■俳句カレンダー/1999■

101112


【7月】

日  月  火  水  木  金  土
            01 02 03
04 05 06 07 08 09 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

1日(木)/山開き/海開き

山裾に声が集まる山開き 森 隆博



表現はおだやかですが、賑やかで楽しい風景が読み手に伝わってきますね。

俳句一つで「山開き」に参加できる喜びです。大きな喜びです。(高橋信之)


2日(金)/半夏生

潮焼けの瞳おおきくつば広帽 阪本登美子



潮に焼けて、益々元気に、大きな瞳を輝かせている、つば広帽子の女の子。

なんだかいわさきちひろを思い出してしまう。(古田けいじ)


3日(土)

軽やかに散って現れ蛍来る 森 隆博



蛍をこんなに現代的に詠んだ句もめずらしいですね。サイバースペース空間

の光のような感じもしますが、抒情的ですね。(高橋正子)


4日(日)

潮の香や四つにたたむ夏帽子 阪本登美子



自句自解

夏場は帽子が欠かせない。海の近くに住んでいるので尚更である。最近の布、

レース製の帽子は簡単にたためるので持ち運びに便利である。


5日(月)

折鶴の羽搏く度に風涼し 相原弘子

 

自句自解

かなり大きい折鶴。風のよく通る部屋の机に置かれて静か。右へ左へ翼が揺

れ、搏つ。夜になっても、その日の風の涼しさが、身辺に覚えて離れない。


6日(火)

夏帽の庇大きく田に動く 渡邉道朗



明快な句ですね。日差しもいよいよ強くなり、稲もぐんぐん育ちはじめた日

本的の風景ですね。(高橋正子)


7日(水)

梅届くほのかに色づく丸さあり 古田けいじ



「色づく丸さ」で、梅の実が生きいきしてきましたですね。梅のいい匂いが

届きそうです。(高橋正子)


8日(木)

夏服の子につれられてランチ室 大西和章



新しい校舎、新しいランチ室。衣替えの夏服も、すべてが新鮮で、明るい生

徒達の表情が見えてくる。(高橋信之)


9日(金)

大西日おもちゃを提げて街抜ける 相原弘子



自句自解

奇妙な緊張があった。喜んでくれるだろうかという思いを、もう片方の手に

提げていた。街が長かった。


10日(土)

シャガールの青の煌く夏怒涛 阪本登美子



自句自解

シャガールの絵は青色が多い。観ているとすいこまれる様で別の世界に行っ

た様に思う。


11日(日)

コンコースに雪駄が響き名古屋場所 古田けいじ



自句自解

名古屋場所初日は7月第1日曜。出張の帰り、名古屋入りする力士の 一団と

一緒になった。大きな体を引きづる様に、雪駄を引きずって歩く力士が本格

的夏の到来を教えてくれた。「名古屋場所」は歳時記の季語にはない。


12日(月)

看護婦の手のやさしくて髪洗う 渡邉道朗



自句自解

十日間の入院生活を送った。入院も、看護婦さんの優しさに触れたのも初め

てであった。退院も近くなった頃、新米の看護婦さんが髪を洗ってくれた。

そのひたむきさが優しい手を通して伝わって来た。まさに白衣の天使だった

。あれから五年、あの白衣の天使も立派な看護婦さんになっているでしょう。


13日(火)

ジーンズのペディキュア光る素足なる 阪本登美子



自句自解

ジーンズが好きだ。細身のジーンズを履き久しぶりに素足で畳の感触はとて

も気分爽快である。


14日(水)

曲がり角酸漿ちょっとだけの赤 古田けいじ



自句自解

都会にいると、自然にはなかなか恵まれない。中心部に住む人は、店先に植

木鉢をおいて花を楽しんでいる。高層ビルの事務所を出た所にある薬局の店

先に酸漿が植えてあり、少しだけ赤がきていた。なんだか懐かしい気分にな

った時、詠んだ句。


15日(木)

傘さして土産の扇子あれやこれ 堀佐夜子



旅のみやげ物を選ぶたのしさのある句ですね。日傘も、扇子も暑さを和らげ

てくれるもの。やさしさのある句ですね。(高橋正子)


16日(金)

見えているところは青田夜も昼も 相原弘子



青田となるころは、辺りの景色も落ち着いて、本格的な梅雨となります。水

田の美しさを目の当たりに出来る心楽しさのある俳句と思います。(高橋正子)


