俳句カレンダー
俳句日記1999年


俳句日記/2000年11
高橋信之  nobuyuki@suien.ne.jp

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1日(水)/猟解禁

今日の俳句

柿食べてふと思い出すことなどを  信之

暗幕垂らして秋深きパソコン教室  〃

沖を見て夜霧見ていて今日を終える 〃


2日(木)

今日の俳句

布製の鞄を肩に冬近し    信之

柿蜜柑その他を卓に夜の団欒 〃

秋の暮れ雲空色に透けてくる 〃


3日(金)/文化の日

今日の鑑賞

■花を剪る十一月の始まりに/相原弘子

「花を剪る」という行為によって、月日のけじめがついた

。前向きの姿勢がよく、前向きの生活が見える。(評:高

橋信之)

■湯煙と霧立ち昇る山濡らし/霧野萬地郎

「山濡らし」が、詩的な表現で、作者の感動が伝わってく

る。山と森は、都市生活者にとっての癒しの場。原句は、

「山濡らし霧立ち昇る湯煙と/萬地郎」で、添削は、高橋正

子による。(評:高橋信之)



今日の俳句

文化の日今日一日の充実に  信之

菊鉢の小さな買物して帰る  〃

玄関に菊鉢置いて詩人の居  〃


4日(土)

今日の鑑賞

■温室の巨き葉先の滴りぬ/伊嶋高男

中七の「巨き葉先の」は、写生の効いた表現で、イメー

ジが鮮明である。下五の「滴りぬ」は、おさまりがよい。

上五の「温室」は、冬の季語。(評:高橋信之)

■ゆどうふの湯気まるごとに喉越さる/碇 英一

「まるごとに」は、思いきった表現だが、「喉越さる」

と続き、リアルである。(評:高橋信之)

■すすき咲く土手に変えよう散歩道/祝 恵子

楽しいリヅムのある句。「変えよう」で切れ、下五の「

散歩道」と続くリヅムが楽しい。(評:高橋信之)



今日の俳句

残る虫ときに鋭く風に鳴く   信之

えのころ草の群生遠くから夕日 〃

中空の半月の弧の確かなる   〃


5日(日)

今日の鑑賞

■蜜柑剥く海の蒼さを沖に見て/野田ゆたか

日常どこにでも見る風景だが、作者の静かな姿勢がよい

。それでいて、力強さがあるのは、作者の生活のよさに

あると思う。日常生活の強さなのである。(評:高橋信

之)

■全山の紅葉へ瀬音ひびきけり/八木孝子

言葉の技巧が無い。上五の「全山」と下五の「ひびきけ

り」は、作者の感動を伝えて充分である。技巧が無いの

で、力強いのである。(評:高橋信之)

■草の実を求め小鳥の低い空/霧野萬地郎

観察が良くて、抒情のある句。写生の基本がしっかりし

ているので、作者の感動を安心して読むことが出来る。

(評:高橋信之)



今日の俳句

寝ころんで空見て秋の草匂う  信之

蜻蛉現われ十一月の日の光り  〃

柿の実の枝に重さの垂直に   〃


6日(月)

今日の俳句

秋高し息を大きく吸う朝に   信之

マンションの四角四角が秋天へ 〃

白雲の厚みよ冬はまだ先に   〃


7日(火)/立冬

今日の俳句

秋夕焼けして今日一日の終わり  信之

葉が軽くなって樹を離れる前に  〃

立冬のゆるやかな坂行き戻る   〃


8日(水)

今日の鑑賞

■鶏頭の花の重さを持て余し/目見田郁代

この句を生かしているのが下五の「持て余し」で、鶏頭

の色も姿も鮮明に見えてくる。(評:高橋信之)

■背負い籠に柿紅葉の運ばれし/戸原琴

作句の対象となった情景が新鮮なのは、作り手の心が生

きいきしているからで、言葉のリズムがよい。(評:高

橋信之)



今日の俳句

銀杏の青あお落ちて拾われる  信之

冬晴れのわが歩く足音を聞き  〃

枯芝に子ら遊ばせて夕餉まで  〃


9日(木)

今日の鑑賞

■神無月玻璃戸に透る外の声/相原弘子

昨日今日の季感を感じさせる句。「神無月」は、陰暦の

10月で、新暦では使わない。今年は、新暦10月27

日から11月25日が「神無月」である。(評:高橋信

之)

■ミニバラの赤きを立冬の北の部屋に/戸原琴

この作者の句には、破調が多いが、作者独自のリズムあ

って、真似の出来ないのがよい。(評:高橋信之)

■秋夕焼け大山の尾根なだらかに/堀佐夜子

固有名詞「大山」を使って、いい思い出を記録した。無

理のない句。言葉が「なだらかに」である。(評:高橋

信之)

■森の奥銀杏落ちる硬い音/伊嶋高男

男っぽい写生句だが、作者の感動が伝わってくる。詩が

ある。(評:高橋信之) 

