俳句カレンダー
俳句日記1999年


俳句日記/2000年12
高橋信之  nobuyuki@suien.ne.jp

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2000年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

1日(金)

今日の鑑賞

■落柿舎の前を農夫が冬菜売る/霧野萬地郎

「落柿舎」と「農夫が冬菜売る」との取り合わせがよい

。即かず離れず、である。京都嵯峨の「落柿舎」は、向

井去来の別荘で、芭蕉がここで「嵯峨日記」を書いたの

で、今は、観光地となっている。現在のは、明治初年に

建てたもの。(評:高橋信之)

■軽やかに風の誘いの欅散る/碇 英一

「風の誘い」は、写生ではないが、上五の「軽やかに」

をうまく補っている。風の軽やかな誘いで、「欅散る」

様子が伝わってくる。(評:高橋信之)



今日の俳句

セロファンに透け水仙の小さな束

水仙の売られ季節が店に来る

夕日が届き柿の実を光らせる


2日(土)

今日の鑑賞

■青空や揺れる紅葉のその先に/霧野萬地郎

「青空」の大きな風景を詠んだものだが、焦点の「紅葉

」がしっかりしているので、成功した。紅葉の「揺れる

」動きがあって、「その先に」という広がりがある。(

評:高橋信之)

■美術館一つの窓より冬の海/岩本康子

この「冬の海」をわたしも見たいと思った。「美術館」

の「一つの窓」から見たいと思った。この思いを抱かせ

てくれたこと、これで、この句の良さは充分だと思った

。(評:高橋信之)



今日の俳句

師走の闇の玻璃一枚に切り取られ

冬灯とは別の明るさパソコンは

暖房出れば外の空気がうまい


3日(日)

今日の鑑賞

■芦枯れて流るる時の澄むばかり/野田ゆたか

「芦枯れて」が写生で、「流るる時の澄むばかり」は、

主情だが、心の姿がよい。「枯れ」と「澄む」との取り

合わせがよく、作者の心境が読み取れる。(評:高橋信

之)

■城山の紅葉ふやして日を返し/藤田洋子

松山の城山である。晴れていれば、日はさんさんと城山

に注ぎ、市内の何処に居ても見る。大きな風景を詠んで

いるが、優しさのある句。(評:高橋信之)



今日の俳句

歯を磨く冷たき水を口に含む

袖なしの楽な姿勢でペンを持つ

北風にきらきら雲の輝く日


4日(月)

今日の鑑賞

■「ふるさと」の合唱山茶花光る朝に/吉田 晃

「ふるさと」は、時の政治家に利用されることもあって

、それなりの重さがあるが、「山茶花光る朝に」は、リ

アリティーがあって軽く、「ふるさと」の本当の姿が伝

わってくる。これが俳句の良さなのであろう。(評:高

橋信之) 

■冬竹の芯のほうから揺れている/目見田郁代

現象の表面だけに留まっていない。「芯のほう」を見て

いるのが良い。俳句は、短い形式なので、本質的なとこ

ろを見逃してはならないのである。(評:高橋信之)



今日の俳句

真っ二つに割れて師走の半月に

短日の大きな星が西空に

冬の夜のしずけさに書読み居れば


5日(火)

今日の鑑賞

■薪ストーブ静けき熱をわれらに放ち/高橋正子

北欧料理のレストランでの歓談を伝える句。フィンラン

ド人、アメリカ人を交えての歓談。現在のオーナーの実

兄は、私のかっての教え子で、その妻君がフィンランド

人。私が育った中国大連は、帝政ロシアの作った街なの

で、「ストーブ」は、懐かしい風景。(評:高橋信之)

■干し柿やふるさとからきてぶら下がる/古田けいじ

「干し柿」の「ぶら下がる」風景は、正に「ふるさと」

であり、少年時代を思い起こして生き生きする。(評:

高橋信之)



今日の俳句

水仙の活けられてつぎつぎ花を

水仙の花こちら向くあちら向く

水煙全巻が師走の机上に


6日(水)

今日の鑑賞

■疎水澄み鴨の水掻き休まずに/目見田郁代

「疎水」を泳ぐ「鴨」の情景が生き生きと伝わってきて

、楽しい。楽しく一生懸命なのである。それが良い。(

評:高橋信之)

■美しく夕日冬芽は健やかに/相原弘子

「健やか」なのが何よりも嬉しい。そして「美しく」で

ある。自然から戴くものは多い。尽きることが無いので

ある。(評:高橋信之)



今日の俳句

夕日の中の枯れ全体が揺れている

山茶花の花びら多し花びらこぼし

臥風忌の沖に日輪落としたり


7日(木)

