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瀑の水いま山葵田にささめきあふ 西垣 脩 脩俳句を語るには「清冽」という言葉が何よりも似合う。昭和三十一年、脩 三十六歳のときの句。(高橋信之)
蒲公英の発つ時近し飛行音 渡邉道郎 自句自解 麗らかな日、蒲公英の綿毛に見とれていた。一本も抜けたところが無く、完 全な球形のまま、今まさに飛び立とうとしていた。おりしも遙か上空をジェ ット機が通過していった。
桜前線急ぎきて日本海 阪本登美子 自句自解 気象状況も変わり年年早くなって来ている。スピード感。
吾子の手になる染卵飾りけり 阪本登美子 自句自解 復活祭の卵です。私たちの子供のときは真っ白で何も飾りがなかった。今は 卵にシールが貼ってありとても楽しい卵だ。小さな手に持っていると微笑ま しい。親から子へと卵のように丸く何かを伝えて欲しい。
雛しまう明日のことなど言いながら 八木泰子 自句自解 雛は飾るときも好きである。が、しまうときの安堵の気持ちも良い。たいて い、こどもと一緒にしまうので句のような景である。
炊き上がる飯の匂いや桜冷え 古田けいじ 自句自解 六畳一間の息子の下宿。炊飯器から登る飯のいい匂いで目が覚める。京都特 有の底冷えの朝であった。下五に苦労し、歳時記に助けられて何とか句にな った。
春の空コップに浮かべ飲み干しぬ 八木泰子 自句自解 春の昼下がりは庭で草取りをする。外で飲む水はおいしい。ふとみればコッ プに空が映っている。
寺苑をめぐりどっと花咲く花まつり 高橋正子 自句自解 えひめ子ども俳句会を主宰していた時の作で、息子の元が小学4年、娘の句 美子が幼稚園のとき。砥部・永代寺での花祭りに子ども句会を併せたもの。 お寺の周りは桜やれんげ、そのほかの花も一斉に咲いていた。花の中の花ま つり。お釈迦様の誕生日。NHKから全国放送された。
わが一本の桜も小さき花ふぶき 川本臥風 この句は、「わび―正直に、おごらず、つつしみ深いもの、さわやかなもの 」という建築家谷口吉郎の言葉にもっともふさわしいといえよう。(高橋信之)
桜散る坂超え来ればピアの鳴る 古田けいじ 自句自解 勤め帰りに自転車を漕いで坂を登ってくるとピアノが聞こえてきた。疲れた 身体を癒してくれるようなメロディーだった。
タラの芽積む美濃の山塊雲晴れる 古田けいじ 自句自解 友人と山菜摘みに出かける。道が途切れた頂上で休む。眼下に広がる雲が晴 れて山並みが見えてきた。名古屋から近い所にこんなに素晴らしい眺めの出 来る所があるのに驚く。
マーガレット少女のころのおさげ髪 阪本登美子 自句自解 マーガレットの清楚さと私の高校時代のセーラー服と友達四人の三つ編みの 髪がいまでもなつかしく思い出される。
春の夜の子の長まつげ臥てのぞく 西垣 脩 昭和二十三年の作。空気もやわらいだ春の夜、眠る子のそばに臥てそっとの ぞく。ふっくりした頬に落ちるまつげのかげ。その愛らしい寝顔は、わが子 のいるなににもまさる喜びとなる。幼くして典雅な雰囲気のあるこの寝顔を 画家ならば生涯手もとに置いておくことでしょう。(高橋正子)
物種を天の平らの下に播き 相原弘子 自句自解 四季の巡りを享受の農作物。時には畏敬よりも羨望を覚える。
蕨もらう山のように静かな夜 相原弘子 自句自解 大切に煮付けなければと思う。山懐に抱かれたい。
群れし蝶離れし蝶の白きこと 相原弘子 自句自解 蝶はその様子に、楽しくも妖しいものへ誘ってくれる。どこからどのように してひらひらと、やってくるのであろう。
春の雷湯呑の酒をこぼしけり 吉田 晃 自句自解 親子二代の教員生活。単身赴任をしてみて、父もこうしていたのだろうと思う。
いかなごを母がしていたように煮る 八木泰子 自句自解 こどもの頃は好きではなかったいかなご。それなのにこどもを持ってからは いかなごを母とそっくりの煮方で煮ている。そして春を思う。
シャボン玉追いかける子も七色に 鳩崎良一 文句なく明るい句。家庭でも、学校でも、子供たちが明るく振る舞うことが 出来ないならば、それは、大人たちの責任であろう。(高橋信之)
春水を手になみなみと顔洗う 吉田 晃 誰もがどこでも手にすることが出来る春水だが、とても贅沢な気分にさせて くれる。物ではなく、心を求めているのが嬉しい。(高橋信之)
足元の春草摘んで歩く人 相原弘子 楽しいこと、嬉しいことは、どこにでもありますね。「心外無仏」という言 葉を思い出しました。人次第ですね。(高橋信之)
こでまりや娘と歩くひさかたに 林 緑丘 「こでまり」の優しさが喜びの在りようを語ってくれています。緑丘俳句の よさですね。(高橋信之)
春光のつやつや裸の男の子の背 吉田 晃 「背」が効いている。口ではなく、背中で語るのは、いかにも「男の子」ら しい。(高橋信之)
紙飛行機ふいに横ぎる土手の春 堀佐夜子 感動の喜びは「ふいに」やってくるものである。巧まないのがよい。(高橋信之)
連翹の散りたる路をけんけんぱ 林 緑丘 「連翹」の黄がとても印象的です。「けんけんぱ」が効きましたね。今の季 節によく合いますよ。子供たちに向けている優しい視線。これは、いい風景 です。(高橋信之)
惜春や妻突然に髪を切る 渡邉道郎 自句自解 何を思ったか長かった髪をバッサリと切った。特に理由もなさそうだったが 、聞くのも恐かった。「短いほうがいいじゃあないか」と、これも言わずに 終わった。
怠りし散歩も始めいぬふぐり 上出真佐子 「いぬふぐり」がすべての状況を語ってくれていますね。季語の働きは大き いものです。(高橋信之)
バス待つや見てゐる畑の葱坊主 上出真佐子 若い人達の成長を静かに見守っている作者の姿勢が見えてきます。「バス待 つや」が生きていますよ。(高橋信之)
閉店のパン屋のバラはまだ紅く 古田けいじ おしゃれな句ですね。(高橋正子)
白き皿にババロア揺れて4月尽く 古田けいじ 移りゆく季に寄せる感慨ですが、大げさでないのがいいですね。生活をしっ かり捉えているからで、生活のない季節には、感動も薄いものとなってしま いますね。(高橋信之)