■背黒五位流れの中の冬迎え/堀佐夜子

「冬迎え」た五位鷺である。生きて行くには、春夏秋冬

の季節の流れに逆らわない。それが自然界の生き方であ

ろうと思う。(評:高橋信之)

■「柿狩り」の看板ごとに路曲がり/目見田郁代

ご夫婦か、親しい知人か、それは問わなくとも、楽しい

ドライブである。楽しい句である。(評:高橋信之)



今日の俳句

デンマークカクタスという冬の花  信之

一枚の玻璃初冬の漆黒に      〃

辞書開き夜寒の黒い文字を読む   〃


10日(金)

今日の鑑賞

■空港の冬となりいし玻璃全面/高橋正子

句に季感を与えているのが「冬」で、単なる説明の季語

ではない。詩の言葉である。「全面」がいい。空港の広

がりが出た。(評:高橋信之)

■遠山の稜線まろし冬に入る/藤田洋子

四国松山の自然は、穏やかで、そこへ今年の冬が来る。

まろく穏やか句である。(評:高橋信之)

■列車行き秋冷の風ホーム渡る/三浦絹子

作者の驚きがある。驚きは、俳句や詩の原点である。(

評:高橋信之)

■枯れ芝に靴脱ぎ走る幼な子ら/守屋光雅

「幼な子ら」に向けられた視線がいい。出来るようで出

来ない行為である。(評:高橋信之)

■葱を手に友と姪とが道の駅/堀佐夜子

詩のある生活がいい。無理のないのがいい。(評:高橋

信之) 



今日の俳句

壷の水吸い上げ菊の輝く白   信之

初冬の白き灯に白きもの多し  〃

冬の句を記して今日の日記閉づ 〃


11日(土)

今日の鑑賞

■奥へ紅葉丘なだらかにハーブ園/祝恵子

晩秋の穏やかな日和の行楽である。家族か、あるいは、

親しい知人か、楽しい団欒が見えてきて、読み手も楽し

くなる。(評:高橋信之) 

■日時計の仮想空間帰り花/野田ゆたか

暖かな冬である。日時計の「仮想空間」のいい働きで、

季語の「帰り花」が生きた。(評:高橋信之)

■木枯らしや「ま」組火消しの絵馬が鳴る/霧野萬地郎

「木枯らし」の季節は、決して軽いものではないが、句

が重たくないのがよく、俳句の良さを生かした。作者の

生活信条なのであろうか。(評:高橋信之)

■小春日和の空に校歌の高らかに/日野正人 

平和である。平和な世を詠むことが出来るのを嬉しく思

う。(評:高橋信之) 



今日の俳句

白菊のそこらの光り集めて光る  信之

初冬のもろもろの音地を這う音  〃

亜浪忌の時の流れのその中に   〃


12日(日)

今日の鑑賞

■露天風呂半月天心散る紅葉/堀 幹夫

写生句である。作者の位置がはっきりしている。見えて

くるのである。(評:高橋信之)

■月澄んでガラス巡らす研究棟/高橋正子

慶応の湘南藤沢キャンパス。夜が更けても灯りは消えな

い。キャンパスに月が澄んでいて印象深い。(評:高橋

信之)



今日の俳句

冬菊の庭に明るく無造作に   信之

一枚の葉が落ちてわが肩を打つ 〃

樹を離れ木の葉が帰る地へ帰る 〃


13日(月)

今日の鑑賞

■栃落葉大きな秋の終りけり/伊嶋高男

高男さんの良さが出ています。大きくて潔い句で、代表

句「炎昼や明神下から野郎ども/高男」を思い出しました。

(評:高橋信之)

■夕仕度手元香りて蕪剥ぐ/目見田郁代

日常を充実させて、俳句も充実する。生活と芸術とが不

即不離のいい生活である。(評:高橋信之) 

■さくさくと落葉ふむおと陽の温み/阪本登美子

冒頭の上五「さくさくと」で始まる快いリズムが一句を

支配した。中七と下五との切れが良く、いいリズムを作

った。小春日和の「陽の温み」が伝わってくる。(評:

高橋信之)

■鳰潜るビルに夕日の美しきとき/北村ゆうじ

「美しき」は「はしき」と読む。自然と人間との共生を

思い、美しい。(評:高橋信之)



今日の俳句

冬菜みずみずしく畝の幾列も   信之

池土手の枯草踏めば脚に弾む   〃

落葉する時が来ていて樹を離れる 〃


14日(火)

今日の俳句

ひつじ田の無数の葉先に空のある  信之

葉が枝を離れ落ちるも離れぬも   〃

十一月のカンナの朱と黄が強し   〃


15日(水)

今日の鑑賞

■校舎杉子等かけ抜けて冬に入る/祝 恵子

すっくと伸びた杉は、冬に入ってもますます元気な子ども

達の象徴。子ども達が幸せでなければ、その民族の未来は

ない。(評:高橋信之)



今日の俳句

黄落の空よ今日のよろこびに  信之

冬の月丸く地球も丸いと思い  〃

黄葉してポプラの夕べ軽くなる 〃


16日(木)

