸てつじ

山からの秋水と読める。「流れ入る」は、「山迫る町」に対しての的確な表
現で、急ぎ流れる澄んだ水のきらめきと音が伝わってくる。秋水の流れ入る
町が生きている。(高橋正子)


6日(月)

綱引きの一直線の崩れおり/相沢野風村

綱引きの、緊張した決着の一瞬から解き放たれた綱の崩れた様が、人間の心
の緊張と解放そのもののように詠まれている。根源的な句の楽しさがある。
(高橋正子)


7日(火)

秋うららあの山この山くっきりと/渡辺酔美

「山澄む」の季語もあるように、秋は、空だけでなく、山も澄んでくっきり
と見えます。うららかな秋の日のも霞むことなく、鮮やかな印象ですね。あ
の山、この山と楽しそうにながめている様子が感じ取れます。(高橋正子)


8日(水)/十三夜

窓に干すハンカチ白し十三夜/藤田洋子

月に干された白いハンカチは、白が透き通るようできれいですね。(高橋正子)


9日(木)/寒露

群れつつも一本ずつの曼珠沙華/矢野文彦

曼珠沙華の咲き群れる光景に出会うと、あたりは、あの赤い色に塗られたよ
うになるので、一本一本の花を意識しないのが、普通かもしれない。が、よ
く意識すれば、それは、一本一本なのである。(高橋正子)


10日(金)/満月

天高し組み体操はしかと立つ/祝恵子

組み体操が青空に高々と出来上がり、父兄たちの拍手と歓声が上がる瞬間で
ある。「しかと立つ」は、若さをすっきり捉えている。(高橋正子)


11日(土)

木の実落ち流れに深き音の立つ/碇英一

木の実が落ちる流れが澄んでいる。木の実が落ちれば、深い音となる。そこ
に静かで深々としたのもがある。(高橋正子)


12日(日)

コスモスの花を空へと風が誘う/戸原琴

コスモスの上向きの花が空に中にそよぐ様子を、このように言った。どの花
も空へ空へと風に掬われるように咲いている。(高橋正子)


13日(月)/体育の日

秋潮の島に分かれてまた逢えり/霧野萬地郎

小さな島であろう。島に当たって別れた潮は、また巡ってきて逢うことにな
った。秋潮の紺青の流れのさわやかさが心身に満ちる。(高橋正子)


14日(火)

いずこの山の青を連れきし青蜜柑/山野きみ子

つやつやとした青蜜柑に、育った山のみずみずしい青を想像した。青蜜柑の
酸っぱさまでも思ってしまう。(高橋正子)


15日(水)

空のある限りに広がる秋星座/古田けいじ

澄み渡った秋の夜空は、いつ見ても感動させられるものの一つである。見え
る限りの空に星座が瞬いて、寒さが来る前の秋の深さがある。(高橋正子)


16日(木)

風うけて緋色をしかと赤とんぼ/石井信雄

風の中で宙に留まったり、また、飛んで行ったりする赤とんぼ。その胴体の
、赤よりもっと濃い緋色が、しっかりと目に捉えられて揺るぎがない。「し
かと」は、作者自身の実感の捉えるところ。山で過ごして降りてきた赤とん
ぼは緋色となる。(高橋正子)


17日(金)

穂薄の向こう水平線までの海/山野きみ子

若々しく、しかも安定した句。穂薄も秋の海も、光りに満ちている。(高橋
正子)


18日(土)/下弦

紅葉山バスも丸ごと染まりけり/河ひろこ

すっかり紅葉した山に、バスが入っていくと、どの窓からも紅葉が見えて、
バスの中まで、紅葉の色に染まったようになる。紅葉の美しさが楽しめる句
。(高橋正子)


19日(日)

行く雲に白鳥の声暮れている/守屋光雄

日暮れに鳴き交わす白鳥の声が、空高く響いて北国の遥かへと広がる奥深さ
がある。(高橋正子)


20日(月)

稲架解かれ束ねる竹の軽く鳴る/脇美代子

稲架が解かれていく様子を丁寧に見て、稲架に使われていた竹が束ねられ、
軽く触れ合う音を聞き留めた。「軽く鳴る」に作者の素直な思いがあってよ
い。(高橋正子)


21日(火)

秋の雨水平線より晴れてきし/岩本康子

秋雨がこのように詠まれると明るい。遠くはるかに心をやり、そこに晴れて
ゆく日の光りを感じた。色彩と光りとが醸すニュアンスがいい。(高橋正子)


22日(水)

小鳥来て声澄みわたる厨にも/柳原美知子

小鳥が来る嬉しさは、誰にもあるが、毎日の厨ごとに、小鳥が来てくれると
、天気もいい日なのだろう心がはずむ。その気持ちが「澄み渡る」。(高橋
正子)


23日(木)

白菊を活ける長さにすぱと切る/おおにしひろし

「すぱと切る」は、潔く、白菊ゆえに清潔な句となった。一本の菊のすっき
りとした姿がよい。(高橋正子)


24日(金)/霜降

曼殊沙華茎の青さの潔し/右田俊郎

曼殊沙華は、葉をつけずに青い茎をすっくと伸ばし、燃えるような花冠をつ
ける。そのすっきりとした花茎を青と捉え、潔しとした。作者の潔さである
。(高橋正子)


25日(土)/新月

山茶花の蕊に夕日の残りけり/加納淑子

山茶花の花は、蕊をはっきり見せて開ききる。その山茶花の一花、一花の開
いた真中の蕊に夕日がはっきりと差して美しく、さびしさが昇華されている。
(高橋正子)


26日(日)

秋の空警笛高く貨車走る/大給圭泉

澄み渡った秋の空に、高らかに警笛を鳴らして走る貨物列車。男の子ならず
も、子どもは、時には大人も、こんな景色に憧れるのではないか。楽しく郷
愁を誘う景色である。(高橋正子)


27日(月)/読書週間

造船の湾に響きて冬隣る/平野あや子

船を造る鉄や機械音が、鈍色の湾に響くと、寒ざむとして、耳に目に「冬隣
る」感が強まる。「冬隣る」の季語が生きている。(高橋正子)


28日(火)

日向ぼこ人それぞれに日を頒(わか)つ/小峠静水

一人ひとりの日向ぼこに射している暖かい日光。その光は、みんなに分けら
れて、大きな太陽から届いている。心の隅まで暖められる句。(高橋正子)


29日(水)

白菜をばっりと割きて陰干しに/能作靖雄

白菜を割けば、ばりっと音がして新鮮そのもの。清冽な句。白菜漬けの用意
だろう。並べられた白菜も清らか。(高橋正子)


30日(木)

初雁の雲に入りたり一列に/相沢野風村

「初雁」という季語が、この句を大きく美しくした。渡る雁を見ていれば音
もなく雲の中へと入ってゆく。かがやかに美しいものの、はかなさがある。
(高橋正子)


31日(金)

朝日さす障子のむこう金木犀/林緑丘

白い障子に、金木犀のある庭に、久しぶりにゆっくりした気持ちで、日本の
良さを感じている。(高橋正子)