今日の鑑賞

■真冬日は歩幅の狭くみな歩く/守屋光雅

写生がいい。「真冬日」の風景をうまく捉えた。誰もが

歩幅を「狭く」して歩くのである。(評:高橋信之)

■小春日和の踊る影より子らの声/日野正人

賑やかで楽しく、「小春日和」の開放感がいい。誰もが

子らの幸せを願う。(評:高橋信之)

 

今日の俳句

 (現代俳句精鋭選集に正子の句が収録)

ページめくれば冬さわやかな音を立てる

天井の大きく丸く師走の灯

手袋の脱ぎ捨てられて姿が堅い


8日(金)

今日の鑑賞

■雪吊の松たくましき瘤膨れ/古田けいじ

冬をたくましく生きる木々に明日の希望がある。「雪吊り」

は、雪の重みで枝が折れないように、枝を吊っているのであ

る。南国四国では見ることがないが、北の国では、冬の日常

風景。(評:高橋信之)



今日の俳句

桜落葉のしずかに匂ってくる道を

竹林を透かして遠き冬空は

沖寒くそこに日輪沈めたり


9日(土)

今日の鑑賞

■どの茎も丸く撓みてつわの花/古田けいじ

「つわの花」は、華やかではないが、菊の咲き終わった

庭を楽しませてくれる。この句の表現が「つわの花」を

豊かなものとした。(評:高橋信之)

■夜の厨白き葱立つ真っ直ぐに/戸原琴

「真っ直ぐに」は、作者にとっての偽りの無い表現で、

句をユニークなものとした。(評:高橋信之)

■稜線の夕日に染まり山眠る/堀佐夜子

珍しい風景ではないが、美しい。作り手の内面に生まれ

た風景が美しいのである。(評:高橋信之)

■金管の冬日を受けて音丸くなる/日野正人 

「冬日」がいい。「冬日」が「丸く」なっているのであ

る。(評:高橋信之) 



今日の俳句

動かぬがよしとこの句碑黄葉降る

銀杏黄葉広げて空一枚の青

師走晴れて持つものは何もない


10日(日)

今日の鑑賞

■大根干し眩しきまでの長き列/右田俊郎

「大根」は、冬の季語で、「冬眩しき」なのである。自然

界の活動の停滞する季節にも、生き生きとした生活を発見

した。(評:高橋信之)

■年の暮れぽっかりと月厨から/岩本康子

率直な表現が生きている。「ぽっかりと」が、作者の思いの

中心で、忙しく煩雑な年の暮れの生活を、すっきりとさせた

。(評:高橋信之)



今日の俳句

おだやかな冬の朝日が正面に

銀杏散って枝の広がるその下に

銀杏記念樹の黄葉して幹黒ぐろ


11日(月)

今日の鑑賞

■北下し一歩の先の我の影/伊嶋高男

「北下し」の季節となって、作者の思いが、深くなった

。対象の「我の影」を見つめることによって、我の心の

内を見つめている。

■ふんわりと土産のもみじ飾られし/福田由平

「ふんわり」という言葉で、贈り主への気持ちが表現さ

れた。贈る人と贈られる人の心が通いあっているのであ

る。



今日の俳句

冬雲のその下が夕焼けている

シクラメン咲かせ師走の華やかに

枯芝の明るい夕べ子が遊ぶ


12日(火)

今日の鑑賞

■冬日受けにわかに膨らむ木の校舎/日野正人

「木の校舎」は、子ども達を育んで生きている。木とし

ての成長はないが、鉄筋とは違って、確かに生きている。



今日の俳句

冬の季節になったと風の緊張に

手袋の今年またその親しさに

寒き日の鉛筆の一本が長い


13日(水)

今日の鑑賞

■雪降りの露天の風呂に父と子と/守屋光雅

言葉は少ないのがよい。「父と子」の心は、行為があれ

ば通じ合える。裸がよい。露天がよい。冬さわやかな句

である。

■美術館大窓全部冬の空/目見田郁代

全てを言い切って、隠すものは、何もない。「冬の空」

が全てであって、そこに作者の感動がある。

今日の俳句

■空青く桜冬芽の明日がある

掛時計の針の三つが動いて師走

臥風忌の俳句仲間と青い空


14日(木)

今日の鑑賞

■桜冬芽ひそひそ天日受けており/堀佐夜子

表現にやや稚拙さがあるが、それが句に真実を与えた。

嘘のない優しさである。

■冬の夕日村の谷間を水平に/日野正人

「谷間」と「水平」との取り合わせがいい。「水平」、

「垂直」、それに数字といった数学用語が意外な効果を

発揮する。短い形式だからで、状景をリアルにするので

ある。



今日の俳句

玻璃抜けて冬の西日が水平に

海からの冷たい日差し来し高階

冷え冷え光るパソコン画面見ておれば


15日(金)