今日の俳句

桜紅葉を透かして朝の明るい空   信之

マンションの階の落葉を踏み上がる 〃

鴨が来て池よろこびの漣を     〃


17日(金)

今日の俳句

落葉掃き集められ黄の色の山に  信之

雨に濡れ乾き黄葉の濃き色に   〃

黄落の朝のひろびろした世界   〃


18日(土)

今日の鑑賞

■冬らしい気温の旦空がいい/相原弘子

それぞれの季節には、それぞれの良さがあって、朝の空気

がいい。朝の空がいい。(評:高橋信之)

■空高く白雲明るし冬の旅/岩本康子

作者の性格が、そのままでてきたような句。開放的な明る

さがよい。(評:高橋信之)

■寒鯉の締まるあらいと竹酒と/霧野萬地郎

軽い写生句であって、市民の生活が楽しく、その楽しさが

読み手にも伝わってくる。(評:高橋信之)



今日の俳句

初冬の壁垂直に真っ白に    信之

風の樹の十一月の夕焼けに   〃

暮れてゆく空の黄葉の濃き色に 〃


19日(日)

今日の鑑賞

■そこだけがひときわ明るく桜紅葉/岩本康子

「桜紅葉」に絞り込んで、それを句の終わりに置いた。

「そこだけ」、「ひときわ」、そして「明るく」と畳み

掛けて下五の「桜紅葉」を際立たせて、力強い句。(評

:高橋信之)



今日の俳句

葉を落とし空に親しきポプラの樹  信之

一抱えして冬薔薇のどれもがピンク 〃

冬の夜の紙の平らに四角なる    〃


20日(月)

今日の俳句

ひつじ田に語りかけたく見て歩く 信之

雨降る空と直に語っている刈田  〃

黄落のはげしさに雨降る日暮れ  〃


21日(火)

今日の俳句

芒の穂の閉じて夕べの空が高い    信之

踏切の棒の二本が冬空へ       〃

いいことあって桜もみじの明るい夕べ 〃


22日(水)

今日の鑑賞

■公園の噴水硬し冬来れば/碇 英一

技巧があるように見えるが、率直な句。心がまっすぐに

対象の風景に向かっている。(評:高橋信之)

■剪定終え木々の丸さを冬空へ/日野正人

言葉に無理がない。作者の心が柔らかなのである。(評

:高橋信之)



今日の俳句

暮れてゆく空の光がどんぐりに   信之

海の向こうに冬の日の落ちてしまい 〃

枯芝のなだらかな起伏を歩く    〃


23日(木)/勤労感謝の日

今日の鑑賞

■美(は)しきものみな地に返し山眠る/北村ゆうじ

レベルの高い勝れた句。作者の心境がいい。心の姿がい

いのである。(評:高橋信之)

■ポプラ黄葉雲寄り雲のまた流る/高橋正子

単なる写生に終らずに、現象の奥を見ているので、句に

広がりがある。いい句だ。(評:高橋信之)



今日の俳句

椿咲いて語りかけたき出会いなる  信之

手のひらの木の実こきこき木の音を 〃

木の橋を歩き木の音紅葉降る    〃


24日(金)

今日の鑑賞

■風なくて花の重みに山茶花揺れ/目見田郁代

「風なくて」は、見えないものを見たのである。これが

俳句の心であって、作者は、深く感じたのである。(評

:高橋信之)

■短日の西はありあり日を沈め/相原弘子

「ありあり」という強い表現に作者の意思があり、一句

の存在を確かなものにした。(評:高橋信之)



今日の俳句

日が差すも蔭るも黄葉よき色に  信之

欅黄葉のふわふわ落ちて踏み歩く 〃

先の見えぬ線路が続き冷たい光り 〃


25日(土)

今日の鑑賞

■残る葉も積もる落葉も日の中に/藤田洋子

「日の中に」あって、いい風景である。共生する幸せを

思う。待てば、日の光は、すべてを照らし、すべてを輝

かしてくれる。(評:高橋信之)



今日の俳句

 松山・三津

冬晴れて長い時間の港町    信之

冬麗の渡船の機械音軽し    〃

冬雲の今日をのんびりして浮ぶ 〃


26日(日)

今日の俳句

実南天きらきら午後の陽に空に

冬麗の光が沖へ沖へ広がる

冬波をたっぷり吸って堅い砂


27日(月)

今日の俳句

今落ちしばかりの姿の葉の反りに

外灯に照らされ黄葉の明るい黄

暖冬の闇の空気の甘い流れ


28日(火)

今日の俳句

日が差して今朝の薄の穂を広ぐ

空が青い桜黄葉の広がりに

冬雲の底が分厚く黒ぐろと


29日(水)

今日の俳句

十一月二十九日がすっきり晴れ

冬晴の沖へ大きく息を吐く

小春の波の親しく寄せて来し匂い


30日(木)

今日の俳句

師走に入る時の流れの一方へ

平らにして少し斜めの冬渚

沖寒く沖向く足の跡があり