■俳句カレンダー/1999■

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月


【6月】

日  月  火  水  木  金  土
      01 02 03 04 05
06 07 08 09 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30         
                  

1日(火)

挙手の手の明るく動く更衣 吉田 晃



学校が明るいのが嬉しい。「更衣」という季語の働きを十分に生かすことが

できた。(高橋信之)


2日(水)

新じゃがの茹で上げてまだ野の匂い 渡邉道朗

「まだ野の匂い」がいいですね。「新じゃが」の「新」と「まだ野の匂い」

の「まだ」とが、うまく響き合って、句の力を強めています。平明で、しか

も力強い俳句です。なべさんの日常がそうなっているのでしょう。よい俳句

は、よい生活から生まれてくるものです。(高橋信之)


3日(木)

裏庭の同一線上ねぎ坊主 森 隆博 



作者の目の付け所の良さに感心しました。(高橋信之) 


4日(金)

鮎匂い鮎の山河を恋いわたる 川本臥風



鮎の生態をあますところなく表現した臥風先生の代表句。鮎は生まれた川の

匂いをたどって上ってくる。豊かな水と緑したたる山河は日本の夏の始まり。

(高橋正子)


5日(土)

代掻きす見える景色の真ん中で 相原弘子



こういう光景は芭蕉の時代からずっと続いているのではなかろうか、という

感じがする。弘子さんは旅行をほとんどされないが、旅行などしなくても句

の題材は身辺に山ほどあるということを実証してくれている。この句でもそ

うであるが読む対象に心がぴたりとくっついているのである。代掻きをする

様子が真ん真ん中に据えられて、動かないのである。お見事と言う他はない

。当たり前のことを、こう、その通りに表現できるストレートさは邪心の入

るすきを許さないのである。(高橋正子)


6日(日)

教会の鐘が聞こえて枇杷黄色 相原弘子

 

自句自解

その鐘は斜めに聞こえてきた。卓の上の枇杷に今更ながら黄を覚えた。


7日(月)

葛に葛からまり空に立ち上がる 渡邉道朗



作者の精神の高まりを感じさせてくれます。(高橋信之)


8日(火)

萍の生まれる時も漂える 渡邉道朗 



「萍」の本性を見事に捉え、物の本質に迫る。(高橋信之)


9日(水)

空と海赤くとけあう夕焼けに 林 緑丘 



とても抒情的で、作者の情が伝わってきます。(高橋信之)


10日(木)

紫陽花の向こうをゆっくり笑い声 古田けいじ



作者独自の感覚があって、この存在感がよい。(高橋信之)


11日(金)

雨が降り出す紫陽花の周りから 相原弘子

 

自句自解

紫陽花は雨への寛容を教えてくれる。どこがどう歪んでいるというでない毬、

控えめな色合い。大事に咲いてほしい。


12日(土)

風に葉が翻って梅の実がひとつ 相原弘子

 

自句自解

どの枝にどう実が付くと決まっていたのをもいでいた時、これ又漬けるんよ

なあと、近所の人の一言。梅の実の青をいとおしいと覚えるようになった。


13日(日)

大夕焼航海終えし船だまり 阪本登美子 



油絵に画かれたような景色ですね。繋がれた船が、きしんで揺れる音や波の

音が聞こえるようです。(高橋正子)


14日(月)

朝の薔薇露もろともに壷の中へ  安西さゆり



朝の花壇から切り取ったばかりの薔薇です。生き生きとした薔薇に今日の始

まりを励まされます。嬉しい今日の始まりです。(高橋信之)


15日(火)

夏走る青年息も乱さずに 安西さゆり



夕暮れ時でしょうか、黙々と走る青年の姿が目に浮かびます。私の住まいの

近くに消防署がありますが、まさにこう言う姿で空いた時間に皆さん走られ

ています。(渡邉道朗)


16日(水)

