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蓮の実飛ぶ空を見つめる夜明けなり 森 隆博 いつもの隆博さんらしいユニークな句ですが、自然をしっかり見ていますの で、浮ついていません。「蓮の実」という一年の季節と「夜明け」という一 日の時間がうまく一致しました。いい生活です。いい俳句です。(高橋信之)
青穂田の色をしずかに充実す 高橋正子 よく肥えて黄金色に成って収穫するのが待ち遠しいですね。(堀佐夜子)
離陸機の大円描く秋天に 渡邉道朗 自句自解 中国自動車道を吹田から西へ、伊丹空港あたりでの句。離陸した飛行機はち ょうど自動車道のあたりで大きく円を描いて目的地に向かう。着陸しようと する機も見えるが、離陸して空の彼方へ消えていく機のほうが私は好きだ。
満月の河口の村を青くせり 吉田 晃 自句自解 月がこれほど村を青く染めるとは知らなかった。街灯の光さえも青く染めて しまうほどの青さに、釣り糸をたれるのを忘れてしまっていた
ミラーウォールから鰯曇流れ出る 古田けいじ 自句自解 事務所の近くの高層ビルはミラーウォールの作りである。その鏡を見ている と、青い空をバックに淡い鰯曇が流れて行くのが見えた。
勝ち組の歓声遠く赤蜻蛉 古田けいじ 自句自解 近くの緑地へ散歩に行く。友の会を作ってこの緑地の手入れをしてくれるグ ループがあって、赤とんぼも飛んでいる。近くの小学校の運動会。何かの勝 負があったのか、勝ち組であろう、歓声がかすかに聞こえてくる。その後は 森のざわめきだけ。
目に見えて揺れねばならぬ鳥威し 相原弘子 自句自解 威しが揺れはためく風は身にも心にも心地よい。威しはその風を雀と分け合 っているかのようである。
向かい合う山のそこにも稲の秋 吉田 晃 自句自解 めったに車の通らない谷底の村にも、人は確かに生きている。黄色く実った 稲はやがて刈り取られ,都会に住む子どもたちに送られるのだろうか。
妻の剥く焼きぐりを一つほおばる 吉田 晃 自句自解 長い間一緒に生活していると,口数が少なくなる。妻は、フライパンで焼い た栗を剥くと、黙って私の前に置く。私は、それを黙って口に入れる。なぜ か、不思議と心が落ち着くのだ。
大き葉を地上に拡げ芋太る 高橋信之 力強く、確かな生命力が感じられるリアルな句です。(高橋正子)
虫の音と今日の出来事ともに聞く 森 陽子 一読して、初心者の句であることは、分かるが、素晴らしい句である。作者 の生活が良いのである。虫の音と人間の言葉を同時に聞くことは、欧米人に は、とてもできないことで、右脳と左脳の働きが違うからだという。この句 は、日本人の素晴らしい生活を、見事に詠んだ句で、この句があることによ って、インターネット句会が成功した、と言っても言い過ぎではないであろ う。(高橋信之)
手ひねりの皿に秋盛ること思う 伊嶋高男 素直さがいい。無理がない。しっかりした自分を持っている。(高橋信之)
新米の匂いも回る精米所 霧野萬次郎 大変大事なものが、身辺に増えた思いです。(相原弘子)
芋の露我が身に浴びて収穫す 渡邉道朗 「芋の露」は蛇笏に有名なのがありますが、それに比べると、こちらは、動 的ですね。「露を浴びて」が、露のおびただしい盆地を想像させてくれます ね。(高橋正子)
しつかりと露を結んで全て朝 相原弘子 秋の朝の清らかさを十分伝えている。(高橋正子)
秋空に吹奏楽の音高く 大西和章 日本の秋の大切にしたい情景の一つ。その現場におられるのがすばらしいと 思います。(伊嶋高男)
目の前に干潟広がる秋の河 伊嶋高男 あとはもう海。広いところでの気持ちの解き放ちが、感じられます。(相原弘子)
車椅子押す青年や夜学生 堀佐夜子 「押す青年」の姿が好ましく感じられ,本当の勉強をしているのがわかりま す。(吉田 晃)
グランドに行き交う子らと赤トンボ 大西和章 赤トンボの多いところでは、校庭なども、赤トンボがしきりに飛んで、遊ん でる生徒も、トンボも同じ仲間ですね。(高橋正子)
炊飯器ぶつぶつ鳴って茸飯 相原弘子 リアルな生活体験を表現するには、口語表現がよい。弘子さんの良さ。(高橋信之)
早稲の香に動き始める村の朝 森 隆博 使い古された技巧がないのがいい。作者の強い感動が伝わってくる。読み手 に直に伝わってくる。(高橋信之)
ただいまの声の後ろに月まるく 安西さゆり 「月まるく」というのが、いいですね。家庭のあたたかさが、しのばれます。(高橋正子)
月上る大海原の真ん中に 藤田洋子 風景を真正面からとらえた率直な句ですね。輝く月と青く暗い海との対比が 印象的です。(高橋正子)
満月にまっすぐ向いて家路につく 林 緑丘 家路につこうとすると、我が家の方向に満月が煌煌と輝いている。それに向 かえば気持ちも晴れ晴れしてくる。まっすぐだから、しばらくは月光を浴び ながら歩けたのである。よい月夜を経験されましね。(高橋正子)
十六夜の誰にも言えぬ恋をして 片平奈美 素直さがいい。この素直さを季語の「十六夜」が引き立たせた。(高橋信之)
声交わす早稲を刈ってある匂い 相原弘子 なんともいえない日本的な風情を感じます。(阪本登美子)
みずひき草の朱が試験期の図書館に 高橋正子 自句自解 30年も前の学生時代の句なのですが、大学で一番自由な気分でいられるの は、中でも図書館でした。広い机とだれにも邪魔されない自由さが気に入っ ていました。図書館に活けられる花は、清楚であったり、つつましくあった り、野の雰囲気があって、心がすっとするものでした。そんな印象のみずひ き草でした。
コンバイン帰っていって稲匂う 相原弘子 狩り取った直後の田に広がる稲の香りを彷彿とさせます。(霧野萬地郎)
稲一株ギュッとつかんで鎌を引く 吉田 晃 鎌の感触がこちらまで伝わってくるような、迫力ある句だと思いました。(阪本登美子)
そこに光り集めて木犀落下する 古田けいじ 自句自解 塀を越えて木犀の枝があり、道路へその橙色の、小さな花を散らしている。 道路に丸く落ち敷かれた花。今も小さく散っている花。そこに日が当たりそ の色をさらに鮮やかにしている。