今日の鑑賞

■日を溜めて海へ傾く水仙花/阪本登美子

いつもの登美子さんらしい句。身近な湘南の海が生きて

いる。写生が美しいのである。

■短日や髭の守衛が仕切りけり/霧野萬地郎

早稲田大学の守衛であろう。正門にある大隈侯の銅像に

似合っている。「短日」が生きている季語となった。



今日の俳句

鉛筆の芯を削れば木枯し吹く

冬草のみずみずしくて池土手に

蜜柑樹に重心確とぶら下がる


16日(土)

今日の鑑賞

■白菜の内なる白を光らせる/古田けいじ

白菜の清冽さを、うまく表現した。冬の輝きである。内

に秘められたものを見たのである。

■新暦領収書に重ね渡さるる/碇 英一

俳句の面白さを、充分に見せてくれた。「新暦」と「領

収書」との即かず離れずの面白味である。



今日の俳句

冬シクラメンいく本も花茎を立て

冬なれば蝿憎めずにわが起ち居

冬あたたかな雨に降られる小さな用事


17日(日)

今日の鑑賞

■枯れ蓮の行き所なき影ゆれる/大谷悦子

主情の強い句だが、実感があるので、読者に訴えてくる

ものがある。

■ぽってりと日の昇り来る冬の朝/堀佐夜子

「ぽってりと」は、うまく言ったものだ。いい一日が始

まることだろう。

■鳥居抜け階段登る冬空へ/祝恵子

写生の構成がいい。立体的な動きがいい。

■石肌のつめたさ触れて寺の詩碑/藤田洋子

「詩碑」に寄せる感動が伝わってくる。「触れて」みて

詩を読んでいるのである。

■釜の音シュンシュンと鳴り亥の子餅/甲斐浩子

厨の音の中へ混じって、亥の子を搗く子ども達の声が聞

こえる。いい生活句である。

■マフラーの色とりどりや通学路/宇都宮南山

子供の日常を詠んで軽いのがいい。日常の楽しさがある。



今日の俳句

 伊丹へ

がたと機が揺れ十二月の飛行

 柿衛文庫 ヘルマン・ヘッセ水彩画展

年逝くにいい風が詩人の絵に吹く

 障害者のためのアイ愛センター

どの階段も暖房をして笑い声

日の光り少し抜け来て明るい障子

 昆陽池

鵜がいっせいに師走の空を向く姿勢

 昆虫館・蝶温室

温室のドームに高く揚羽舞う

花匂い蝶遊ばせる温室に

 神戸異人館

竹幹のますます青し鵯啼けば

師走晴れて神戸の海を遠くに見る


18日(月)

今日の鑑賞

■混ぜ合いの暮らしの音や十二月/霧野萬地郎

忙しさの中にも楽しさがあるのがいい。新世紀の新年を

迎えるのである。

■水仙の葉真直ぐにして群れてあり/岩本康子

水仙の群生を描いた句だが、水仙の一本一本が見えてく

る。写生がいいのである。

■雲ひとつなき冬空にレモンゆれる/三浦絹子

絹子さんらしい句である。楽しい句である。



今日の俳句

 神戸異人館

竹幹のますます青し鵯啼けば

椿の蕾大樹の枝の広がりに

師走晴れて神戸の海を遠くに見る


19日(火)

今日の鑑賞

■地に帰る確かな音してくぬぎ降る/古田けいじ

作者の「地に」寄せる強い思いが「確かな」という言葉

で揺るがない。「くぬぎ降る」は、いい季感である。

■年の暮れフランスパンの長いこと/相原弘子

当たり前のことが弘子さんに拾い上げられ、実にユニー

ク句となる。生きてくるのである。



今日の俳句

師走の空の銀一色に雨が降る

柿がぶら下がる枝のいい曲線に

坂上り詰め冬紅葉との出会い


20日(水)

今日の鑑賞

■赤蕪を大きく描いて礼状に/八木孝子

技巧のないことで、句を大きくした。「礼状」の嬉しい

気持ちが伝わってきて、冬にあたたかい句である。



今日の俳句

しらじら明けてゆく空の今日冬至

年逝かす紙の白さの夜の時間

師走華やか薔薇一鉢の寄せ植えに


21日(木)