バス停は立葵の花咲くあたり 上出真佐子



真佐子さんの句は、どれも穏やかであるが、作者の内面の充実がよい。日常

の生活に張りを持たせているからであろうと思う。(高橋信之)


17日(木)

閉店のパン屋のバラはまだ紅く 古田けいじ



パン屋はもう閉まって静かになっているのだが、ショーウィンドウには紅い

バラがきらきら輝いているのだろう。パンの香ばしい匂い、その色、紅いバ

ラ、それらを照らす照明など、いましがた過ぎた美しい時を思いおこさせて

くれる。心のさゆらぎの中に、一本のバラを咲かせているのである。(高橋正子)


18日(金)

ダムとなる棚田に今朝も草取り女 堀佐夜子



自句自解

数年前に信州へ行った折に案内して下さった人にお聞きしたんですが「あの

棚田も今年だけなんです。ダム工事が始まります」と。何故か複雑な気分でせ

っせと草取りをしている人を見つめておりました。


19日(土)

まなかいに松山城ある夏館 堀佐夜子 



新緑に囲まれて、ガラス戸越しに見える松山城、先生との会食でしょうか。

初夏の爽やかな空気と、和やかな団欒。羨ましい光景が浮かんできます。(古田けいじ)


20日(日)

涼風のさっと来てをりさっと去る 堀 幹夫



「不即不離」というような、心境でしょうか。風をうまく捉えた句と思いま

した。(高橋正子)


21日(月)

看護婦の手のやさしくて髪洗う 渡邉道朗



自句自解

十日間の入院生活を送った。入院も、看護婦さんの優しさに触れたのも初め

てであった。退院も近くなった頃、新米の看護婦さんが髪を洗ってくれた。

そのひたむきさが優しい手を通して伝わって来た。まさに白衣の天使だった。

あれから五年、あの白衣の天使も立派な看護婦さんになっているでしょう。


22日(火)

白ばらの空気を巻いていて崩る 高橋正子



しみじみとしたところがあって、ベテランらしい深みもあります。私の求めて

いますのは、明るくて深いところのある俳句です。透明感のある俳句です。(高橋信之)


23日(水)

梅雨の畳に体重のせて歩く音 高橋信之



自句自解

自分らしい句だと思い、愛着がある。


24日(木)

紫陽花の向こうをゆっくり笑い声 古田けいじ



自句自解

我が家の前の道は中学校の通学路。狭い庭に咲いた紫陽花。その向こうを下

校の生徒たちが、何やらにぎやかに談笑しながら通っていった。紫陽花は生

徒たちによく似合うような気がした。


25日(金)

初孫の丸さと湯上がり夏座敷 古田けいじ



自句自解

共働きの娘のこどもの世話をした。7ヶ月目に入り、表情も日増しに多くなる

頃。お風呂に入れ、湯上がりで包んだ。丸々と太った手足が可愛くて。狭い

我が家の夏座敷である。


26日(土)

夏の海雲まで届き丸くなり 林 緑丘   



水平線に湧く夏の雲。海の青さと夏を思わせる雲のコントラストと海の丸さ

。(古田けいじ)


27日(日)

潮の香や四つにたたむ夏帽子 阪本登美子



夏が来た生活をしっかりと畳み込んでいる確かである。(高橋信之) 


28日(月)

転調の時指揮棒に光る汗 古田けいじ



自句自解

年一回のの愛知県合唱祭。初出場の合唱団がトリを歌った。力強い指揮が印

象的であった。曲が転調した時、指揮者の額に汗が見え、曲の印象が強くな

った。


29日(火)

田植機を光の中で洗い上ぐ 相原弘子



「田植」は生産の営みであって、そこには、明るい未来がある。(高橋信之)


30日(水)

万緑の中や吾子の歯生えそむる 中村草田男



生命の賛歌であり、生活の賛歌である。止む事なき創造の世界に生き、絶え

ず前進する詩人のたくましい魂を草田男に見るであろう。「万緑」を季語と

して確立した功績は、草田男にある。(高橋信之)