17日(土)

夏袈裟の僧が書を読む縁の角 古田けいじ



自句自解

合唱の臨時練習に西別院へ。本堂の回廊に、若い僧侶が黒い袈裟を纏って、

涼を取りながら本を読んでいた。ちょっとは慣れた所からだったが、夏の袈

裟が、練習に疲れた目には如何にも涼しげだった。


18日(日)

夏の夜ハンドベルの音星屑に 阪本登美子



自句自解

毎年7月になると教会でハンドベルのコンサートがある。鈴の

音色のようで星がきらきらと空にひろがっていく。暗いニュース

が多い今日この頃だが心安らぐひとときである。


19日(月)

もくもくと雲影荒し花ユッカ 堀佐夜子



自句自解

先の家の庭先に父が植えたユッカが入道雲に向かって行く様に花を付けまし

た。きっと父の私への無言の励ましのユッカでは無かったかと今にして思う

のです。


20日(火)

鳥近く山への遠雷共に朝 森 隆博



自句自解

早朝よりの遠雷、停電を心配しながら窓を開けると心配するなと快い、清々

しい鳥の声が飛び込んできた。緊張を解く一日の始まりです。


21日(水)

花茣蓙を広げ匂いの上がりくる 藤田洋子

 

自句自解

夏を感じる匂いもいろいろありますが、い草の香りは何とも心地よいもので

す。去年より少し色あせて感じる花茣蓙もその冷ややかな肌触りや清しい匂

いは、今年もまた涼味を誘ってくれます。


22日(木)

黒揚げ羽顔面突如襲いきし 野上哲斉



自句自解

いつもは優雅に羽ばたく蝶々の不気味さを發見。


23日(金)

孔子廟合歓の花咲く石に座す 野上哲斉



自句自解

ガイドの話をよそに、合歓の花を仰ぎ石に座す。


24日(土)

縞立てて西瓜を車内へ持ち込める 相原弘子

 

自句自解

途中の駅からの乗車の人。ホームに立っている姿は、西瓜をさげていると、

窓越しにわかった。よく熟れた重さが縞模様に感じ取れた。


25日(日)

バスの後ろ揺らし入りゆく青山河 高橋正子



「青山河」の季節感を生かしているのが、「揺らし入りゆく」とした動詞の

畳み掛けである。「揺らし」、「入り」、「ゆく」と畳み掛けた言葉のイメ

ージとリズムに動きがある。いきいきとした流れがあって、「青」の季感が

生きてきた。「バス」と「山河」の取り合わせも無理がなく、いい風景であ

る。(高橋信之)


26日(月)

茄子三つとまと一つ収穫す 林 緑丘

 

句が軽くて、いいですね。平明で、はっきりしています。(高橋信之)  




27日(火)

岩窟の滴りを頭に阿弥陀仏 上出真佐子



名詞の多い句だが、それを生かして、しっかりした句に仕上げている。(高橋信之)


28日(水)

万緑の中を歩むほどに生まれ変わる 鳩崎良一

 

鳩崎さんは本当は、自然が好きな人と思う。それは、お子さんを読んだ俳句

からわかるように。静かに見守っていながら驚くのである。この句も万緑に

身を浸しながら、つまり思考しながら、変わる自分に驚くのである。自然と

ともに思考できる良さをもっている人の句であると思う。(高橋正子) 


29日(木)

でくのぼう入道雲を見上げたり 有吉孝史

 

「でくのぼう」は自分自身のこと。自分自身の今あるところを、こう言い切

れる潔さは、精神力の強さを示していてなかなかである。湧き上がる入道雲

に象徴されるように、すでに精神は静かに上へ向かっているのである。自分

の実在を時の流れより切り取った若々しい佳句。(高橋正子) 


30日(金)

夕焼けのある方向に僕は帰る 森竹智則 



若者らしい句であって、自分の存在をはっきりさせているのがよい。(高橋信之)


31日(土)

蝉の鳴く庭木映れり居間の調度 高橋信之



信之君は自分の身辺を描き出す妙手であるが、この句等も、その典型的なも

のだと思われます。見慣れた身辺の調度に取りかこまれて庭木の蝉を聞いて

いる作者の姿があざやかに浮んできます。(川本臥風)