今日の鑑賞

■五重塔在りし中空銀杏散る/伊嶋高男

寺苑や墓地は広々としているので、「中空」の存在感が

いい。そこへ銀杏黄葉が散って、「中空」の存在を鮮明

にする。深みを持たせた、いい写生句である。

■しんしんと冷える明日は晴れかしら/野上哲斉

現代語的口語表現で、実感のある句。「冷ゆる」、「冷

ややか」は、秋の季語だが、「しんしんと冷える」を冬

の季感とした。



今日の俳句

谷紅葉朝日の深く差し込める

風見鶏北風吹けば北を向く

母と娘のピアノが鳴って冬休み


22日(金)

今日の鑑賞

■冬晴れや雉鳩影を地に揺らす/八木孝子

「冬晴れ」のいい抒情です。「地に揺らす」が詩的な表

現なのです。

■体重を載せ切る冬至南瓜かな/守屋光雅

「体重」を「載せ切る」と言い切って、実にリアルであ

る。「冬至」の季感をリアルにした。冬至の様々な習慣

は、健康を願ってのことであろう。この句には、冬の厳

しさを乗り切る「元気」がある。

■地下街を出れば冬芽が夜空指す/古田けいじ

名古屋の地下街であろう。「地下街」は、現代社会の典

型的な生活様式で、「夜空」の「冬芽」は、その対象に

ある。都会の真っ只中に在って、自然の生命を見逃さな

いのが嬉しい。

■息白し二人の会話弾みたり/岩本康子

夢中でお喋りしているのを、ほほえましく眺めてできた

句であろう。「息白し」が、冬爽やかな思いにさせてく

れる。

■紅玉の赤をまるまる包み焼く/戸原琴

「赤」がいい。「まるまる」がいい。林檎は、体にいい

のである。(評:高橋信之)

■手作りの門松の縄の張り強し/日野正人

「手作り」の強さである。物が生きている実感である。

物を生かすのは、やはり「手作り」がいい。



今日の俳句

枯山を置きその上の空の晴れ

冬晴れの打ち合うテニスボールの音

裸木の幹をふてぶてしく見せる


23日(土)

今日の鑑賞

■冬天に風船ふわり雲に入る/祝 恵子

「風船」は春の季語だが、この句は、小春の「風船」であろう。

立冬を過ぎてからの、春のように、晴れた暖かい日和をうまく

捉えた。冬麗かである。


24日(日)

今日の鑑賞

■風の量ほどに枯れ葉の動く音/碇 英一

目に見えないものの存在は、目に見えるものから知る

しかありませんね。「枯れ葉」の動きに「風の量」を

見たのです。

■飛機低くもう一機来る暮れの冬/目見田郁代

これは、レベルの高い句です。いい句が揃いましたね。

この一年の精進で、格段の上達がありました。 


25日(月)

今日の鑑賞

■薪割り場生木の匂い霜の土/守屋光雅

<薪割りの生木が匂い霜の土/添削@>

<薪割り場生木の匂いの霜の土/添削A>

とてもいい句ですが、切れ字に問題がありますので、

添削しました。添削@と添削Aでは、状況が違いま

すが。


26日(火)

今日の鑑賞

■アンデルセン読む子の似合う冬帽子/右田俊郎

いい句ですね。コペンハーゲンを旅したときを思い出し、

心和む思いです。海辺の人魚の像との記念写真が残って

います。水煙100号記念のヨーロッパ旅行でした。 

 

今日の俳句

椿の白へ海からの夕日が届く

桜冬芽の枝の空へとせり上がる

冬夕焼けて雲高だかと浮いている


27日(水)

今日の鑑賞

■風呂の柚強く握ればよく香る/古田けいじ

いい句ですね。「強く」が効きました。無病息災を願って、

新世紀のご活躍が楽しみです。


28日(木)

今日の俳句

冬空の海に始まる垂直に

冬の坂前傾姿勢の一歩ずつ

冬空の冷たさに手が届きそうで


29日(金)

今日の鑑賞

■冷えて晴れスキップの子等と行き交わし/相原弘子 

「冷えて晴れ」は、いいですね。精神の程よい緊張は、

生活に元気を与えてくれます。生活に楽しさを与えて

くれます。


30日(土)

今日の鑑賞

〈朝倉彫塑館・東京台東区〉

■冬日入るアトリエのタイルかたと鳴る/守屋光雅

瑣末主義のようにみえますが、いい句ですね。作者に偽り

がないからで、句の感動がこちらに伝わってきます。

■セーターの誰と判りて手を振りぬ/堀佐夜子

心和む句です。読者に暖かい心を分かち与えてくれます。


31日(日)

今日の鑑賞

■大晦日暗渠音よく響きくる/相原弘子

昼過ぎの西の明るさ大晦日/相原弘子

大晦日2句、いい句ですね。しっかりした句です。



今日の俳句

流れゆく時の強きが去年今年   信之

雲少し夜空に浮かせ除夜となる  〃