■俳句カレンダー/1999■

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【11月】

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1日(月)/猟解禁

鳥撃ちのまだ目の開いた鴨を提げ 渡邉道朗



自句自解

狩猟解禁日の夕方だった。土手の下よりぬっと現れたその男は左手に銃、右

手に鴨を下げていた。鴨の目はつぶらにまだ開いており、男の目は冷たく燃

えていた。


2日(火)

二人がけの机でどんぐり回した日 吉田 晃



自句自解

ある年になると、忘れていた昔を懐かしく思い出すのだろう。今,「木のぬ

くもり」が大切にされ、学校では木の机や椅子の地位が回復されてきた。昔

は、松の木でできた、子どもにとってそれは重い代物だったような気がする。


3日(水)

秋時雨神田須田町蕎麦屋味噌 伊嶋高男



漢字だけの下町描写は、とても粋に感じます。秋時雨は更にいいですね。(霧野萬地郎)


4日(木)

宵闇や老舗暖簾の町静か 霧野萬地郎



自句自解

神田にて。喧騒の側にも拘らず、江戸、明治からの老舗が暖簾を守って静か

に営んでいました。


5日(金)

グラタンの焦げ目ほどよき夜食かな 堀佐夜子



自句自解

だいぶん前に作った句です。夫が幾度目かの入院時に一人分の冷凍ものを買

ってきてレンジでチンしてじーっと焦げ目がつくのを見つめた夜遅くのひと

こまです。


6日(土)

富士遠く初冠雪の宙に浮く 霧野萬地郎



自句自解

湘南道路より。四囲の山と海を下に、富士山の冠雪部分が浮いています。や

がて、裾野まで大きくなります。


7日(日)

モダンジャズ午後の語らい風の色 阪本登美子



自句自解

午後のひとときジャズの音色にのり、おしゃべりにむちゅうだった。風もう

すいパープル色のようだった。


8日(月)/立冬

立冬のポプラ天より光受く 高橋正子



自句自解

ポプラの樹を見ると、東欧的なものを思ってしまう。片側にポプラ並木の続

く白い道をイメージしてしまうのは、ロシア映画のせいか。住まうところは

変わったけれど、高階住まいの我が家の窓から、一日中ポプラのそよぎを愉

しんでいる。


9日(火)

日本海水平線まで冬の雲 渡邉道朗



自句自解

海岸に立ったその日は曇っていた。どんよりと水平線まで覆い尽くした雲か

ら冷たい風が次から次へと押し寄せてきた。まるで押さえつけられているよ

うな圧迫感があった。日本海は冬中こうなのだろうか。


10日(水)

鐘つけばさらに短き日となりて 藤田洋子



自句自解

お寺の鐘の余韻を聞きながら、たちまちに訪れる夕暮れを実感しました。


11日(木)

掻いて寄せつつこれは落ち葉の嵩 相原弘子



自句自解

名刹の箒の音、箒の目をふと思い浮かべたりもする。そして我流の箒使いに

なる。


12日(金)

呼べば冬菜畑より駆けてくる 相原弘子



自句自解

農作業の最中。やわらかな日差しに名を呼び終わらぬうちに駆けてきた野菜

の諸々が明るい。


13日(土)

海に沈む冬日大きく水平線 阪本登美子



自句自解

空と海がかさなり波がとてもおだやかになる時がある。相模湾いっぱいに夕

陽が映えていた。


14日(日)

それぞれの風過ぎゆくや冬木群 阪本登美子



自句自解

今年もいろいろのことがあった。一年は本当に風のように早く過ぎる。今は

葉を落とした木々も、ふたたび芽吹きの時が来る。来年も平凡に1日1日を

大事にしたい。


15日(月)

薪高く真新しきを冬用意 吉田 晃



自句自解

この頃になると山の村では、長い冬に備えて、軒下に薪を積みあげる。下の

ほうには去年積んだ古い薪があって、今年の薪の断面を一層白く見せる。電

化の時代とは言え、山の村にとってはまだまだ大切なエネルギーなのであろ

う。


16日(火)

