■俳句カレンダー/1999■

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【3月】

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1日(月)

下校児を丸く包んで春茜 吉田 晃



自句自解

大自然に包まれた人の姿に懐かしさを覚える。あの子たちを包んでいる

母親の姿が浮かび、自分の昔を見ている気になった。


2日(火)

梅林の香りの中へバス止まる 野上哲斉



嬉しい用事のためにバスで来たのでしょうね。ほんのり匂う梅の木が見えま

す。(古田けいじ)


3日(水)/雛まつり

菜の花や園児の黄帽子揺れてをり 阪本登美子



自句自解

毎年毎年自然の力はすごいと思う。季節季節に私たちを楽しませてくれる。

幼子もやがて、成長する。この花のようにいつまでもやさしい心を忘れない

でいたい。


4日(木)

鳩時計とぼけた音で春知らす 八木美苑



美苑さんは、ノーベル文学賞作家大江健三郎のいた松山東高校の一年で、こ

の句は、高校受験一週間前にインターネットで発表したものです。俳句の余

裕でした。中学校の成績がトップであることが素晴らしいのではなく、成績

の一番の生徒がよい俳句を作ったことが素晴らしいのです。 (高橋信之)


5日(金)

落椿拾いておれば椿落つ 渡邉道郎



自句自解

1998年春の句。今年は天候のせいか、あるいは私の手入れが悪かったの

か、落ちないままに涸れていく花が多い。落ちた椿をひとつひとつ拾うのも

私の楽しみ。


6日(土)

合格と携帯電話の声はずむ 阪本登美子



自句自解

携帯電話でのトラブルが多い中、改札口でうれしそうに携帯電話で話してい

るのを見かけほっとした気持ちになった。


7日(日)

学校の時計が見える木の芽晴れ 相原弘子



あそこの木の芽も、ここの木の芽も春を待っているのでしょう。本当の春も

いかにも近いという、明るさが感じられます。(高橋正子)


8日(月)

春の雪降り止み山の重なりぬ 八木泰子



春の雪が降り止んだあとの静かさが、奥深く詠まれています。山の重なりが

それを表しています。(高橋正子)


9日(火)

おしばなの紅梅円形にて匂う 高橋正子



自句自解

梅の花を見ると、その香りもなんとか手許に残しておきたい衝動にかられま

す。それで本などに挟んで押し花にするのですが、出来あがった形がなんと

もいえず、かわいらしく思え、匂いもそこはかとなくするのです。


10日(水)

囀りに子の片言の鳥を呼び 高橋正子



自句自解

子どもが小さいうちは、外を散歩しながら、よく遊ばせたものです。外が好

きな子どもに付いて行くと、あちこちから、小鳥の囀りが聞こえてきます。

どきどきは、子どもが小鳥をたどたどしく呼んだりして、親の私も楽しみま

した。


11日(木)

絵手紙は土雛二人壁に貼る 古田けいじ



「壁に貼る」が効いています。日常の喜びですね。お孫さんへの愛情が伝わ

ってきます。(高橋信之)


12日(金)

茅花摘む父子拾いてバス発てり 上出真佐子



俳句雑誌でよく鍛えられた、という俳句ですね。性根が入っています。(高橋信之)

映画の1シーンを見ているような気がします。のどかな田舎の春の昼下がり

の風景。(渡邉道郎)


13日(土)

明日は雨予感する夜の沈丁花 古田けいじ



夜の沈丁花は香りが強くとても印象的です。天候や湿度の違いによる匂いの

変化をうまく表現しました。(高橋信之)


14日(日)

六甲の山春めきて海光る 安丸てつじ



神戸の風景を写生して成功しましたね。まさに神戸です。(高橋信之)


15日(月)

雲雀揚がる沖より風のある空に 高橋信之



自句自解

学生らと重信川河口に出掛けたときの句。早春の開放感に浸る時間を得た。

少しの緊張感も快い。


16日(火)

春泥に足をとられて日が真上 八木泰子



自句自解

畑で収穫した菜っ葉をかかえて、油断したとたんの出来事。でも、きらきら

と春のお日様が笑っている。幸福を感じる。


17日(水)

卒業の合唱足元に菜の花がある 吉田 晃



自句自解 

今はない古い体育館での卒業式。菜の花の黄色が美しく、先生方の心遣い

がうれしかった。


18日(木)/彼岸入り

試歩の杖そっと撫で居る春うれし 上出真佐子



「春よこい、早くこい、歩き始めたみーちゃんが・・・」の歌を思い出しま

した。生きているのがうれしくて、たのしくて。無意識に自然と調和して生

きている。そんな感じにさせてくれました。(吉田晃)




19日(金)

土筆摘む 一人の夕餉 飾るほど 上出真佐子



穏やかで、心豊かな生活が美しく描かれています。(林 緑丘)


20日(土)

沢雪解せきれいちちとさ走りぬ 上出真佐子



日本画風の美しい風景ですね。日本語の手法を生かした俳句です。(高橋信之)


21日(日)/春分、春分の日

揚雲雀駆け下りて一時の静 渡邉道郎



静と動ですね。句に緩急があって新鮮ですよ。(高橋信之)


22日(月)

鉄びんの音のみ高し春障子 堀佐夜子



鉄びんと春障子、清潔な印象の句です。静かでしかも明るい。(八木泰子)


23日(火)

春の雷湯呑の酒をこぼしけり 吉田 晃



自句自解

親子二代の教員生活。単身赴任をしてみて、父もこうしていたのだろう

と思う。


24日(水)/彼岸あけ

囀りの抜け来る空の半円球 高橋正子



私たちの俳句は、いわゆる名利の世界とは無縁で、水煙は、出世間の俳句仲

間の集まり。名利の世界を離れてこそ、真実の世界が見え、心は生き生きと

して本当の生活を楽しむ。漱石の「則天去私」の心境もこういったものであ

ろうと思う。(高橋信之)


25日(木)

春灯の納屋の奥から藁の音 吉田 晃



子どもの頃はまさにこの風景の中で暮らしました。寒いばかりで決して明る

い暮らしとは言えないのですが、今となっては懐かしいばかりです。(渡邉道郎)


26日(金)

春菊の香りをゆでし夕支度 堀佐夜子



「香りをゆでし」がよいですね。「夕支度」で句が決まりました。(高橋正子)


27日(土)

シャボン玉追いかける子も七色に 鳩崎良一

 

文句なく明るい句。家庭でも、学校でも、子供たちが明るく振る舞うことが

出来ないならば、それは、大人たちの責任であろう。(高橋信之)


28日(日)

パンジーの恋の予感にゆるるなり 阪本登美子



自句自解

ベランダに所せましとパンジーばかり十鉢置いてある。花の色もそれぞれだ

。見ていて飽きない。「ロミオとジュリエット」の場面がふと浮かんだ。花

びらが揺れているのが恋のときめきのように想えた。


29日(金)

いかなごを母がしていたように煮る 八木泰子



自句自解

こどもの頃は好きではなかったいかなご。それなのにこどもを持ってからは

いかなごを母とそっくりの煮方で煮ている。そして春を思う


30日(土)

インターネット桜前線友がいる 林 緑丘



平明なところがよいのです。読者の心に負担がかかりませんね。楽しい気持

ちになりますよ。(高橋信之)


31日(日)

木蓮は空に向かいひとりたつ 林 緑丘



白木蓮でしょうね。青空の中の白がとても印象的です。「空に向かいひとり

たつ」という表現の素直さが生きていますね。(高橋信之)