冬霧の深ぶか今朝も児を包む 吉田 晃



自句自解

この時季の盆地の霧はすごい。何もないところから、子どもたちの声が聞こ

えてきて、やがて姿がだんだん濃く見えてくる。霧は,今朝も元気な子どもた

ちの朝を優しく包んでいる。


17日(水)

露霜に陽が満遍の雑木林 森 隆博



世界を肯定的に捉えていますので、句がいきいきしています。 命が輝いてい

ます。(高橋信之)


18日(木)

初冬の青空を中心に散策する 森竹智則



これらの句の良さは、作者が自然との関わりを楽しんでいることです。自然

とうまく心を通い合わせています。俳句の心ですね。(高橋信之)


19日(金)

田に立ちて土の固さに冬を知る 林 緑丘



しっかりした句です。作者の生活がしっかりしているからでしょう。(高橋信之)


20日(土)

大根一本もらって飴色に炊く 吉田 晃



日常身辺を詠んでさりげない句ですが、内面に力強いものがあります。日常

生活が充実しているからでしょう。(高橋信之)


21日(日)

はなみずき落葉静かに裏返る 古田けいじ



これは、日本の美です。日本の自己主張ですね。俳句は、南窓にではなく、

北窓にある、と言われます。「表」ではなく、「裏」にある、と言ってもよ

いでしょう。ヨーロッパの文学、芸術は、華やかで、「表」ですが、日本の

文学、芸術は、本来「裏」である、と言ってよいものですが、美の心は、洋

の東西、表裏一体です。本質は、同じものです。(高橋信之)


22日(月)

冬帽子誰かがピアノの上に置き 相原弘子



特別な俳句ではありませんが、作者の心の動きがこちらに強く伝わってきま

す。それがよいのです。 (高橋信之)


23日(火)/勤労感謝の日

植木屋の親子揃ひの冬帽子 阪本登美子



和やかなのがいいですね。俳句ですね。(高橋信之)


24日(水)

バス下る雪の月山振り返る 野上哲斉



自句自解

10月の山形に初雪がありました。一夜にして月山に冠雪、山を下る道々、振り返りながらその絶景に見とれてしまいました。


25日(木)

分かち飲む一本のワイン霜降る夜 森 隆博



自句自解

会話の少ないお酒好きの二人、ワインが空く頃、お互いに一言、ポツッと「

霜が降りそうだ。」


26日(金)

旅の空へ太く伸びおり冬の虹 古田けいじ



自句自解

車の前方の空に太い虹が立ち上がった。円弧の部分がなく、直線部分だけの

虹が太く雲に刺さった感じで。旅の先に何かいい事がありそうな、そんなか

んじのの虹であった。


27日(土)

靴音に左右のありぬ冱つる道 堀佐夜子



自句自解

コツコツと窓下を帰路いそぐ人々が通ります冬の道はよく響きハイヒールの

音、男性の靴音そして右、左と音にも様々です。


28日(日)

交代の看護日誌とセーター持つ 野上哲斉



自句自解

ベテランの看護婦さんにも夜勤は大変辛いものです。昨夜の引継に、看護日

誌とセーターを持って、婦長室には入って行く姿を呼んだものです。


29日(月)

猪猟夫背の色赤く山に入る 森 隆博



自句自解

田畑には猪垣が張り巡らされている山裾道を車移動途中、猟犬を降ろしてい

る猟師に出会う。猟は最小限であり、生存の荒さでもあります。日の出から

日の沈むまでまでと規則があり、目立つ服装のこれから挑む姿勢と猟犬の勇

ましい背中が目に焼き付いた。


30日(火)

夜のふけて友たずねきし十一月 有吉孝史



自句自解

そろそろ冬の気配も感じられる頃、夜は一層さびしい気分にもなりがちです

。そんな夜更けに、友人がお酒を抱えて賑やかにやってくる。突然の来客で

すが、非常に嬉しいものです。コタツに入って鍋物を囲み、遅くまで語り合

いました。